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Dear my wolf  作者: 蜂矢ミツ
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目を逸らさない

 その後、灰色のオオカミと黒いうさぎのお友だちらの間でどんなやり取りがあったのかは、白いうさぎの知るところではありません。

 ただ、灰色のオオカミが、またもひどく憔悴していくのが分かって、ものすごく焦りました。


 一度、馬鹿な事をしたと思う。などと手紙に書いてみたら、少し落ち着きはしたものの。

 ほとんどは強がりでした。

 正直、白いうさぎにとしても、どうしたら止められたのか、そうせずに済んだのかは、未だに分かりません。


 灰色のオオカミは、色んなことを思い詰めているように感じました。

 大変傷ついている時に、側にいられなかったこと。

 助けるつもりが逆に助けられてばかりいるように感じていること。

 自分の心がとても弱いと思っていること。

 そしておそらくは、何かよくないことをしでかして、今のような状況になってしまっていること――。


 側に生まれなかった理由は、白いうさぎにもなんとなく分かっていました。

 青いうさぎの身に起きたことは――扱いが難しかったのです。

 関係者は大勢います。もしも、復讐の念に駆られてしまったら、果てがないのです。

 そして、そんな悲しいことになればますます、心の傷を深めることになりかねません。


 灰色のオオカミは、やさしくとも、狼ですから。

 怒りにかられる危険性を孕む獰猛なところも、生来持っているのです。


 心優しい樹も、黒いうさぎも、そのことを重々承知していたのでしょう。

 だから、傷ついていることを隠し通して、ごくごく普通に生きることを、白いうさぎに強要してきたのです。


 白いうさぎは、どうしたものかと悩みました。

 灰色のオオカミの心はたくさん傷がついていて、そのどれもが深いのです。

 一つ一つ癒していくのには、時間が必要になるでしょう。


 しかし、心だけをみて言葉をかけるのは、なかなか難しいものがあります。

 言葉は扱いを間違えると、逆に傷つけてしまいかねないものでもありますから。


 白いうさぎは、それらの傷に効くであろう言葉を、一生懸命考えて、慎重に選んで手紙にしたためました。


 自分を責めないでほしいこと。

 今の状況は必ずなんとかして、会いに行くこと。

 そして、大事なひとが苦しんでいる姿をみるのは、何よりもつらいから、目を逸らさずにずっと見つめていてくれたあなたは、けして弱くなんかない。それは、やさしさだと思うこと――。


 実際、白いうさぎは二週間あまり、何が起きてるか分からずに冷え込んでいる灰色のオオカミの心に触っていただけで、頭がおかしくなりそうだと思ったほどでした。

 灰色のオオカミは、贈り物が作られた年月から考えても、少なくともそれを10年以上続けてきたことになりますから。


 それらの言葉は、灰色のオオカミの心に響いたようでした。

 その時から、冷え込み張りつめていた灰色のオオカミの心は、やわらかくなり、ぬくもりを取り戻していきました。

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