いざ夏の地へ
心配しなくとも、読んでいることは分かっているのです。
灰色のオオカミからは、その内返事も来るだろうと思いなおし、白いうさぎは、大事な用事のために沖縄に向かいました。
すると、空港まで向かう電車の中や、沖縄へ向かう飛行機の中でも、白いうさぎのことを気にしている人たちが、随分いるではありませんか。
どうやらひつじのルーさんは、昨夜のお手紙をコピーして配りまくったようです。何かを見ながら、みんな嬉しそうにしているのが分かります。
白いうさぎは面識のない人たちでしたが、みんな、黒いうさぎの友だちであるようです。
どうやら作家さんが多いらしく、あの人は~の作者さんだよ、と黒いうさぎがこっそり教えてくれました。
しかし、こちらを見ているのは分かるのですが。
何故だか誰も、話しかけては来ないのです。
白いうさぎが話しかけるのもまずいのでしょうか。
なんとなくそんな気もして、一体どうしてそんなことになっているのだろう? と疑問に思いながらも、とりあえずは普通に過ごすことにしました。
それよりも、気になるのは灰色のオオカミのことです。
冷たい手が触れていると感じた時から、白いうさぎにはこれまでにない感覚が宿っていました。
他には聞いたことがないので表現が難しいですが、相手の気持ちを体感している、そんな感覚です。
自分のものとは違う体温が、常に身に在るのです。
一心同体、そんな言葉が適しているのかもしれません。
その温度は、服や布団などの布を介すと、よりよく分かります。
沖縄に来てからも、ずっと背中越しに、冷えてふるえているような感覚がありました。
灰色のオオカミは、どうしてそんなに落ち込んでいるのでしょう?
相変わらず、返事もありません。
会えるのだとしたら、こんな気持ちにはならないでしょう。
お友だちに励まされたからか、少しだけほんのり温度が戻ったようでもありましたが。
一体何があったのだろうかと、再び、白いうさぎは狼狽えるばかりでした。




