侵略者たち
突然襲撃してきた怪物たちによって、人類は大打撃を受けた。
奴らの数といったら地平線まで埋め尽くすほどで、人類の必死の抵抗もむなしく
大陸の端や山の上、怪物たちが入ってこれない洞窟のなかに追い込まれた。
洞窟に逃げ込んだとある一団はまだ抵抗を続けていたが、不足する物資…特に水と食料が枯渇し、いよいよもって全滅かというところまで追い詰められていた。
洞窟の入り口から外をながめる男が、隣に立つ女に話しかけた。
「俺たち、生き残れるのかな」
弱気な発言に、女は立ち上がって答えた。
「諦めなければ、きっと助かるわ。弱気になっちゃだめよ」
「俺の故郷にはさ、うまいピザを出す店があるんだ。生き残ったら招待しよう。ご馳走するよ」
「あら、ありがと。じゃあ絶対に生き残らないとね」
突然、洞窟の中を切り裂くような絶叫がこだました。
絶叫は男の声だが、二人はこの声に聞き覚えがあった。
「まさか…」
「ええ、たぶん」
「「タカハシだ!!」」
二人が駆けつけると、タカハシはナイフ片手に暴れまわっている。男はタカハシに配られた残り少ない食料を、怪我人らに配っていたのを知っていた。
その結果、極度の飢餓によって発狂してしまったのである。
タカハシは目線を向けた。その方向にはもう自力で動くことすら出来ない避難民がたくさんいる!だが男が止めるより速くタカハシは走り出した。
皆はこれから始まるであろう惨劇に恐怖した。
しかしタカハシは避難民の前を素通りし、さらに奥にある昨日仕留めたばかりの怪物の死骸にとびついた。
「お、おい!タカハシ!いくら腹が減ったからって、それはまずい!」
「うるさい!!もう俺は我慢できないんだ!!」
「毒があるかもしれないだろう!」
タカハシはナイフで怪物の柔らかそうな所を切り裂く。流れ出る緑色の液体など気にもとめず、くりぬいた肉のかたまりをもって叫ぶ。
「構うもんか!どうせ死ぬなら、腹一杯くって死ぬんだ!」
タカハシは肉にかぶりついた。二回、三回と咀嚼し飲み込む。何度か繰り返すと、突然息が詰まったように苦しみだした。
「やっぱり、毒があったんだ!タカハシ、手遅れになる前に吐け!」
タカハシはさしのべられた男の手を振り払い、今度は無線機に向かって走り出す。
口の中のものを飲み込んで電源を入れ、全ての周波数に聞こえるように設定してマイクに向かって叫んだ。
「聞こえるか、日本人!いいか、よく聞け!この怪物を食べてみろ!鰻の味がするぞ!!」
そこからの人類の反撃は凄まじかった。怪物たちを食ってくって食いまくり、十数年あまりでこの星から怪物を絶滅させてしまったのだ。
こうして人類は、故郷から遠く離れたこの『HD33512-b』惑星をてにいれたのである。
資源が豊富なこの惑星は、今後様々な作戦の重要な拠点となるだろう。
「地球統合軍-宇宙艦隊」の進撃は、始まったばかりだ。