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VirtualGT シーズン2  作者: ラドロ
4/15

第3話 プレシーズンテスト in 富士

どうも!ラドロです!今回はようやく走行が始まります!


それでは、どうぞ!

チームお披露目会から約2日後。俺はレーシングスーツ姿で懐かしの富士スピードウェイに足を踏み入れていた。

今日からの2日間、時間にして計2時間の間、マシンを主に空力面において開発するプレシーズンテストが行われている。そのスケジュールは500クラスと300クラスが順に45分ずつとり、15分間の両クラスによる混走を今日はここ富士で、明日は鈴鹿で行う。

(…でよかったよな)

おさらいを終えた俺は視線を上に向ける。その先には3年前と同じように何やらタッチパネルを操作する忠宏と時々、青い光とともにマシンパーツが変化してゆくGT-Rの姿があった。

プレシーズン最初の各チームの動きは大きく2つに別れた。一つは俺らのように早速マシンに変更を加えるチーム。これまでの経験があったりもうすでにどこを改善させるべきかがわかっているチームはこの流れをとった。逆にマシンの特性や実際の挙動すら知らないチームは、まずは変更を加えずに走る。

(俺たちも、一度思い出すという意味では走るべきだったのでは…)

現に俺達以外でVirtualFormula1に出場経験のある者たちはすでにピットアウトしている。フィードバックをより正確にするには直前に比較対象のデータが有ればより心強いのだが…

「よう、大祐」

「あぁ…創一」

「何ぼさっとしてんだ?まさか、ビビってたり…」

「んなわけねぇだろが」

「あーー痛い痛い痛い!わかったから頭掴まないで!」

一瞬心を読まれたのかと思ったが、VR世界では現実世界同様、そんなテレパシーのような機能は存在しない…はず。

「よし、終わった」

「お、ヒロ、できたか」

「あぁ、大きな変更を1つ、細かいのを2つ施した」

「具体的には」

「フロントサスペンションの硬さを柔らかくした。そしてリアのダウンフォースをわずかに増大させ、マシン裏面から得られるダウンフォースはややフロントよりにした。感触はどうなるかわからない。だから”まずは大祐が2周走って確かめてみて”」

「!…”いきなり無茶言うなよな…”」

あのときと変わらない言葉と表情とともに俺は3年ぶりに乗車した。

(ただいま、相棒)

3年ぶりのハコ車は匂いも、景色もノイズも変わっていなかった。…走りもそうだといいのだが。

NPCの出庫指示を確認した俺は意識を切り替えた。



(…来た)

僕がカスタマイズした、紺色のGT-Rがメインストレートに到達し、ぐんぐん加速してゆく。中継画面からリアルタイムに手元へと送られてくるマシンデータに目線を移す。まず、調べたいのは最高速。今回のセッティングでどれくらい変化したのか(ちなみに昨シーズンは302キロを記録した)。手元の計器を操作しもう1つの速度計を呼び出す。こちらは最高速が更新されたときだけメーターの数値を変化させるもので前回もピット側はこれを用いて最高速を確認したものだ。

(さぁどうだ…)

目にも見えぬ速さで俺たちの前を通過したマシンがブレーキランプを点灯させた瞬間、2つ目のメーターが示していた値は

「300キロジャストか」

「少し落ちたな」

「あぁ。ただ予想よりは落ち幅が小さい」

あとはコーナーの性能で向上が見られるか、だ。

そうつぶやきながら視線を上げるともう大祐は次のチェックポイントに差し掛かろうとしていた。100Rだ。ここは道が内側にバンク形状になっている高速コーナーで、ここもーーまあほぼ全部といえば全部だが、セッティングの変更がどうなっているのか調べたいところだ。そしてマシンは難なく通り過ぎ、次のセクターへ突入した。なんもわからん…

(ま、結局戻ってからのフィードバック頼みか)

若干気を緩めながらも観察は続ける俺だった。



「OK、Yua.We could make sure your machine is good.Please start your attack lap(オッケー、ユア。マシンが正常であることを確認できました。アタックラップに入ってください)」

「Copy(了解)」

短く返事を返したわたしは眼の前の景色に集中する。視界下部には私達ベータエナジーが選択し、わたしの両手によってステアリング越しに操られるNSXがあり、上部にはガラス越しに1.5キロという信じられないほどの長さをもつメインストレートが広がっていた。

アクセルペダルを強く踏み込み、エンジンの唸り声をそれまでよりも1段、いや2段ほど高くしてアタックに臨む。コンマ1秒をここで争うからには最高速の伸びが重要だが…1コーナーへのブレーキングの前にメーターの針が300を指すことは…

(…流石になかったわね)

そう。元々NSXはコーナリングマシン。いくらトラッグを減らし、最低限のダウンフォースを取り付けても結局直線で最速にはなれない。

ごくごく当たり前の分析をしながら1コーナーを立ち上がるマシンのステアリングを右にゆるく傾ける。短い登り坂を挟んで軽いブレーキング。マシンをほぼ直角に左折させ、このコース一番の高速コーナーにつっこんでいく。100Rだ。

首にかかる圧力にものを言わせながらマシンをダウンフォースで曲げてゆく。そして内側に向けて凹んでいた路面がフラットになってくると同時にマシンの安定感が高まったのを確認したわたしはペダルを右のアクセルから左に踏みかえる。

一気に減速したマシンをコースにそって左に旋回させるとその先に見えてきたのはやや右に弓なりに曲がっている300Rだ。ここには一体どれだけ名前にRのつくコーナーがあるのよ。

心で愚痴りながらもフルアクセルでそこを抜けると今度は短い下り坂を挟んでBコーナー。100R直後のそれよりもずっとハードなブレーキングをへて左にターンイン。一瞬アクセルを踏んで、再びブレーキング。左に切り込むと更に右へと舵を切る。

ここから怒涛のコーナーセクションが始まるのだ。まずは傾斜の付いた道を回り込むように旋回し、道がニュートラルに戻れば次は左コーナー。ここは逆バンク状になっているので後輪のグリップが遠心力に負け、オーバーステアがでることのないよう、気を使いながら旋回する。

それが終われば少しの間だけスロットルを全開にし再びブレーキングすればそこはヘアピンじみた最終コーナー。ここはターンインのときは道がバンク状になっており曲がりにくいのに途中からは逆バンクに形状が変わりまたオーバーステアに気を使わなければならなくなる。

VF1のとき以上に丁寧にコーナーを処理したわたしはその分荒っぽくアクセルを踏み、コントロールタワーへと向かう。

(少しでも、少しでも強く踏め!コンマ1秒も失えない!)

そんな願いに答えているのかいないのか、想定とは違った速度でメーターの数字が変化してゆく。そして…

「…How was it!?(どうだった!?)」

「1:27:300。It’s the second fastest time(1分27秒300。2番手のタイムです)」

「Copy. …Can I box? I have some point I wanna change(了解。…ガレージに戻っていい?いくつか変更してほしい点があるの)」

「Okay.come back through the outside of course(わかった。コースの外側を通って戻ってきて)」

VF1時代の空力をベースにした、完璧なマシンを作る。そんな目標を達成すべくわたしは頭とエンジンを回転させるのだった。



「……フーーー…」

「どうした?拓人。ずっとマシンを眺めて」

「いや、ついに念願のVGTでの走行なので、すこし高揚しているというか、落ち着けたいというか…」

「なるほどね」

そういう監督ーーアンク氏、本名はなぜか意地でも教えてくれないーーを見ながら俺、金田拓人は両手を腰の横に当てる。

今から300クラスのフリー走行が始まる。担当は相棒で先輩の中田千佳。高1の女性ドライバーだ。小さい頃からカートの経験があり、今回は「本格的なマシンに乗る予行練習」として手を貸してくれた。

ブウゥゥゥゥゥゥ…

深緋色のGT-Rが唸り声をあげ始めた。千佳がエンジンを始動しガレージから出る体勢を整えたのだ。

そしてまもなくマシンが動き始めた。わずか45分間の練習時間が始まった。

俺はGT-Rの後ろ姿を無言で見送った。


開始15分。俺はピットウォールでヘッドホンに手をかけていた。

「…千佳さん、どうですか?フィーリングは」

「拓人くん? ちょうどよかった!次に交代するとき、リアウィングどうする?今ね直線はいいんだけど少しコーナーでの許容範囲が狭いの!少しでもアクセル踏みすぎると挙動が乱れそう」

「ならウィングにやや角度をつけてもらいますが…千佳さん」

「ん?なにー?」

「アタックラップ直後とはいえなんで走行しながら会話できてるんです?」

「アタックラップ直後で全開じゃないもん」

えぐぅ…これが小さい頃からレーサーやっていた人の実力なのか。さすが。

「…なるほど、とりあえずもう数周走ってくださいピットインのタイミングは改めて監督が指示してくれます」

「了解」

俺も、できることはすべてやらねば。そう思い、ガレージへと踵を返す俺だった。

ちなみに千佳さんは結果として初めて足を踏み入れたバーチャル世界で初めて運転したGTカーで全体の2番目に速いタイムを叩き出した。

やっぱ異次元だってあの人。



(続く)


今回、前の回よりも2週間以上間が空いてになりましたね…

すいません(補足:夏休みの宿題を投稿予定だった週にやっていた。なんせ休み残り5日の時点でなにひとつ宿題が終わっていなかったのだ。みんなはこんなことにはならないようにな!)

今回も読んでいただきありがとうございました。もし本作品を高く評価してくださるなら次回以降も読んでいただけたらと思います。それでは!

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