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館と主


「うむ。ひとまず上手くいったな。」


レティはニンマリと満足げに椅子に座り、足をパタパタさせている。


今、俺たちはオーレリア家と言う貴族の客間にいる。


玄関に入ると、沢山の鎧と槍が並んでいたり、勲章が飾られていたりと、何やら物々しい雰囲気の屋敷だ。


ここまで来た経緯をざっくり説明すると、衛兵がサレティアという貴族の娘が帰ってきたとの報告をした際。どういうわけかあっさりと信じられ、迎えの馬車に揺られてここまで来た。


という感じだ。


一体レティの魔法の効果はどこまでが範囲なのだろうと考えていると、正面の扉が開いた。


扉から現れたのはとてもガタイの良い壮年の男性。右目に傷があり、眼帯をしている。


体格も合わせて、戦働きを糧にしている人の様な気がした。


「ようこそいらっしゃいました。」


壮年の男性は深々とお辞儀をした。


しっかりとした身なりを見るに、一介の使用人には見えない。おそらく館の主人だろう。


「御託はいい。

どうしてわりゃわ達を館に招いた?」


レティはその男性を一瞥すると、端的に述べた。

足のパタパタはやめて、真剣な目つきだ。


「お、おい。レティ。

そんな言葉遣いでいいのか?


多分貴族の人だぞ!


すみません!」


俺はラダさんの話から貴族は総じてロクでもない者だと思い込んでいた為、レティに忠告し、頭を下げた。


しかし、貴族の男性はなぜかとてもへりくだった様子で


「いえ、私には敬語など不要。

是非とも自然体で話して下さい。」


そうこちらに伝えた。


「それにしても、幼い容姿の割にとても聡明なお方だ。

恐らく名のある魔族の方だとお見受け致しますがいかがでしょうか?」


「ふむ。やはりわかるか。

お主。一度悪魔と契約しておるな。」


足を組みながらレティは言う。


「はい。

その通りでございます。」


そう彼は頷くと、紳士の雰囲気がガラリと変わった。


黒い霧に包まれると、貴族の男性の身体が異形に変化する。


清潔感のあった彼の姿は、上半身が毛深い筋骨隆々猪の様な姿に変わってしまった。


「え?えぇえええ!?

あなた人間じゃないのか!?」


二足歩行の猪は胸の前に右手を胸の前に添えると丁寧にお辞儀をした。


自虐に満ちた笑みを浮かべ、彼は言う。


「はい。今の私は地よりも堕ちた醜い魔物。名をダリアス・オーレリアと申します。」



ダリアスさんの変化には驚いたものの、ひとまず互いに自己紹介をした俺たちは、レティが食事の催促をした事で大広間で豪勢な食事を食べながら話をしていた。


「もぐもぐ…。ふむ。おおよそ予測はついたぞ。

お主。さては娘を王に攫われたな。」


レティの言葉に人間の姿に戻ったダリアスさんは驚いた様な表情を見せた。


「さすがはレティ様。

やはり貴女は聡明だ。

すぐに察していただけるとは。」


「どうしてわかったんだ?」


レティに尋ねる。


「何、簡単な事よ。

まず、この男は風態ふうていと屋敷に飾ってあった数々の勲章から見て、前王の騎士であったことに間違いない。それも、かなり上級の騎士であったはずだ。


その様な屈強な者を従わせるのに暴力ではなかなか難しい。つまり、強力な枷が必要になるのじゃ。」


「その枷がサレティアさんって訳か…。」


「そうなるの。

そして、ラドベルク王の実験台になり、悪魔と契約させられたと言うところか。」


「まさしくその通りでございます。

娘の命には変えられませんので。」


「それで、娘さんは今どうなっているのですか?」


多分城に捕まっているのだろうと、想像しながら言ったところ、驚きの返事が帰って来た。


「はい。私が契約を済ませた時、娘は既に魔物に変貌していました。」


ダリアスさんは表情を変えず返答した。


「へ?」


「じゃろうな。話を聞く限りラドベルク王はとても約束を果たすとは思えぬ。」


「なんて奴だ…。」


「ラドベルクを信じた私が悪かったのです。

まさか娘まで異形の姿に変えられてしまうなんて…。


しかし、異形の姿になってしまっても娘はまだ生きているのです。早く助けに行かなくては…。


一月前より様々準備を終え、今宵。私は王を討つつもりです。たとえ刺し違えたとしても。」


その時、再び脳裏に光景が浮かぶ。


獣人の姿のまま槍を構えるダリアスさんに、次々と野球ボール大の穴が開いていく姿が…。


「おい!ハルト。どうしたのじゃ!

まさか、また視えたのか!?」


「う…、あ、ああ。

視えた。どうやらダリアスさんも助ける必要がありそうだ。」


「まぁ、もとよりそのつもりじゃったが、仕方あるまい。


館の主ダリアスよ。

わりゃわ達も王を討つつもりじゃ。

その為にお主も力を貸せ。」


「はっ。仰せのままに。」


ダリアスさんは王に膝まづく様な体勢でレティに言った。



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