勘違いX勘違い=?
『ジリリリリッ!』な、何の音だよ……。
俺は音のする方向に手を伸ばし、うるさく響く……目覚まし時計を止めた。
──って。俺は……生きてるのか?
『ワンワオーン!』
サイキまるが俺に向かってとても嬉しそうに飛びかかってくる。
そして、俺は座っていた椅子ごと大きな音をたてながら倒れ込んだ。
いてて……ん、痛いってことは夢じゃないのか?
『ワン!』
あぁ……サイキまるぅぅ!!
俺はもう会えないかと思ったサイキまるをひたすら撫でまくる。
『ワ、ワウゥ……』
あぁ、正直もうダメかと思ったぞ……もうマグマには落ちたくないな。
というか、今のって『サイキョーゲーム』の中なのか?
魔王ドニラか……姿は見えなかったけど。そいつを倒してあのお姫様を救い出すゲームなんだな……。
あの魔王……仲間のはずの俺たちをサクッとマグマに落としやがったからな……。
今度会っ……てもまたやられるだけだな。
やっぱり強くならないと……。
って今何時だ? 目覚ましが鳴ったってことは……げっ!?
もう、バイトの時間じゃんか!?
「サイキまる! 俺は行ってくるから留守番頼むな!」
『ワンワワン!』
……こうして、俺は。魔王ドニラ討伐のための算段を考えながら、バイト先へと向かった。
★
「ハルッぴ……」
魔王様は顔をうつむけている。顔はみえないけど悲しみに暮れていることは分かる。
「ま、魔王様……どうかなさったのですか?」
「っ!? ヒカル……?」
魔王様には悪いけど……そこに『ハルッピ』って人はいない。
ぼくは何とか崩れた壁のガレキから一旦『本当の姿』になることでこっそり出ることができた。
……魔王様には見せられないけど。
「……ううん、何でもないよ」
「…………」
魔王様は慈悲深く、恨まれるような方ではないことをぼくは知っている。
ぼくの前では笑顔でいてくれるけど……本当はずっと悲しんでいて、無理をしているってことも。
だから、ぼくは魔王様のために一生懸命頑張るんだ。
魔王様に本当の意味で笑顔になってもらうためにも。
「ヒカル? どうしたの?」
「え、いえ! 少し考え事を……」
いつの間にか魔王様はぼくの顔を覗き込んでいた。ああ、そんなに眩しい顔を近づけられたら……!?
「……魔王様。浴室の準備をいたします」
「え? 浴室……そうだね、そうしてもらえる?」
「はい」
ぼくは浴室の準備にとりかかる。さすがに赤く染まった顔はまずい。来客でもあろうものなら、泡を吹いて気絶すること間違いなし。
それに魔王様の綺麗なお顔が台無しだ。
X
もう行ったかな。
ヒカルが浴室の準備で出ていった後。私はガレキの下にいるはずのハルッぴの下へ駆け寄った。
でも、そこにハルッぴはいなかった。……当然だけど。
だって私が吹っ飛ばしてしまったのはヒカルなんだから。
ヒカルは気づいてなかったみたいだけど……ガレキの埃がついたままだったし、扉も開いてなかったのに入ってこれるはずないからね。
でも、一番の問題はヒカルにハルッぴのことを聞かれちゃったこと。
あの子は優しい子だから……私を気遣ってしまう。
ヒカルには自分の幸せを見つけてほしいのに。私は知らず知らずのうちに引き留めてしまっている。
……これ以上ヒカルに負担をかけるわけにはいかない。
私もできることはしていかないと。
サイキョーゲームの★★★★★評価ありがとうございます!
この世界を楽しんでいただけているようで、何よりです!