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三本の聖剣と司教さま〜巡る勇者の宿命を超えて〜  作者: SSS


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第38話 見えない欠片の形

 

「どうだい、ちゃんと動くかい?」

「ああ、全く問題ない。いい腕だ」


 エレノアの紹介で装具士に見てもらい、義肢は無事元通りになった。


 今までよりも柔らかい金属を使用することで魔力の流動がより滑らかになり、供給時間もかなり短縮された。


 まるで本当に自分の体のように軽い。


 とても素晴らしく理想的な義肢だ。


「そりゃあ良かった。調整が必要になったらいつでも来てくれよ」

「ああ、助かる」


 技術の高い装具士のおかげで、一週間という短時間で済ますことができた。


 しばらく装具屋に隔離される形になったため、カルマナたちとは丸々一週間顔を合わせていない。


 その旨をカルマナに説明した時の駄々のこねようには手を焼いた。


 一緒に泊まると言って聞かない彼女をジュリエットが何とか説得し、何とかこうして調整に集中する時間を設けることができた。


 まったく・・・。


 歳の離れた女の子に説得させられる司教というのはどうなんだ?


 それはともかく、本調子に戻るまでに一ヶ月近く掛かると踏んでいたからこれは嬉しい誤算だ。


 エレノアに感謝だな。


 装具屋の引き戸を開けた瞬間、かの司教さまが立っていた。


 会って早々、ものすごくひどい顔だ・・・。


「うぇぇん! カインさぁ〜ん! よくぞご無事でぇ〜!!」


 声をかける前に抱きつかれた。


「運命が私たちを引き裂いたあの日から、私の想いは募るばかりでしたよ〜・・・。ようやく、ようやくこの日を迎えられたことに私は・・・」

「たかが一週間だろ」


 泣き喚いていたカルマナの顔が一瞬にして怒りに変わった。


「一週間もですよ?! 七日間も会えなかったんですよ?! 正気でいられるわけないじゃないですか!」


 こいつ、自分がどれだけ恥ずかしいこと言っているのか分かっているのか・・・。


「でも、元気になって本当に良かったです。これでやっとぐっすり眠れますよ」


 潤んだ瞳で頬を膨らませていたカルマナの表情が穏やかになった。


 すると、いつの間にか隣にいたジュリエットが耳打ちしてきた。


「カルマナ様ったら家でもずっと泣きっぱなしでしたからね」

「ななな、何言ってるんですかジュリエットさん!!」


 今度は背後から突然エレノアが現れた。


「・・・うるさかった」


 相変わらず心臓に悪い。


「もっと普通に出て来れないのか」

「ずっとあなたの後ろにいましたが」


 何だと・・・。


 どんな状況であろうと、俺のパーソナルスペースに他人の侵入を許したことは一度もない。


 それは、戦場では死を意味する。


 それをこうも容易く踏み込んでくるとは。


 彼女を敵に回すのは絶対にやめておこう・・・。


 エレノアは俺のすっかり綺麗になった艶のある左腕を優しく撫でた。


「直ったみたいね。よかった」

「エレノアがいい装具屋を紹介してくれたおかげだ。ありがとう」

「私は何も」


 義肢が直った影響で俺の能力値も元に戻った。


 体の調子も良い。


「明日、朝一の船でドルガリスへ向かおう」

「今日発つのではないのですか?」

「義肢を馴染ませるためにもう少しだけ時間が欲しい。一日町を歩けば大丈夫だと思う」


 急いては事を仕損じるというからな。


 これまで、完璧にコンディションを整えても結果を変えられなかったんだ。


 なら、ここで無理に急ぐ必要もない。


「はいはい! それなら、せっかくですのでロックバスティオンを観光したいです!」

「それはいいですねっ! よろしければご案内しますよ! ね、お母様♪」


 エレノアはすっかり明るくなった愛娘の成長を嬉しそうに見守っていた。


「・・・ジュリーが行くなら。あと、うるさくなければ」

「決まりです! 先ずは美味しいものを食べに行きましょう!」

「俺はまだやることがあるから観光は三人で楽しんでくれ。夜には戻る」


 言うが早いか、カルマナはあからさまに残念そうな顔で俺の手を引いた。


「えぇ?! ダメですよ! カインさんも行くんです!」


 そんな強く引っ張るな。


「弾薬の補充と魔力弾のストックを作っておく必要がある」

「それなら私も・・・」

「ここのところずっと緊張しっぱなしだったろ。疲れが溜まっているはずだ」


 不安の色を滲ませるカルマナの肩を叩き、ジュリエットに耳打ちする。


「済まないが面倒見てやってくれ」

「もちろんです。お任せください♪」

「じゃあ、また後でな」


 三人と別れ、俺はひと足先に町へと繰り出したーーー。



 ーーー数時間後、とある丘。


 弾薬もある程度揃ったし、いくつか弾丸に魔力を注ぎ込むことができた。


 十分な蓄積時間がないため、濃度も薄ければ種類も数える程度。


 必要最低限のストックしか作れなかったが、何もしないよりはマシだ。


 能力値自体は回復している。あとは自分のスキルと身体能力でカバーできるだろう。


 ふと見上げると、空の蒼に蜜柑色が溶け始め、夕刻の訪れを知らせていた。


 もうこんな時間か。


 あいつは、ちゃんと楽しめたのだろうか。


 ジュリエットを困らせていなければいいが。


 ・・・・・。


 心にぽっかり穴が空いたようなこの感覚。


 カルマナを前にすると感じる、針で突かれたような胸の痛み。


 ずっと、何か重要なことを忘れている気がするのに、それが何なのか思い出せない。


 ヴァルムレイクの後くらいから時折感じるこれは一体何なんだ?


 やはり、試練での後遺症なのか。


 ロザリアと対峙した時、彼女が言っていたことも気になる。


『ふ〜ん。なら、どうして剣を使わないの?』


 俺が、剣を使っていた・・・?


 俺のジョブは魔銃士。


 武器は黒銃インビシブルだ。


 だが、剣士などかじったこともないはずなのに、なぜか懐かしさを感じる。


 それに、カルマナの剣を使った時も驚くほど自然に手に馴染んでいた。


 あの時の頭痛も、この懐かしさも、この喪失感と何か関係があるのだろうか。


 自分の中に存在するこの奇妙な矛盾がどこか気持ち悪い。


 カルマナの奴も、時々何かを言いたそうにしているようにしている時がある。


 かと思えば、ロザリアとの戦いの前に喧嘩したこともあまり気にしていない様子だ。


 普段は馬鹿みたいに分かりやすいのに、あいつの考えがたまに読めない時がある。


 ・・・考えても仕方がないか。


 とにかく、このなんとも煮え切らない感覚はどこかで解消しなければならないかもしれない。


「さて。偉大な大司教様に説教される前に合流するか」


 モヤモヤする気持ちを振り切るように立ち上がり、微かに耳に届く喧騒を眼下に丘を下ったのだったーーー。

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