表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dear my wolf  作者: 蜂矢ミツ
18/37

ひめゆり

 大事な用事もありますが、せっかくなので、ちょびっと観光もしました。


 海や空の青さは眩いほどに美しく、植物も生き生きとしています。

 地元の人たちの歌や踊りも賑やかで、熱を感じさせる力強さがありました。


 鍾乳洞なんかもあって、海水でしょうが、そこの水がまたひどく魅惑的でした。

 とっぷり頭から浸かって、しばらくぷかぷか浮かんでいたら、ものすごく元気になれそうだなあ。

 白いうさぎは、そんな風に思いました。


 むせかえるような夏に、青く澄んだ海。

 この地は白いうさぎと、とても相性が良いようでした。


 そんな中で、白いうさぎは、ある塔にも行きました。

 悲しい出来事があった場所に建てられた、慰霊の塔です。

 白いうさぎは、花を供えて手を合わせながら、なんだか落ち着く場所だと思いました。


 その後、資料の展示を見ていった時。

 黒いうさぎが、ひとつの写真を指さして、言いました。


 これが、はじまり。


 それは、一人の生徒でした。

 故人の写真が多く掲示されている中では珍しく、学徒隊として亡くなった者ではありませんでした。


 白いうさぎが不思議に思っていたことが、ここでひとつ、明らかになりました。

 青いうさぎは一体何のために、此方に来たのか? 何故、何度もやり直しをしていたのか?


 物語にも書かれたことではありましたが、青いうさぎは決められた日数を生き延びないと、また赤ん坊に生まれ直さなければならないという契約をしていました。


 その日数は、元いたところでの1000日、時間の流れが違うので、此方でいうと10000日です。

 27年と数か月を越えて生き延びれば、もう生まれ直すことはありません。


 けれども、お友だちが、先生が、仲間が、みんなこんな風に亡くなってしまったから。


 この時代、何よりも、希望が必要だったことでしょう。

 それを持っていた青いうさぎは――ちゃんと、平和と呼べる日が来るまで、おいそれと帰るわけにはいかなくなったのです。


 これが、青いうさぎが経験した最初の挫折であったのだと、黒いうさぎがぽつりと呟きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ