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雨男と希死念慮の雀  作者: Maolice
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サンタさんからプレゼントをもらう。

赤や緑のキラキラした安っぽい包装をされていて、赤いリボンで綴じられている。

それは手に取ってみるとずっしりと重量感があって、否が応にも中身への期待感を膨らませる。

入っているのは、一丁の拳銃。

そして一発の弾丸。


人並みに不幸で、人並みに幸福で、人並みに不自由なく生きてきてしまった。

人よりも不幸であれば、“私は不幸なんだ”と言い訳して死ねるのに。

特に嫌なことなんてないのにどうしてこんなにも死にたいと思ってしまうのだろう。

死にたい理由は腐るほどあるが、生きたい理由だって数え切れないほどあるのに。


買い物に行かないと食べるものがない。家から出るのが嫌だ。学校に行くのが嫌だ。仕事に行くのが嫌だ。洗濯したくない。お風呂に入りたくない。洗い物したくない。永遠に眠っていたい。したい時に楽しいことだけしていたいよ。

誰かとお話するのがいやだ。将来のことなんて考えたくない。朝起きるのが嫌だ。夜更かしできないのが嫌だ。今月の生活費を計算するのが嫌だ。

みんな当たり前のようにこなしている当たり前のことが、当たり前のように苦痛でしかない。

死にたい死にたい死にたい。


希死念慮って言葉を考えた人は天才だ。

こうまで漠然とした感覚を、一言で表してしまうんだから。

自分より下の不幸な人間を見下しても、奴らは必死に生きている。死にたいと言いながら生き延びてしまっている。

その上私を見て、「自分はこんなに頑張っているのにお前は」なんて言ってくるんだ。奴らは私に、理由がないと苦しんではいけないと言うんだ。

不幸比べをしてはこっちを見て、「それくらいのことで」って馬鹿にしてくるんだよ。私を根性なしなんて馬鹿にしてくるんだよ。

そうだ。首に縄を掛けられない根性なしの私は、目の前に銃があったら泣きながら顔を覆って、諦めと共に拾い上げてしまうだろう。


だから神様、サンタ様。

私に一丁の銃と、一発の弾丸をください。

死ぬ勇気などない私でも、指を動かすくらいの力はまだ、残っているから。

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