表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dear my wolf  作者: 蜂矢ミツ
4/37

白いうさぎと黒いうさぎ

 ここで、話を少しだけ、遡りましょう。

 白いうさぎと、黒いうさぎの話です。


 白いうさぎが物心ついた頃からずっと、黒いうさぎは苦しんでいました。

 人前では平気そうな顔をしていましたが、白いうさぎの前ではいつも、胸を掻きむしり唸りながら、涙をこぼしていました。

 そして、その痛みをぶつけるように、白いうさぎをぶつのです。


 白いうさぎも苦しかったのですが、黒いうさぎほどではないのでしょう。

 周りを見渡しても、黒いうさぎを助けてくれそうな人はいません。

 白いうさぎは、それならばいつか自分が、黒いうさぎを助けられるくらいになるんだと、がんばって生きていました。


 白いうさぎは、白いうさぎなりにがんばっていたのですが。

 黒いうさぎはそれでは満足できなくて、もっと、もっとと、より一層激しく白いうさぎをぶつようになっていきました。


 きっと、過去によほどつらいことがあったのだろうと。

 聞いてみても、黒いうさぎは何も教えてくれません。

 白いうさぎを毎日、ぶって、ぶって、ぶつばかりでした。


 しかし、そんな日々にも終わりが来ました。

 黒いうさぎは、その苦しみから、ついには動くこともできなくなってしまったのです。


 白いうさぎは、それがとても嫌でした。

 いくらぶたれたっていいから、生きていてほしい。

 そんなことばかり思って、生きてきたものですから。


 白いうさぎは、動かなくなった黒いうさぎを、柔らかな綿を敷き詰めた箱の中に横たえました。


 あたたかくてやさしいもので箱の中を満たせば。

 つらいことを忘れて、少しでも眠れれば。


 いつかひょっこり起き上がって、また白いうさぎをぶちにくるかもしれません。

 そんな日を夢見て、白いうさぎはまた、がんばって生きていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ