レモン
あるところに。
白いうさぎと、黒いうさぎがいました。
二匹は、付かず離れず、大体いつも一緒にいます。
黒いうさぎはよく、白いうさぎをぶったり追いかけまわしたりしていじめるので、あまり仲良くはありません。白いうさぎにはその理由がとんと分かりませんでしたが、なんとかかんとかやってきました。
ある日のこと。
おおきなかごが、二匹のもとに届きました。
中にはつやつやぴかぴかのレモンがたっぷり入っています。
いったい、どこの誰からの贈り物でしょうか?
白いうさぎが、ふんふん鼻を鳴らして匂いをかぎますと、なんだか懐かしい気がする匂いがしましたが、誰のものは分かりません。
しかし、黒いうさぎは匂いを少しかいだだけで、それが誰からの贈り物なのかが分かったようです。
何も言わずに、ただただ涙を流しています。
白いうさぎはとても気になりましたが、黒いうさぎは何も物が言えないので、それが誰からの贈り物なのか、教えてもらうことはできません。
いくら考えても、分からないものは分からないので、とりあえずはこのおいしそうなレモンを食べてしまおう!
そんな風に思ったらすぐ行動、白いうさぎは手際よくレモンを絞ったりスライスしたりして、あっという間においしいレモンパイとはちみつレモンを作ってしまいました。
黒いうさぎは、それらを食べている間もずっと涙を流していました。
白いうさぎもなんだか釣られてしまったもので、わんわん泣きながら食べました。
二匹がそれらをおいしくペロリと平らげたころ、ふしぎなことが起きました。
白いうさぎも黒いうさぎも、長いこと心臓がとても痛む病気を患っていましたが、なんとそれが、すっかり治ってしまったのです!
どうしてこんな奇跡みたいなことが起きたのでしょう?
そうしてしばらく考えて、三か月ほど過ぎた頃。
その謎を解くべく、白いうさぎは、ペンを執りました。
どうしても、お礼が言いたかったのと――尋ねてみたかったからです。
こんなすてきな贈り物をくれた、あなたはだあれ? と。