表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三本の聖剣と司教さま〜巡る勇者の宿命を超えて〜  作者: SSS


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/91

第19話 深まる絆

 

「さぁ、私たちの勇姿をその目に焼き付けてくださいね!」


 のろのろと聖剣を掲げる姿を見ても不安しかないのだが。


「行きますよジュリエットさん!」

「は、はいっ!!」


 ああ・・・。考えもなしに飛び出すとは。


 あれじゃ死ぬ確率を引き上げるだけだ。


 とはいえ、この体ではまともに動けない。


 今は二人がうまくやってくれることを祈るしかない。


 クリスタルドラゴンの口から細かい氷のブレスが吐き出される。


「『女神の吐息(シルキーブレス)』!」


 カルマナの足元から生じた魔法陣が輝き出し、放出された聖なる障壁が氷の息を弾き返した。


 弾かれ舞い散る氷の粒に紛れたジュリエットが高く跳ぶ。


「やあああああっ!!」


 クリスタルドラゴンの首元に狙いを定め双剣を振り下ろした。


 攻撃をものともしないドラゴンは彼女を容易く跳ね除け、羽ばたきながら更に上空へ逃れた。


 軽い。あいつの強固な皮膚を突破するにはもっと重い一撃が必要。


 あれでは致命傷どころか皮膚に傷をつけることすらままならない。


 あの二人にそれを求めるのは酷だが、それができなければ奴を倒すのは無理だ。


「むむ。やっぱり防御力が高いですねぇ。実は意外と柔らかいなんて期待をして損しちゃいました」

「うう・・・。硬くて手が・・・」


 呑気に話し込んでいる余裕なんてないぞ。上からドラゴンが迫っている。


「あわわわわ?!」


 カルマナは手足をバタバタさせ、ガチンと甲高い音を響かせるドラゴンの顎を間一髪で躱す。


 通り過ぎる巨翼の羽ばたきから生み出される暴風に耐えている間に、ドラゴンは再び上空へと飛翔した。


「カルマナ様! 私にステータスを上げる魔法をかけて援護してください!」

「わ、分かりました! 『戦神の恩寵(グロース)』!」


 ジュリエットの体が赤い光に包まれる。


「はあああっ!!」


 口を開き迫り来るドラゴンの顎に双剣を重ね迎え打つ。


 轟音と共に激しい競り合いを見せる両者。


「やああぁーーーっ!!」


 力を振り絞り、何とかドラゴンを押し返す。


 カルマナの補助魔法のおかげで先程より幾分マシにはなったが、それでもダメージを与えるにはまだまだ遠い。


 このままだとジリ貧だ。


 何か策はないか。


 気付くと、クリスタルドラゴンの頭上に巨大な魔法陣が展開されていた。


 この魔力・・・!


「まずい! 二人とも離れろ!!」


 俺の声を掻き消すように、巨大な氷柱の雨が二人に襲いかかった。


「きゃあああ!!」


 怒涛に降り注ぐ氷柱が地面を激しく揺さぶり土煙を巻き上げる。


 揺れが収まり煙が晴れると、二人は傷だらけで横たわっていた。


 何とか致命傷は免れたようだが、かなり消耗していることは明らかだった。


 どうして肝心な時に見ていることしかできないんだ俺はっ!


 動けっ・・・!


 拒絶するように無反応を示す義肢に目をやる。


 くそっ・・・!!


 悔しさのあまり地面を殴りつける拳から血が滲んだ。


「いま、治しますから・・・」


 やっとの思いで手を伸ばしたカルマナは、うめき声を上げるジュリエットに治癒魔法をかける。


 みるみる傷が塞がり、気力と体力が戻ったジュリエットは急いでカルマナを抱き起こした。


「カルマナ様?! しっかりしてください! カルマナ様!」

「あはは。そんな顔しないでください。大丈夫、ちょっと疲れちゃっただけですから」

「で、でも!」

「ジュリエットさん、手を」


 カルマナはジュリエットの手を握り、目を閉じた。


「『聖命還流(リジェネレーション)』」


 優しい光がジュリエットの体を包み込んだ。


「これで、ある程度は攻撃に耐えられると思います。何とか活路を見出してください。そうすれば、きっとカインさんが・・・」


 ジュリエットは気を失ったカルマナをそっと寝かせ、ゆっくりと立ち上がると、上空のドラゴンを睨みつけた。


「お前は絶対にこの手で倒す」


 ジュリエットは双剣を構え意識を集中させる。


 瀕死のカルマナのかけた魔法はそう長くは持たないだろう。


 その間に何とかして突破口を見つけ出さなければ・・・。


 ・・・あれは? 


 今、クリスタルドラゴンの背中が光った?


 まさか。いや、可能性はある。


 考えている暇はない。


 賭けるしかない。


「ジュリエット! 背中だ! 奴の背中を狙え!」

「背中・・・」


 意を決したジュリエットが飛び出す。


 再びドラゴンの発動した魔法により、大量の氷柱がジュリエットに襲いかかる。


「はああああああっ!!」


 ジュリエットは俊敏に駆けながら、舞うように双剣を振り襲いかかる氷柱を斬り刻んでいく。


 氷柱が彼女の肩口や四肢を裂き鮮血が散る。


 それでも彼女は迷わず突き進み、そのまま怯むことなくドラゴンとの距離を縮めていく。


 彼女の勇姿に心が沸き立つ。


 一瞬でいい。


 チャンスを生み出せれば。


 朦朧とする視界の中、インビシブルに銀色の弾丸を装填し、突撃を仕掛けるジュリエットの背中越しにクリスタルドラゴンに照準を合わせる。


 地に這いつくばりながら片腕で構える銃口が微かに震えている。


 魔力回路がイカれた状態では普通の弾丸を放つのが精一杯だ。


 猛撃する氷柱を捌くジュリエットの産んだほんの僅かな隙が、その美しい舞をすり抜け、一本の氷柱の接近を許した。


 そこだ!


 祈りと共に発砲した弾丸は氷柱を貫きクリスタルドラゴンの体に命中し、大きくその体を揺さぶった。


 生身で受けた発砲の衝撃により肩が外れ、インビシブルが手から弾き飛ばされた。


 右腕に走る激痛をおして夢中で叫ぶ。


「行け!!」


 俺の声に応えるように、ジュリエットは流れるような動きを止めることなく空中の氷柱を軽やかに飛び渡り舞い上がった。


「『幻の風(ファントム・ブレス)』!!」


 高く跳躍したジュリエットの姿が景色に溶け込むと同時に、クリスタルドラゴンは刹那、彼女の姿を完全に見失った。


 姿を現した彼女が遥か上空から急降下する様は、まるで天が流す一筋の涙のように強い輝きを放つ。


「やああああああっ!!!」


 全身のバネを利用し振り下ろした彼女の双剣がクリスタルドラゴンの背中に突き刺さった。


 一瞬訪れた静寂の後、砕け散ったガラスのように乾いた音が響き渡った。


 次の瞬間、クリスタルドラゴンの体が氷の塊となって弾け飛んだ。


 煌めく小さな氷の粒がゆらゆらと舞い落ちる。


 その光景を目にして、緊張の糸が一気に切れた。


 ふぅ・・・。


 宙を華麗に舞いながら着地するジュリエットに思わず安堵の息が漏れる。


 何とか窮地を脱したようだ。


 こんなにハラハラしたのはいつぶりだろう。


 だが、歓喜の声を上げるジュリエットの姿を見たらそんな考えもすぐに吹き飛んでしまった。


 圧倒的に実践経験が足りない中よくやった。


 大したものだ。


 気付くとカルマナも目を覚ましていた。


 傷だらけだというのに、自分のことのように嬉しそうに微笑みながら座り込んでいる。


「お前が昼寝している間に終わったぞ」

「あはは。おかげさまでいい夢が見れましたよ」


 カルマナはフラフラしながらインビシブルを拾い、俺の目の前に差し出した。


「ほら。大切な相棒は手放しちゃいけませんよ」


 大切な相棒か。


 そんなものは・・・。


 まただ。


 ・・・なんだ、この感覚は?


 何か大切なことを忘れているような。


 心にぽっかり穴が空いているような感覚だ。


 恐る恐る銃に触れると、まるで渡さないと言わんばかりにカルマナの手に力が込められた。


「何だその思わせぶりな態度は」

「物にはその人の思いが込められます。その思いは人の数だけ存在し、物もまた、そんな人々の思いを物言わぬまま受け継ぐのです。その意味において、一つとして同じものなんてないんですよ」


 そう言ってインビシブルを差し出すカルマナの笑顔は、どこか儚く寂しげだ。


「だから、そんな悲しい目をしないでください」

「そうだな。すまなかった」


 考える前に言葉が出ていた。


 カルマナの言葉が響いたのだろうか。


 素直にそう思えている自分が不思議だった。


「カルマナ様! 無事で良かった!」

「ジュリエットさん! 見惚れてしまうくらい素晴らしい剣技でしたよ!」


 カルマナとジュリエットは生き別れた恋人のように勢いよく抱き合う。


「カルマナ様の支援魔法とお師匠様の助言のおかげです!」

「やっぱり! カインさんならきっと何とかしてくれると思ったんです! さすが私のカインさんですね!」


 さっきまでの悲しげな雰囲気はどこへやら。


 急に誇らしげに胸を張るカルマナに、ため息を漏らした。


「倒したのはジュリエットであって俺じゃない。彼女がよくやってくれたんだ」

「ありがとうございますお師匠様!」


 ジュリエットの笑顔が咲き乱れる。


「まだ終わったわけではない。アネットと精霊を探さないとな」


 立ち上がろうとした時、カルマナは自然に自分の体を入れ俺を支えた。


「さあ。行きましょう」


 どれだけステータスが高くても。ジョブを極めても。


 結局、一人では何もできない。


 そんな俺を支えてくれる仲間がいる。


 それがこんなにも心地良いなんてな。


 そして、絆の力が人を強くしてくれるということを改めて知ることができた。


 ロザリア。


 全てが終わった後、俺はお前に謝らなければならないな。


 たとえ心に思っていなかったことだとしても、お前と仲間を深く傷付けてしまったことを。


 お前たちの気持ちを裏切ってしまったことを。


 この罪は一生消せないのかもしれない。


 だが、もしも許されるのなら、またお前の笑顔を見たい。


 お前の隣で。


 一番近くで。


 それまで、俺は全力で運命に抗い続ける。


 そのために魔王を倒す。


 こんな頼りない俺を必死に支えてくれる、こんなにも頼もしい二人と一緒に。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


皆様の応援が、何よりの励みになります!


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします!(広告下の☆をタップで簡単に登録できます)


また、読み進める途中でも構いませんので評価をしていただけると大変嬉しいです!


これからも、どうぞよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ