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英雄  作者: 南高陽介
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3-2.ヒーローの条件

作戦本部 通信室


『こちらBシェルターの特殊戦部隊2班高井です』


「どうした高井」


金村が聞く。


『住民が確認できないのですが……ん、あれは』


「何かあったのか?」


突如、無線を通して銃声が聞こえた。


『下がれ!下がれ!』


「どうした!」


応答がない。


『数が多すぎる、作田!前に出過ぎだ』


『嫌だ!助けて』


『援護しろ!!』


『くそ!駄目だ、屋上まで撤退』


通信室には現場のリアルな声が響き渡る。


『山下!後ろだ』


叫び声が聞こえる。


『本部!ヘリを戻して下さい』


「どうした、状況を報告しろ」


『早く!早くヘリを』


まったく会話が成立しない。


『うっ……』


低い呻き声とともに通信が途切れた。静まり返る通信室。1人のオペレーターが口を開いた、


「Bシェルター、特殊戦部隊高井班及び辻岡班……シグナルロストしました」


ドン!!


金村は机を叩いた。




*




Aシェルター


ヘリから20名が、屋上に降り立った。編成は特殊戦部隊権堂班10名、園田率いるSAT第1分隊7名、DTF東山班3名である。


「おい、お前!先に行け」


権堂に指をさされたのは初代である。一瞬、緊張が顔に表れたが、すぐに取っ手に手をかけ一気に開ける。


ビュッ!!


飛んできたものを咄嗟にかわし、銃を構える。


「待ってくれ」


そこには6人の男がいた。


「てっきり怪物がやって来たのかと」


代表らしき男が言う。


「大丈夫です。救出に来ました」


初代は笑顔を見せる。


「早く案内させろ」


権堂が後ろから怒鳴る。そのとき、無線が入った。


『本部より各隊へ。Bシェルターの部隊が全滅。早急に任務を完了されたし』


「全滅……」


場の空気が凍りついた。


「急ぎましょう」


東山が進言する。


「そんなことお前に言われなくても分かってる」


権堂は先頭を切って歩き出した。


シェルターは、2階建ての特殊金属製で戦車の砲弾や、ミサイルにも耐えられるよう設計されている。


「2階には女性、老人、子供を優先的に入れています」


代表らしい男が説明を始める。

「で、あんたは」


権堂が聞く。


「あ、私ですか。安達といいます。Bシェルターの管理人をしています」


シェルターには混乱を避けるため、管理人が常時詰めている。


「今、シェルター内にはどのくらいの人がいるんですか?」


東山が聞く


「およそ1200人です。お盆と重なったおかげで、少なくて済んでますよ」


「早速だが、ヘリ5機で100名ずつ輸送を始める。順番はそっちに任せる」


権堂が安達に指示する。


2階のフロアにつくと、救助が来たことに安堵が広がった。歓声をあげる者もいた。


「SATとDTFは1階で警備。俺達が2階から上を担当する」


命令通りに東山と園田は隊を率いて1階に降りた。


「おお、助けがきた」


「見捨てられたかと思ったよ」


「助かったー」


歓迎の言葉をあび、隊員達も笑顔になる。


「想定される侵入経路は正面口しかありませんね」


「正面口に5名の2交代で警備しましょう」


東山と園田が話し合い、体制を決める。DTFの3人にSATの山岸と田井が加わることとなった。



「4往復目」


北見が呟いた。


「てことは400人ですか」


「上には700人いたから、あと3往復」


「結構時間かかってますね」


正面口警戒中、突如悲鳴が上がった。


『我々が行きます。正面口を頼みます』


園田から無線が入る。園田達は悲鳴が聞こえた、トイレへと向かっていく。


住民達も緊張の面持ちで見つめる。


隊員の1人がドアを開けた瞬間、


ドプン!


P01に飲み込まれた。


悲鳴が飛び交う。


「撃て!撃て!」


園田の号令で一斉に銃弾が浴びせられるが、トイレの奥から溢れるようにP01が現れる。


東山が即断する。


「1階を放棄!北見、山岸、田井は住民を2階に移せ!初代は俺と来い」


3人が慌てふためく住民達を2階に誘導する。


東山と初代は、園田達の援護に回る。


「隙をみせるな、撃ち続けろ!」


P01の勢いは凄まじく、ジリジリと後退させられる。


「もう少し踏ん張れ!」


東山が声を張り上げる。


『避難完了』


北見から無線が入る。


「走れ!!!」


一斉に全員が走り出す。同時に物凄い勢いでP01が迫る。

先着した園田が階段と1階の間の防火シャッターを閉める。


ガコン!


「助かった……」


全員が安心した瞬間、後ろにP01が現れた。


「うわ!」


「柳原!」


少しずつ飲まれていく。


「撃て!援護しろ」


「下の隙間から侵入してます」

初代が声を上げる。シャッターと床の間に物が挟まり、その隙間から次々にP01が入ってくる。


「無理だ、諦めろ」


東山が園田の肩を掴む。


「……全員下がれ」


「見捨てるんですか!」


SATの隊員が言う。


「下がれ!!命令だ」


園田は怒鳴り声をあげる。


5人は唇を噛み締めながら2階へと上がる。


「助けて、死にたくない!!」


叫び声が聞こえる。2階に着くと防火シャッターを下ろした。

そして何も聞こえなくなった……


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