青い目
白いうさぎは過去の贈り物を、ひとつひとつ備に調べていきました。
すると突然、黒いうさぎが怒って泣き出すではありませんか。
干からびた小箱を指さして、泣きながら言うのです。
これには、わたしがずっと隠してきたことが、彫られている。
誰にも言ったことはなかったのに! と。
なるほど、白いうさぎにもその悔しい気持ちは理解できました。
でも、同時に思ったのです。
もういいのではないかと。
ひた隠しにしなくても、明らかにしてしまっても。
そうして今度は黒いうさぎにペンを持たせて、白いうさぎが手を添えて、その悔しかったこと、苦しかったこと、ずっと引きずってきた気持ちを全て、物語に綴りました。
痛い、つらい、苦しい、もう嫌だ、帰りたい――もう死んでしまいたいとまでずっと思わせてきた、それらの気持ちを、全て。
もう乗り越えたことだと思っていましたが、書き終えた後、涙が止まらなくなりました。
ようやく涙が途切れた後。
不思議と、視界が澄み渡ったような感覚がありました。
鏡に映る目は黒いですが、白いうさぎと黒いうさぎの目は本当は、青いのです。
物語にも書いてあったように、青いうさぎは生まれつき、あらゆる事物の本質を見抜くことができる目を持っていましたから。
白いうさぎは、これまでわたしの目は随分と曇っていたのだなあ、とぼんやり思いました。
それを機に、あらゆるものが、前よりもずっとよくみえるようになりました。