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Dear my wolf  作者: 蜂矢ミツ
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冷えた手

 白いうさぎは、うきうきしていました。

 過去の事を乗り越えて、物語を通してですが、大事な思い出に触ることができるようになりました。


 加えて、一か月と少し前にひつじのルーさんに託した手紙には、そこそこの個人情報が記してありました。

 調査が入っているようで、何やら写真を撮ったり、ばたばたと後を付いてきたりすり人たちがいました。


 そして黒いうさぎのお友だちが直に見に来てもいたようで、物陰からこちらを見ていたり、地下鉄にひょいっと乗り込んでこちらを気にしていたりする人たちもいました。


 だからきっとその内、灰色のオオカミさんだって、来てくれるんじゃない?

 そんな淡い期待があったのです。


 そんな風にうきうきしつつ仕事をしていた白いうさぎの首筋に、何やら冷たい感触がありました。

 白いうさぎは、誰が教えてくれたわけでもありませんが、これは灰色のオオカミの手だ、と感じました。


 灰色のオオカミは、白いうさぎの身体に触れることができるようなのです。

 思い返せばそれまでにも、別に何もないはずなのにかゆかったりビクッとなったりしたことが確かにありました。

 どうやら、白いうさぎが大事な思い出を取り戻したことで、その感触が強くなっているようです。


 しかし、その手は恐ろしいほど冷え切っていました。

 このまま死んでしまうのではないか? 

 そう、心配になってしまうほどに。


 白いうさぎの背中に抱きついて、何やらずっと泣いているようです。

 その涙は白いうさぎの冷や汗になって、冷たく背中を濡らしていきました。

 その上、がじがじと首もとを齧っているような感触まであります。少し痛いです。


 白いうさぎは、狼狽(うろた)えました。

 どうしてこんなに冷え切っているのだろう?

 そういえば――ひつじのルーさんに託した手紙は、随分他人行儀だものだったっけ。

 そうです。灰色のオオカミは、白いうさぎが何もかも忘れてしまっていると思っているのでした。


 これは大変、一刻も早く、ひつじのルーさんに次の手紙を託さねばなりません。

 白いうさぎが大事な思い出を取り戻したことを伝えれば、きっと元気になってくれる、そう信じて家路を急ぎました。

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