プロローグ
遥か昔に誰か綴ったとされる『アクリプティック旧則記』にはこんな言葉が残されている。
「明るき星。暗き宵に強く輝き消ゆる」と。
彼女がその言葉を思い出すのは子と夫を逃がした後だった。
彼女の前に立つは七つの人の形をした異形。月がない夜。
彼女は偉大な魔術師であった。だからこそ感じてしまう。
あぁ、これが彼女の最後か。
と。
彼女は魔力で刀を作り出し、異形たちに向かって走り出す。
展開されるは全てを凍てつかせる氷の槍。
氷槍は相手に着弾直前、姿を消す。
向こうにいた異形は舌なめずりをし、短剣を手にとびかかってくる。
彼女はそれを刀で受け流し、そのまま奥に走る。
一番ガタイのいい異形がすごいスピードで殴ってくる。
彼女は横っ飛びに躱し、そこで彼女はようやく言葉を発した。
「『天圧』」
直後、膨大な圧力がガタイのいい異形に襲い掛かる。
その異形はひざを折り、地面に埋まりかける。
その魔術を維持したまま彼女は前へ走り続ける。
一番奥の異形が持っている物体を破壊するために。
彼女の意識は数瞬途絶えた。
危うく転びかけたがそれどころではない。
『星之力』を身にまとわせ、精神干渉を防ぐ
やる気がなさそうな痩身の異形が杖で攻め立ててくる。
そのまま突き出してくる杖に乗り、蹴って折る。
そのまま頭を踏み抜き、地面に埋没させ、走り去る。
女性らしき異形が能力を使う。
瞬間、辺りの魔力が全て消失した。
そして異形はもう一つ能力を使う。
異形の手にバチバチと音を立てながら魔力が圧縮されていく。
「『黒闢天』!!」
彼女は自己生成魔力を使い、魔術を展開する。
魔力塊の制御が外れ魔力が限界を超えて圧縮をされ、暴発する。
彼女は風魔術で爆発の衝撃を逃がし、そのまま突っ切る
小柄な女性らしき異形はみちみちと音を立て、黒竜に変わっていく。
そこで彼女は初めて刀を構えた。刀を下に持ち、下段の形へと。
黒竜からブレスが放たれる。
それを彼女は空を踏みブレスをかわすと同時に『天圧』を発動して巨大を圧し殺す瞬間、悪寒が走る。
魔術を解き、全力の回避をする。
一秒前までいた場所に、風が通った。
地面に3本の線が走り、地面が腐敗していく。
遠くを見ると隻眼の男が次の風を飛ばしている。
しかし、意識が一瞬でも黒竜からそれたのがよくなかった。
それた一瞬の隙を突いて黒竜が、爪で攻撃してくる。
そのことに気づいた彼女は躱そうとするが、躱しきれずに、腕を一本持ってかれる。
風圧で飛ばされ、木にたたきつけられる。
精神防御に使っていた『星之力』を腕の止血に回す。
さすがに、『星之力』でも、部位欠損は直せず僧侶の聖典魔法が必要だ。
ただ、治す時間を敵方が与えてくれるはずもなく、二つ、三つと風が飛んでくる。
その時、後ろから拳が飛んできて、ゴシャッという音とともに彼女は飛ばされる。
刀を支えに立ち上がる彼女だが、血反吐を吐く。
肋が五、六本折れ、内臓がぐしゃぐしゃになり、魔力もほぼ尽きかけだ。
しかし、一番奥にいる少年の持っている10の書類は、この世界を滅ぼすに等しいものだ。
最後の力を使い、彼女は立ち上がる。
血も足りず、身体で痛くないところがない。
しかし、それでも。
彼女の夫と子を守るために。
『星之力』を纏い、空を飛ぶ。
そのまま一番奥の少年に追いつき、抱きしめる。
そのまま『星之力』を収束させ…
彼らは見ていた。かつて心を通わせ、共に戦った仲だから。
そして、彼らが最も尊敬していた人だから。
だから彼らは誓った、必ず世界を閉じると。
「おとーさん?どーしたの?」
「あ、あぁ、二人とも。なんでもない。食料を買って帰るぞ。」
「「うん!!」」
もう一つ彼は誓った。この子たちにつらい思いをさせないと。




