3-1.ヒーローの条件
「実践では使用されてない?」
南野が疑問の声をあげる。
「はい。USA-P01は初の原生動物型BSCとして生み出されましたが、特徴である大量増殖に致命的な欠陥があって投入されなかったようです」
「致命的な欠陥?」
南野がまた質問する。
「増殖個体を統制できなかったようです」
「なるほど」
納得した顔で頷く。
時は、24時間前に遡る。体長2mのアメーバであるUSA-P01が臨海開発地区に出現した。これが人間を捕食、分裂を繰り返し爆発的に増えたのだ。政府は避難命令を出し、住民は今のところシェルターに避難している。
難しい顔をした東山が作戦室に入ってきた。
「対策会議はどうだった?」
「住民を臨海開発地区から脱出させるのが第1目標となった。これは自衛隊、警察と協力して行う」
「殲滅はしないんですか?」
北見が聞く。
「脱出させた後、自衛隊が派手にやるらしい」
東山はやれやれという顔をして、椅子に腰掛けた。そしてタバコに火をつけた
「作戦は各シェルターにヘリで降下、展開し、順次住民の輸送を行う」
「うちのヘリは使いますか?」
白木が尋ねる。
「いや、使わない。あくまでも政府主導という所を見せたいらしい」
東山は煙を吐いた。「そうですか」と白木は残念そうな表情を浮かべる。
「作戦決行は5時間後!それまでは装備を点検次第、自由行動。以上」
タバコを灰皿にぐしゃぐしゃと押し付け、東山は作戦室をあとにする。
「あれは、そうとう苛立ってるな」
西村が呟いた。
*
「自衛隊特殊戦部隊の金村です」
「警視庁SATの三島です」
「DTFの東山です」
代表者が自己紹介し、握手をする。顔合わせもそこそこに金村が作戦の説明をする。
「シェルターは全部で5つあり、配置は各隊長にお伝えします。輸送の方は第1空挺団で行います」
金村が東山の方に歩いていくる。
「DTFは3人ずつ、それぞれA、Dシェルターをお願いします」
「3人で守るんですか?」
仲里が言う。
「当然、他の部隊も展開します。まさか、仲間同士じゃないと戦えないなんてことはないですよね」
金村の馬鹿にした口調に、南野が掴みかかろうとするが、西村に止められる。
「使えない奴は帰ってもらって結構ですから」
そう言って、SATの方へ歩いていく。
「小さい男ね」
北見がぼそりと呟く。
「仲良くやれとは言わない、だだし任務は遂行しろ」
東山は複雑そうな顔で言った。
東山と西村は話し合って、東山、北見、初代がAシェルター、西村、南野、仲里がDシェルターと決めた。
空挺団のヘリコプターに乗り込んで行く。
澄んだような青空の下、次々とヘリコプターが飛び立っていった。