第7話 激戦とミスと混乱と 開幕戦・岡山 決勝-後編
お久しぶりですラドロです(実に一年以上のブランク)!
今回は途中で止まっていた開幕戦の続きです!
それではどうぞ!
周回数11周。早くもピットでは動きが出始めていた。GT500クラスはファースタースープラが、GT300クラスではsonic フォードがピットインを選択した。
早い目のピットインによってタイヤが摩耗した状態では使わず、美味しいところが過ぎたらすぐにタイヤを交換し、その分のアドバンテージを生かし、ピットとその前のラップタイムの差で前に出るアンダーカットというものを狙い、とにかく前に出ようという魂胆なのだろう。給油とタイヤ交換、そしてドライバー交代をこなしてそれぞれ37.5と38秒間のストップタイムを挟んで第2スティントへと向かった。
続いて周回数12周。ここからピットウィンドウがオープンとなり一般的な戦略を行うのに適したタイミングとなる。ここでは多くのマシンがピットインした。それはタキオンも例外ではなくコース上ではKONを抜けないと判断し、終盤のペース不利を承知で早めのピットインを敢行した。ちなみにタイヤと燃料は周回数が実際の3分の1しかないことを鑑みて実際の3倍のスピードで消耗するように設定されている。
残り15周をどう走るのか。これが同タイミングでピットインしたライバル勢から頭一つ郡を抜けられるかの鍵となるのだ。
さらにさらにレース14周。このタイミングでほぼ全てのチームがピットインを済ませた。これはアンダーカットの逆で、ピットタイミングの差で相手に抜かれるのを承知で終盤のタイヤに余力を残すオーバーカットという戦法だ。こちらはライバルより少ない第2スティントでどれだけ盛り返せるかが注目となる。
レース17周。俺ーー高橋富一郎は下位から盛り返して、なんとか入賞圏内ギリギリというところまで来ていた。
(タイヤが終わる前に、オーバーカット組のタイヤが本領を発揮する前に、前に出ないと…!)
ピットから出てきたばかりでまだタイヤが温まっていないと思しきマシンをその間にもオーバーテイクし、バックストレートに入り視界が開けた瞬間、目に入ってきたのは…
「博◯霊夢ぅ!?」
だった。
「や…ちょ、前のマシンどういうこと!?なんでリアに2次元キャラが…」
「あぁ、Toho gamesか。あいつらガッチガチの痛車を持ち込んでるだけだ。集中しろ」
「あ、あぁ…」
(てっきりデイスプレイかなんかで表示してんのかと思った…)
非常に困惑しながらもマシンの馬力の差で直線上であっさりオーバーテイクし、物珍しさからバックミラー越しにAMGの姿を観察しようと目線を移すと…
(…いない!?)
「気をつけろ。バックストレートで黄旗だ」
「何があった?」
「わからない。確かなのはToho games funのAMGが急にスローダウンしたんだ。…しかも今止まった」
その時、マシンのミニパネルが黄色く灯り始めた。目を向けるとそこには
「FCY…?」
「注意してくれ」
「ああ…」
ついさっきまで遅いながらもピンピンしていたAMGが急にストップしてコース全体で80キロ以下の時速制限、オーバーテイク禁止が命じられる事態にまでなった。これだからレースは何が起こるかわからない。そうのんきに半周を走っていると事件というほどの事実が眼前に広がっていた。
「…GT-Rがピットアウト…?」
「やられたな。現在11番手。前にはフレッシュタイヤでパワーもあるGT-Rが前だ。リスタートは無理するな」
「くっっそぉぉぉ!!」
コックピット内に絶叫が虚しくこだまするのだった。
「FCY解除。10秒後にFCY解除」
「了解」
俺は周回数残り7周でその無線を受け取った。現在2番手後ろとは絶対的なマージンがありながら前との距離も大きい。けど
(追いついてやる…!)
「行け!リスタートだ!」
もう体は動いていた。アクセルペダルを一気に踏み込み、景色がだんだん流れるスピードを上げ始める。ここはバックストレート。タイムロスは一番少なくできる場所のひとつなのだ。インジケータのランプが全灯するたびに右手の人差し指でステアリング裏のパドルを叩く。
そしてブレーキング。一気に100キロ以上速度を落とし、タイトなヘアピンを曲がりこむ。
(リアタイヤの応答が怪しい…けど行けない訳では無い!)
セーブするところではセーブしつつ行けるところは限界ギリギリをせめて走り続ける。すると
(…あっ)
一瞬白銀のリアが見えた。KONとの差が縮まっているのだ。
(いける…!)
確かな手応えとともにステアリングを握り直した。
一方300クラスのNSX、Tapeのポーリーは悲痛な無線を飛ばしていた。
「Cannot leave R8!(R8を突き放せない!)」
「Okay,understand. Please keep position, thing you have to do is only saving 1st position!
(わかった、わかったよ。ポジションを保ってくれ。君がやるべきは1位を守ることだ!)」
しかし低速コーナーを立ち上がるたびに無情にも距離は縮まってゆく。そして
『さぁついに近づいた!レース残り3周、漆黒のNSXの真後ろに真紅のR8がピタリとついた!まずはぁ…バックストレートへのヘアピンを通過します!』
『あ、NSXちょっとミスった!』
『ですよねぇ!肝心なところでNSXの後輪が滑りかけた!僅かなロスですそかしその僅かなテールスライドを百戦錬磨のクイーンが見逃すはずがありません!!サイドバイサイドで立ち上がった!NSXが負けじと加速しますが…ポジションを保つには足りないかもしれません!』
『R8は相当ブレーキングを遅らせることができますからねぇ。さぁここ勝負ですよ』
『NSXがブレーキング!そしてR8もそれに続く!前に出るのは…R8だ!トップがついに入れ替わった!』
「Nooooo!」
「Calm down、calm down. You still have some chance(落ち着け、落ち着いて。まだチャンスはある)」
「But She is faster than me!(けど彼女は俺より速い!)」
「okay…keep saving position. Your position is 2nd(わかったよ…順位を守れ。今の順位は2位だ)」
「F**king sh*t…(クソが…)」
結局彼らのラスト数周は虚しいパレードランとなった。
そしてレースも終わりの時がやってきた。
『序盤は新たな刺客ベータエナジー、後半は盟友タキオンに追い立てられましたが、なんとか逃げ切りました!紺色のGT-Rが力強く最終コーナーを回りました!
VirtualGT、開幕戦岡山!GT500はチャンピオンチームKONが優勝!!』
『やっぱり強かったですね〜』
『ええ。さぁそして300クラスもやってきた!真紅のR8!シーズン1でGT500クラスでシーズン5位と奮闘したガールズレーサーがGT300で輝き始めます!
開幕戦岡山、GT300クラスはクイーンR8、トップチェッカー!!』
ついに決着した岡山レース。無線には歓喜の色がにじみ始めた。
「オッケー、創一。1位だよ。おめでとう」
「ありがとうーー!!いいじゃん!この調子でいこうよ!!」
「うん。次回からはその分きついからね。意地の見せ所だよ」
「やってやろうじゃん!」
「結衣、1位だよ1位!」
「ええ、皆ありがとう。けどまだまだもっと行こうよ。シーズンを全部支配しようよ!」
「うん。できたらいいね。
…というかテンション高い?だいぶ野望が滲んでいたけど」
「細かいことはいいのっ」
結局トップ10は、500クラスがKON、タキオン、NTT、チョクセンバンチョー、マザー空力、ファースター、アミューズメント、HEAT、Niffan、TGRFとなった。
また300クラスはクイーン、Tepe、sonic car、MOA、Ankレーシング、楽天、ミラクルセブンス、strong、パナソニック、Xであった。
ポイントランキングは常軌の並びのままなので割愛するが、ベータエナジーとsound speedはリタイアしたもののポールポジションを獲得したことで1ポイントを獲得した。
幸先の別れたスタートを切った彼らは、翌月のレースに向けてVRサーキットから踵を返した。
(続く)
いががでしょうか!受験も終わったので今後はまたVGT(改)と本作品を更新していくつもりです!また、旧シーズン1のほうではスピンオフ作品の執筆もおこなうのでそちらもよければよろしくお願いします!
本作品を高く評価していただけたなら次回以降もぜひご一読ください。それでは!