第5話「反逆の狼煙」
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再び覚悟を決めた俺は、ついに修練を始めた。
アイが修練場に選んだこの森は、俺にとってまさに楽園だった。
「食料は豊富、しかも料理の上手い案内人もいる!」
「でしょでしょ?!」
なんて、楽しいこともあれば…
「かゆ〜〜!?」
定期的に汗を流さないとあせもができたり、
「ごめん…うぷっ…。ちょっと…離れてもらえないかしら…?」
アイからの露骨な拒絶…だったり。
まあ清潔感ない人は誰でも嫌だよな。
さて、俺はここに来て3年半、ひたすら体力をつけ続けた。
因みに、アイのコーチング力は壊滅的だった。
以前唱えていた謎の呪文について教えてくれたくらいで、それ以外は基本独学だった。
1年目の目標は黒薔薇の剣を持ち上げるための土台作り。何度も握ったせいで、掌はタコと血豆だらけになった。アイが謎の呪文で手当てしてくれたけど、俺にはその方法を教えてくれなかった。
2年目の目標は「最適解を導く」こと。戦闘において適切な判断力を磨くため、ミスすなわち死の判断ゲームに挑み続けた。「毒に侵されたらどうするかって…ヤドクガエルの吹き矢を刺してくるやつがいるか!」
「まあ〜①毒の侵食を抑える②毒を排出するを、瀬戸際で実行できたんだし!」
アイはニンマリ。コ、コイツ…、恐ろしい子…!
3年目はひたすら昇華していくことに努めた。
そして、お待ちかねの呪文講座だ。
「呪文を唱えて能力を発動することを〜、マギアって私たちは呼んでる★」
アイが説明する。相変わらず二面性が激しい。
「…私”たち”?他にもマギア使いってのがいるのか?」
俺はひっかかる。
「うん!皇帝もマギア使いよ。ただ、奴の振りまく悪意は仕組みが違うんだけど、これはまた今度で。」
アイが話を戻す。
「呪文は実在する単語の組み合わせなの。だから語彙力を鍛えれば、特別な力がなくても扱えるわ。」
語彙力か〜。ちょっとキツイな。
結局、半年で扱えるようになったのは、剣から茨を出す『ペンデール・ロザリオ』、風を纏って加速する『テージウィンド』だけだった。
人間というのは不思議な生き物で、瀬戸際に立たされると物凄く効率よく進めるんだ。火事場の馬鹿力…みたいな?
4年目の中盤に差し掛かったころには、以前とは別人のように動けるようになっていた。
あとは、黒薔薇の剣を扱えるかどうかだ。
柄を持つと…
「…?!なんだ、これ…。」
なんなんだ、流れ込んでくる歪んだ感覚は…?!
「ようこそ」「反逆だ」「皇帝」「次だ」「愛してる」「負けちゃえ」「俺が」「私だ」
――頭の中が、かき乱される…!
「…うるせぇぇー!!!」
俺は心の底から雄叫びを上げた!
「俺は…アイツに誓ったんだ!前に進み続けるって!」
「だから――俺を認めやがれぇぇぇぇぇ!!!」
その瞬間、頭がクリアになった!
いまだ!俺は思い切り腕に力を入れる。
重みを感じる。けれど…
「…!!持ち上がった!」
よし、次は…「フゥー…」真っ直ぐ森の木々を見る。
腰を落とし、剣を構える。
「うううぉぉぉりゃぁぁぁあああ!!!」
―静寂…
しかし、ひらけた野原が眼前に現れ…
…ドゴゴゴゴゴゴゴーーーンンン!!!
次の刹那、轟音が森全体を震わせた!
「や…やった、やったぞ…!」
「やったよぉぉ!!アイちゃん!!」
「ごめん見てなかったわ★」
おいいいいいい〜?!
…呆然とする俺は気づいていなかったが、アイは優しい笑顔を浮かべていた。「…おめでとう。」
残り半年は、剣術を磨いた。完全な我流だけど…。
そして、16歳となった俺は、ついに王都へ向かう!
「「さあ、反逆の狼煙を上げようか!」」




