グーゴル・グラハム・リヴァイアサン1
巨大数の計算問題を小説っぽくして書いてみました。
同内容の文章をハーメルンにも投稿しています(リンク:https://syosetu.org/novel/271267/1.html)。
時は、西暦2031年。
グーゴル=グラハム=リヴァイアサンは、東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七類に合格するため、死を賭して受験大戦争に挑むことを決意した。
しかし、これは容易に達成できる目標ではない。並大抵の勉学──否、頭から勉強以外の万物を排除して勉強したとしても、叶わないのである。
1日24時間勉強さえ、東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七類に合格するには、足元にすら、全く以て、到底、何ら及べたものではない。そんなおちゃらけた態度では、合格は絶対にできない。
であるから、グーゴル=グラハム=リヴァイアサンは時間延長装置──アインシュタイン時空歪曲装置α──を自宅に備え付け、極限まで時間を引き延ばせるようにして、受験大戦争に備えることにした。食事や排泄、着替えや入浴などは、XATSZという装置に任せる。
一日の勉強時間を決めるにあたって、グーゴルはアボガドロ数(NA)に着目した。アボガドロ数は、概数で6.02×10²³という、極めて大きな数である。アボガドロ数は化学的に重要な数であり、原子をアボガドロ数個だけ集めると、その原子の原子量に等しい質量になることが知られている。
もちろん、当然だが、言うまでもなく、1日6.02×10²³時間勉強では、東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十六類に合格することはほぼ不可能である(一説には、1日6.02×10²³時間勉強する場合、東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七類に合格するまでに約1無量大数×10万年が必要であるという。また、ワイロを積んで東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七類に合格するには、10¹⁰²⁴円が必要らしい)。
よって、グーゴルはアボガドロ数をアボガドロ数乗した(すなわち、6.02×10²³の6.02×10²³乗)時間を、一日あたりの勉強時間にすると決めた。これだけ勉強すれば、東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七類にもかろうじて合格することができるはずだ。
問. グーゴルは、1日あたり何時間勉強するか。10の累乗で近似して答えなさい。有効数字は8桁。アボガドロ数=6.02×10²³とし、かつ、必要ならば、log6.02=0.7795965を用いなさい。
・解答
以後、aのb乗をa↑bと表記することがある。
求める勉強時間は、(6.02×10²³)↑(6.02×10²³)[時間]である。
(6.02×10²³)↑(6.02×10²³)の常用対数を取ると、
log{(6.02×10²³)↑(6.02×10²³)}=(6.02×10²³)log(6.02×10²³)……①
log6.02=0.7795965より
①=23.7795965×6.02×10²³≒143.15317×10²³=1.4315317×10²⁵
よって、(6.02×10²³)↑(6.02×10²³)≒10↑1.4315317×10²⁵
以上から、求める勉強時間は、10↑1.4315317×10²⁵[時間]。
補足:本問では、時間の単位を時間と指定したが、実はある程度自由に単位を定めても、答えを出すことはできる。
1世紀を秒に直すと3153600000=3.1535×10⁹[秒]であるが、桁数が9個変わるくらいでは答えには影響しないから、単位が秒でも世紀でも、数値は変わらない。
・余談
観測可能な宇宙にある原子の個数は10⁸⁰個(1京無量大数個)であり、本問で求めた数を算用数字で、一文字あたり100個の原子を使って書き表すならば、これは可能である。
〈小ネタ〉
・グーゴル・グラハム・リヴァイアサンの由来について
「グーゴル」は10の100乗をあらわす巨大数である。Google社の由来でもある。
「グラハム」はギネス世界記録にも登録された巨大数であるグラハム数からとっている。
「リヴァイアサン」はキリスト教における海の巨大怪獣だが、ここでは10の666乗の階乗で定義されるリヴァイアサン数からとっている。
これら3つの数の大きさは、グーゴル<リヴァイアサン数<グラハム数 である。
・東京大学理科七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七類は、理科I類などのもじりだが、七兆六千二百五十五億九千七百四十八万四千九百八十七(7625597484987)は3の累々乗、すなわち3の27乗である。ローマ数字ではこれほど大きい数を表せないので、漢数字を使っている。
お読みいただきありがとうございました。