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中学3年生の1学期

 4月に健康診断があるのはどの地域のどの学校でも、毎年恒例のことである。しかし、今年からは一部の生徒に新しい検査項目が加わっている。それが「性器検査」なるものである。対象は中学3年生の男子のみである。パーテーションで仕切られた内科検診の際、一緒に行われる。体操着の下とパンツを医師の前でおろして、下半身丸出しの状態で直立不動の姿勢をとらされる。

 中学2年生の冬と春に学校がとりまとめて実施した包茎手術を受けたものは、検査項目の欄に「手術済み」という印が既におされており、この屈辱的な検査は免除される。個人で手術を受けた場合も病院からの診断書を出せば免除となる。精神と肉体の痛みに耐え手術を受けたものだけが免除されるのだ。

 


 この性器検査で問題なしと診断されれば、「検査合格」の印が押される。高校に進学する際、性器発育の項目が「手術済み」か「検査合格」になっていなければ入学は認められない。思春期の少年たちにとっては大きな精神的苦痛である。個人で手術を受けた中には完全に剥けたわけではないものもいる。手術を受けてさえいれば検査も免除になるため、包皮の先端を少し切っただけでという生徒も中にはいる。ただし学校指定の病院では基本的に完全に剥けた状態にしており、今後の成長を考え、根本の部分に皮が多少余るような処置をしていた。



 内科検診を担当するうち、性器検査も行う医師は予め決められている。手術済み以外の生徒は、全員がそちらの列に並ぶ。2回の手術機会があり、男子生徒のうち半分くらいは既に手術を受けた。残りは自力で剥いたもの、自然に剥けていたもの、そしてまだかぶっているものである。

 どうしても手術が嫌だというものは、頑張って剥き癖をつけようとした。恥を忍んで親に頼み、矯正器具を買ってもらった生徒もいる。剥けてさえいえば、一時の恥ずかしさで済むのだ。パンツを脱いで数十秒間、剥けた状態を保てていれば解放されるはずだ。もちろん目の前で剥こうなどとしたら見つかってしまう。


 検査では自ら下半身裸になるよう命じられ、医師に男性器をつかまれる。背面・腹面両方をチェックされ、垢などがたまっていないかどうか確認される。問題がなければ検査項目欄に印を押してもらい再び着衣する。剥き癖をつけたつもりでも脱ぐときや触られた時に戻ってしまう場合がある。この場合は当然不合格となる。



検査で不合格となった生徒、すなわちまだ皮が被ったままの生徒はこのあと、体育館に移動する。検査を免除されたものと合格したものは教室にもどってホームルームになるので、誰が不合格になったのか、クラスメイトは皆知っている。体育館ではまず医師から、なぜ剥けていなければならないのかを説明され、早急に治療をすることが求められる。



 その後、試練の時間が待っている。全員その場で下半身裸となり、体育館の床に仰向けで寝なければならない。当然クラスメイトや付き添い教師に丸見えである。等間隔でマグロのように寝かされた生徒の間を、数人の医師がまわる。もうすぐ剥けそうなもの、すっぽり被っているもの、そして余りがあるものまで形は千差万別だ。医師は一人ひとりの男性器をつかむと、力を入れて剥いてしまう。これまで剥くことすらしていなかった生徒は悲鳴をあげて痛がる。いつも剥く練習をしている生徒ですら、力をいれて剥きあげられることと環境で痛みを感じる。肉体的にも精神的にも厳しい仕打ちだ。皮と本体が癒着していれば、それをはがしていく。



 その間、教師たちの手によって書類が作られている。「お子様は包茎の状態であり、衛生面・発育面を考えたときに至急治療が必要です」と書かれた医師の署名入りの文書が保護者向けに作成される。そしてその中には5月の連休前日に学校単位でもう一度、無償で手術する機会を与えるので受けるように促す文言も入っている。


 

 各自、家に持ち帰り、恥ずかしい文書を親に見せねばならない。1週間後までに指定日に学校単位で手術を受けるかどうかを明記して返答を出さなければならない。返答を出さなければ親に直接電話が行くことになり、恥ずかしさはさらに増す。ここで手術を受けなかった場合、修学旅行前に再度検査を受けることになる。その時に包皮が被っていれば強制的に手術を受けさせられてしまう。結果としてここに残された半分以上の生徒は、学校単位の手術を受けることになる。



 これまで自然治癒を信じたり手術を回避しようとしてきたものも諦めて手術を受けることが多い。ここに至ってまだ経過観察を選ぶものは20人に1人か2人である。その中には親の知り合いなどに手術してもらって報告書を出すものもいる。皮が被ったままで残りの中学生活を送るものは少ない。5月連休前に複数の学校の生徒が指定の病院に集まり皮を切る手術が行われた。彼らは同級生から少し遅れ、同じ形の男性器になった。

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