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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

テンプレなハゲ教頭。テンプレな元ヤン教師に追い出される

作者: ヒロモト

ポイズン

『教頭先生。これからは岡崎君みたいな若くて新しい先生が我が不離用(ふりよう)高校には必要なの。あなたには辞めてもらうわ』


「校長!?」


こんな事になるとは。これまで学校と校長と生徒の為に尽くしてきたのにそれはない。


「ジジイ!心配すんな!俺がこの学校をグレートに変えてやっからよ!」


……岡崎。誰にでもタメ口の金髪にTシャツの23才。見た目も良く生徒人気は高い。校長は私よりもこいつを選んだって事か……。

校長。口うるさいハゲた教頭より自分には逆らわない若い教師を側に置いておきたいのですか?もういい。


「お世話になりました」


新しい学校を探そう。


『……ねぇ。帰ってきてくれないかしら?』


「お断りします。私はもう小里(オリ)高の教師なんです。今請け負ってる生徒たちを卒業まで見届けないといけません」


『……そんなぁ』


電話越しでも校長が弱っているのが分かる。相当経営が傾いているのだろう。それにしても一年で根を上げるとは情けない!こうなる事は分かっていた。校長はお飾りで学校を回していたのは私だ。校長は書類の一枚すら私がいないと見つける事も出来ないのだから。


『おいっ!校長!なさけねーことすんなよ!ジジイ!俺だ!帰ってくんなよ?新しく革命的なニュー不離用校にはお前みたいなジジイなんていらねー』


ふぅ。岡崎か。相変わらず敬語の出来ない奴だな。


「ご心配なさらず。帰るつもりはありませんよ。ところで岡崎先生。あなた噂では生徒と付き合ってるとか?」


「おっ?羨ましいのか?ウチは生徒と教師の恋愛は自由だ。恋愛に年の差も身分もねー!」


「……君ねぇ」


耳障りはいい。だが生徒は自分の子供だと思って大切にしろと学んだ私からすれば生徒に手を出す岡崎はケダモノだ。

大丈夫だろうか?校長が岡崎の操り人形だとしたら生徒にまともな性教育はしてないんだろうな。


「学力が大分落ちてるともよく耳にしますね」


『あーあ。出たよ出たよ。老害だねぇ。青春は勉強だけじゃねぇ!もっと大事な事がある!それを教えてやるのが教師でそれを知るのが学校って場所なんだ!』


「君の脳ミソの存在を疑うよ」


勉強を教えるのが教師で学校はそういう場所だよ全く。青春は勉強だけじゃねぇってのは間違ってはいないが、授業もろくにしないならそれは教師じゃないし、授業のない学校はただの子供の溜まり場だ。


『ふんっ!生意気なジジイだな!おいっ!日曜は甲子園地区予選だな。可哀想に。ウチの野球部はつえーぜ?しかも顧問は俺だ』


「安心しました」


『どーいう意味だ!?』


確かに不離高の野球部は強い。私が監督をしていた時はね。岡崎に代わったのなら……一回戦は楽勝だって事だな。良かった良かった。



日曜日。38対0でコールドゲーム。控えの投手でノーヒットで抑えられたのは大きい。選手の自信になっただろうし、エースを温存出来た。


「……なんでだ?なんであんな常識に凝り固まった連中に俺のドリームチームが負けるんだ?」


落ち込んでいるのは岡崎だけだ。選手はもう帰り支度をしている。


「常識を語る前に選手に基礎を学ばせなさいよ」


「あっ!殺すぞ!?」


不離高の選手の髪型も服装もプレイも酷かった。漫画じゃないんだからピアスだらけの選手や真っ赤な色のロングヘアーの選手が大活躍……なんてないんだよ。


「教師だったら嫌われてでも生徒の為になる事をしなさい」


「うるせー!老害!」


「んっ?……拳まで腐ってますね」


『『監督!?』』


岡崎に殴られた私を見て選手達が岡崎を取り押さえてくれた。


「ジジイ!お前のは野球じゃねぇ!拷問だ!生徒にどれだけ辛い練習をさせた!?野球はな!勝ち負けじゃねぇ!魂と魂のキャッチボールなんだよ!」


「勝ちたいと思ってる生徒を勝たせてあげるのも教師の役目でしょう?勝ってからいいなさい。そういう事は。見苦しい」


「ゆー、るー、さー、ねぇー!」


岡崎は駆けつけた警察に連れていかれた。もう二度と会うことはないだろう。


『正直先生の事は嫌いでしたが……この先何十年も『私の尊敬する人は?』と聞かれたら私は先生の名前を言う事でしょう』


『辛い事があったから楽しい事がより楽しかった。厳しさがあったからこの先の人生を楽しめる事。それを先生から教わりました』


『勉強ばかりしていたら。部活ばかりしていたらと思うと今もゾッとします。私が高校での青春を全う出来たのは先生のおかげです』


卒業生のお礼のメッセージ。何回経験しても慣れないし涙腺に来る。この日ばかりは生徒にからかわれても何も言い返せない。何か言葉を発したらそ」をきっかけに大泣きしてしまう。

ああ。今年もいい卒業式だったなぁ。



「お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだ」


「……また君か」


いい気分が台無しだ。駐車場でナイフを握る岡崎に会ってしまった。警備員は何をしている?生徒に被害があったらどうする?まぁ狙いは私のようだが。


「俺がクビになったのも。俺が捕まったのも。俺がフラれたのもぜーんぶお前のせい!」


「自業自得。因果応報という言葉を知っているかね?」


「るせーってんだよ老害!」


あーあ。ナイフの使い方がなっちゃいない。そんなんじゃあ駄目だよ。もっとフェイントを使わなきゃ。私は片手で岡崎の手首を握り、もう片方で首を絞めた

「おっ!?くるしっ……」


「君は生徒を妊娠させておろさせたそうだね?ニュースで見たよ」


「おれは……グレートな……革命児……新時代の教師……」


駄目だこいつ。こいつの『目を覚まさせる』事はもう無理そうなので寝かしてしまおう。

首を絞める手に少し力をいれた。岡崎は尿を漏らしながら気絶した。


「喧嘩も弱いのか。覚えておきなさい。教師なら生徒を守れるように強く……君はもう教師じゃないか」


私は警察を呼んだ。今度は執行猶予はつかないだろう。さようなら。岡崎。


「あっ。……へへへ。おかえりなさぁい」


女性のホームレスなんて珍しいな。なぜ校内に?と思っていたら校長か。ノーメイクだと分からないものだな。

恥ずかしさを誤魔化すようにずっとヘラヘラしている。ここは無視して見て見ぬフリをするのが優しさだな。


「あっ!」


派手なメイクの女生徒が校内で煙草を吸っている。

どこまで荒れてるんだこの高校は!


「貴様ら!煙草を吸うとは何事か!」


「おっさんも吸う?」


「敬語を使え!煙草は没収だ!」


「えー?」


不離高復帰初日。これは忙しくなりそうだぞ。


ポイズン

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