第九話『昼の一幕』
「えっと、ファナトスドール嬢。いや、メイウッド嬢?」
「ファルでいいわ。」
「わ、分かった。ファルはえっと、武術は十分できてると思うよ。」
こっちをちらっと見ながらファルは答える
「ハァ~、じゃあ今私と戦ってあなたがどれくらい勝つと思ってるの?」
「え、う~ん割と五分五分じゃない?」
「言っとくけど、私。『風乱』を使われたら受け流しが間に合わなくなると思うわ。」
「そうかなぁ。あの両刃剣の練度なら掠り傷程度で済むと思うけど?」
「あのねぇ。あなた。隠してるろくでもないものの一つや二つくらいあるでしょ。
それを出されたらぼっこぼこよ。私が。」
「やだなぁ。まっとうだよ。ちょっとめんどくさいだけで。」
再度ため息をつきながら、ファルは言う。
「とりあえず、本気のあなたに勝てるようになりたいの。」
「まぁ...でもだいぶ稽古の時間が短くなっちゃうけど大丈夫?」
「それでもかまわないわ。対価として私が扱ってる両刃剣術の技術を教えようと思うけど。どうかーー」
「ぜひ。お願いします。」
しまった。つられてしまった。真顔で返してしまった。なんて思ってると
「わかったわ。よろしく頼むわね。師匠」
そう言っていつも無表情の彼女がにこっと笑った気がしたのは幻覚であろう。
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「っていうことがあって。陽菜姉のレッスン時間が短くなると思うけど、大丈夫?」
昼食中の三人と合流し、先ほどあったことを陽菜姉に話す。
「ほへぇ。メイウッド嬢がそこまで強くなろうとしてるなんて。珍しいね。」
「ね。しかもあの両刃剣術だいぶ完成されてるから、基幹五流まで学ぼうとする姿勢には感服だよ。」
「・・・どうせ晴兄なんて両刃剣術につられたんでしょ。
「そ、そんなことないし。」
「どーだか。そして二人とも。どうしたの?」
陽菜姉はものすごくぽかーんとしてる二人に話しかける。
「メイウッドってフィアラドール・メイウッド大公爵令嬢よね。」
「うん。そうだy・・・え?大公爵令嬢?」
「うん。確か魚座夢幻国の三大公爵家のひとつだよ。」
「し、しらなかった。」
こっちにジト目を向けつつ唯花がため息をつく。
「なんだろ。新輝橋双子って意外と抜けてるよね。」
「そうだねー。晴翔君がここまで抜けてるとは思わなかったよ。」
「...せっかくなら私と一緒にやっちゃっていいよ。晴兄。」
「そ、そう?僕的にはそっちの方が楽だからうれしいけど。せっかくなら二人も一緒に練習する?」
「「え˝っ」」
どうしたんだろう。そんなヒキガエルがつぶれたような声を出して。
「ど、ド素人の私たちが混ざっていいの?」
「うん。なんだったらそっちの方が、いろいろと楽だからね。」
「じゃあ俺はお願いしようかね。」
「じゃ、じゃあ私も。」
「次の日曜日から始めるから、ちゃんと準備しといてね。」
「「「は~い」」」
しっかりと返事が返ってきたことに安心した僕はご飯を食べ始めた。




