表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/66

光のよすが

翌朝、リヤたちは作業を分担することを決めた。


「俺たちは森へ行って汚染源を取り除く。水質の改善には時間がかかるだろうが、やるしかない」

ルマンが力強く言った。

「私は街に残るわ」


リヤは穏やかだが揺るぎない声で答えた。


「市民たちに安全な水源を伝えて避難を促す。それと同時に、病気の拡大を防ぐための治療法を考えるわ」

「一人で大丈夫か?」


キーノが心配そうに耳を動かしながら尋ねる。


リヤは微笑んで答えた。


「ありがとう。でも、私の唯一の取り柄は王女という役割だけだから。究極、王女の権限で無理やり非難させるわ!」


ルマンは彼女をじっと見つめ、短く頷いた。


「無理をするな、リヤ。俺たちも必ず成功させる」



ルマンとキーノは、鳥の死骸が散らばる池で作業を始めた。防護用の布を巻いた手で、一羽一羽慎重に袋へ詰めていく。


「これじゃ終わりが見えないな……」

ルマンが額の汗をぬぐいながら呟いた。

「それでもやるしかない。誰かがやらなければ、この街は終わる」

キーノは鋭い眼差しを水面に向けた。

「だが、二人だけじゃ時間がかかりすぎる……」


その時、茂みの奥から複数の足音が近づいてきた。驚いて振り返ると、若い獣人族たちが数十人、工具や袋を手に現れた。


「キーノ! 助けに来たぞ!」

先頭の青年が元気よく声を上げた。


「お前たち……」

キーノは一瞬驚き、次に嬉しそうに笑った。


「こんな危険な仕事に手を貸すなんて、無茶な奴らだな」


「俺たちは信じてるんだよ、キーノ。お前が信じる王女様とやらの力をな!」


青年がそう言って笑うと、周りの若者たちも一斉に作業を始めた。


「ルマン殿、あなたたちに任せきりにはできません。我々にも力を使わせてください」

一人がルマンにそう言い、手際よく作業を進めていく。


ルマンは静かに頷き、短く感謝を伝えた。


「助かる。共にやり遂げよう」


こうして、鳥の死骸の処分作業はスムーズに進み始めた。次第に水質改善のための簡易ろ過装置も設置され、獣人族の知恵と力が発揮されていく。


一方、リヤは街の広場で市民たちを前にして頭を下げていた。


「この病気を防ぐため、どうか安全な水源へ避難してください。獣人族と協力して、必ず解決策を見つけます。そして病気の人たちは私用意した隔離部屋へ!」


リヤの声は強い意志に満ちていたが、冷たい視線を向ける人々。


「また混血の王女の気まぐれか?」

「獣人族なんて信用できない! あいつらがこの疫病を持ち込んだんじゃないのか?」


罵声が飛び交う中、リヤは耳を小さく震わせたが、顔を上げて毅然とした態度を崩さなかった。


「どうか信じてください。私は皆さんを救いたい。それだけの気持ちなんです」


リヤが深く頭を下げたその瞬間、一人の女性が前に進み出た。


「この方のおかげで、うちの息子が助かったんです!」

涙ながらに声を上げたその女性の言葉に、人々の視線が集まる。


「彼女たちが用意したお薬がなければ、私の子はもうこの世にいなかった……どうか、この方たちを信じてください!」


リヤは驚きながら女性に微笑み、再び頭を下げた。


「ありがとうございます。その信頼を決して裏切りません」


広場にざわつきが生まれ、一部の人々がリヤの言葉に耳を傾け始めた。その様子を見て、リヤの耳が微かに動いた。


日が沈む頃、森での作業を終えた獣人族たちが街へ戻ってきた。


「リヤ王女!」


先頭を歩くキーノが声を上げた。


「キーノ、ルマン……!」


リヤは駆け寄り、彼らを迎えた。

そして、リヤは二人だけではないことに気づき、駆けよる足を止めた。


「鳥の死骸はすべて処分した。ろ過装置も設置したから、水質は徐々に回復するはずだ」


ルマンが短く報告する。

その背後では、若い獣人族たちが疲れた顔で笑いながらリヤを見つめていた。


「王女様、少しは役に立てましたかね?」


一人が冗談めかして言うと、リヤは驚きと感謝で胸がいっぱいになった。

一人でもいい。ひとりぼっちでもいい。


そう思っていたけれど、どれほど、誰かに理解してほしいとも思っていた。

誰か私の声を聞いて、と。


「みんな、本当にありがとう……!」


リヤの耳が感動で大きく揺れ、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えながら深々と頭を下げた。


「あなたたちの力があったからこそ、ここまで来られました。感謝してもしきれません」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ