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中学2年生の2学期

 ○○年、中学生が無償で包茎手術を受けられる制度が確立した。最初の機会は中学2年生の冬休みである。出来るだけ多くの中学生を早いうちに剥けた状態にしてしまいたい学校側は様々な手段で希望者を増やすよう画策した。



 まずは保健体育の時間を利用した包茎のデメリット解説である。中学校2年生の授業で10月頃に扱うこととした。あからさまにやれば反発も大きい。だから自然な教育の流れの中で行わねばならない。従ってテーマは「男性と女性の生殖器について」としてあり、男女ともにそれぞれの体つきを学ぶ。男性生殖器の勉強の中で、包皮の存在について話をする。すなわち幼少期は保護のために覆われているが成長と共に不要になってくることを力説した。更に包皮が被っていることで病気になりやすく、成長も妨げると断言し、更に女性に感染させる可能性があること、独特の異臭を放つことなどを細かく説明した。そうすることによって女子生徒にも包茎は悪だというイメージを受け付けることが目的なのである。



 そして直後に保護者会が開き、概要を保健教諭が説明した。その上で①今ならば無償で手術をしてもらえること②学校から申し込めば教師が引率した上で集団で受けられること

を強調した上で、申込用紙を配布した。保護者の中には息子の性器の状況を確認することもなく即座に申込書を提出した者もいる。本人の署名欄はなく、保護者の同意があれば、受けさせることが出来るのだ。



 保護者会後、男子の保護者たちの間に反響が広がった。家に帰って家族会議を開く家もあれば、親が一方的に受けさせると決めた家もある。実際にパンツを脱がせて性器の確認をした親もいた。親同士の情報交換も行われた。生徒の間でも同様である。互いの性器について相談したり中には見せ合って検討する生徒もいた。これだけがんじがらめにされてしまえば、包茎のままずっと通すことは難しい。手術を受けるか、あるいは自分で剥くかの二択しかなくなっていくのだ。



 今回は初回ということで、それほど需要は伸びなかった。既に剥けている者も20人に1人くらいはいる。剥け始めているものも数人はおり、彼らは今後の改善を期待して手術を回避した。完全に被っている者の中でも、まずは努力で剥けたいと思う者、手術だけは嫌だと拒否した者、家庭内協議の結果来年に持ち越した者、冬休み中に予定が入っている者・・・事情はそれぞれだった。男子20人程度のクラスでは、3~5名の男子が手術を受けることになった。



 彼らは冬休み中の一日、体操着で学校に集合する。そこから教諭に引率され、マイクロバスで指定の病院まで向かう。これから待ち受けている手術を前に、バスの中で生徒たちの表情は固い。特に自分の意思より親の意思で受けさせられる者は、不安な顔つきで病院への時間を過ごしていた。その時間は学校の貸切である。番号順に次々と手術スペースに入っていき、そこで下半身裸になる。



 最初にされることは除毛である。そして次に全体を消毒される。看護師はまだ若い女性が多い。それだけで思春期の男子たちは緊張して勃起してしまう者も少なくない。しかし性的興奮は一瞬だけのこと、すぐ手術の恐怖に戻される。最も敏感で大切な場所にメスが入るのだから、緊張するなという方が無理な相談である。



 準備が終わると医師がやってきて、麻酔をする。そしてハンドメスで余っている包皮を切り取っていく。手術が終わると縫合し、再び消毒してからガーゼで保護する。生徒たちは顔をしかめてゆっくりパンツとジャージを履き、再びバスに乗り学校へと戻っていく。冬休みだから学校には僅かな生徒と教員しかいない。しかしバスから降りてくる男子生徒が何を今までしてきたか、全員が知っている。彼らは確かな鈍い痛みを伴いながら、確かに大人へと一歩近づいた。

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