隔たりの正体
何も掴めないまま、二週間程時間が過ぎた頃。
それは起こりました。
夜中に、背中がひどく冷えて、水が伝う感触がありました。
泣くほどの気持ちになると、そのような感触になるようです。
それとはまた別に、べたべたと触られるような感触もしました。
灰色のオオカミにとって、それが泣くほど嫌なことであり、じっとこらえるように耐え忍んでいる事は分かりました。
白いうさぎはひどく驚いて、なんでそんなことをする人がいるのかと、腹を立てて地団駄を踏みました。
その嫌なことをする相手を、蹴り飛ばしてやるつもりで。
すると、それは押さえられたのでしょうか。
その後は、同様の体感はありませんでした。
訳が分からないままに、日をまたいだ翌日の早朝。
また、同じような感触があったのです。
おそらく、前の夜とは別の人だと感じました。
一体、誰がどうしてそんな事をするのか?
その疑問には、黒いうさぎが答えてくれました。
その人たちは、灰色のオオカミを通して、わたしの心に触りたいのだ、と。
白いうさぎは目の前が真っ赤になるくらい怒って、今までそんなことをした事がある奴らを、全て踏みつぶしてやるくらいのつもりで地団駄を踏み、蹴り飛ばしてやりました。
すると、灰色のオオカミに集る者はいなくなったようで――その後は、同じような感触がすることはありませんでした。
それでも怒りは収まりません。
一体そんなことをしやがったのはどこの誰だと、白いうさぎが耳を澄ませていると。
ある人物が、股関節あたりを痛めたらしいと、報せがありました。
実際の肉体を蹴ったわけではありませんし、幻肢痛と似た類のもので、外傷はありません。
それでも痛みはあったのでしょう。
蹴り飛ばした人たちは一人や二人では済まないはずですが、その内の一人が判明したことで、隔たりの正体が、ぼんやりと分かってきました。
相手が分かれば、調べることも考えることも、ゆくゆくは対策を立てることも可能です。
白いうさぎは、その人物とその周囲を、常日頃観察するようになりました。