禁断の扉
そして、現在に至るわけだ。
俺は首から下を失ったが、呪法の作用で生きており、魔王様のアドバイスで自分の身体をイメージすると、ニョキニョキと樹木が伸びるように俺の体はあっさりと再生してしまった。
我ながらキモい。ふつうにキモい。
魔王様はその様子を「うへぇ」とでも良いそうな表情で見ていた。
首から下を失っていた俺は当然全裸なので、平原に落ちていた遺品から手頃なサイズの皮鎧を拝借し、鞘に入ったまま落ちていたナイフを腰に刺した。
俺用に作られているわけではないので、少しぶかぶかだが、全裸よりはマシだ。
魔王様にも、なるべく綺麗な布製の服を見つけて渡してあげた。
かなりサイズが大きいので、ただのTシャツがワンピースのようになっていた。腰のあたりを紐で締めて一息つくと、魔王様は話し出した。
「してやられたわ。あの小童め!
まさかハルトが女神の落とし子だったとは。」
「女神の落とし子…ですか?」
「ハルト、お主は転生者じゃったのか。どおりであんな妙なところにいたわけじゃ。」
どうやら俺以外にも転生してきた人間が居るらしい。魔王様の口ぶりからそんな雰囲気を察した。
「ところで魔王様。」
「今は魔王と呼ぶでない。こんな姿でわりゃわが魔王だと割れてしまったら狙われるのは目に見えている。
わりゃわのことは…。そうだな。レティとでも呼ぶが良い。それと、敬語もやめろ。言ったであろう?わりゃわは対等な関係を望むと。」
「わかったよ。レティ。」
「うむ。それで良い。
取り敢えずわりゃわは疲れた。
寝床を用意せよ。」
あれ?俺の知ってる対等と違う?
そう思ったが取り敢えず聞かずに話を進める。
「え?寝床?
こんな平原で?」
周りは相変わらず平原で見渡す限り街も見えない。
「当たり前であろう。わりゃわは王であるぞ。
地べたで野宿なぞ出来るか。」
「いやいや、それは流石に無理だろ。
俺たち今ほとんど一文無しだし、服も金も無いのにどうしろと。」
「お主がわりゃわの寝床になればよかろう。」
へ?何言ってんのこの子。
「幸か不幸かわりゃわの体はこの通り、とてもキュートなサイズになっておる。
だからお主をベッドがわりに使ってやると言っておるのだ。」
…俺自身がベッドになる事だ…。
なんだそりゃ?
「具体的にはどうすればいいの?」
「そうさな…。ってお主は乙女になんて事を言わせようとしておるのじゃ!このケダモノ!」
レティはなんだかものすごく恥ずかしそうに言った。
「え?え?今の俺が悪いの?」
「察せよ。わりゃわのして欲しいことを言わずとも行うものが優秀な恋人と言うものよ。」
レティは少し頬を赤らめて言う。
「こ、恋人…。」
そう言えばそんな契約だったな。
「ん?お主もしや※生息子か?」
※童貞のこと
「ど、童貞じゃねぇし。」
「そ、そうなのか。少し残念じゃな。わりゃわはこう見えて※生娘じゃ。色々とリードしてくれよ?」
※処女のこと
幼い体なのに異様に色っぽいレティ。
服がダボダボなのでチラリと見える肌がこちらを誘惑してくる。
これをリードしろと?
うん。
無理。
「すみません。童貞でした。」
「うむ。うむ。そうか。正直者は得をするぞ。それなら、お互い助け合おうでは無いか。」
レティは嬉しそうに言った。
あれ?俺確かお姉さん系が好きだったよな…。
なんで完全幼児体型のレティにドキドキしてるんだ…。
まさか俺。
目覚めちまったのか?
でも、この魔王様の見た目、多分小学生くらいだぞ…。
ま、まさかな…。
後、レティが言っていたベッドになれ発言は腕まくらをして欲しかっただけらしい。
手頃な場所に布をひいてスペースを作るとレティが俺の懐に潜り込んできた。
「うむ。これじゃ。お主わかっておるの!」
と、ご満悦な表情。
少し腕が痺れるが、我慢してやるか。
まだ真昼間だというのに平原のど真ん中で2人で眠ることにした。
…もちろん手は出してしない。
相手は子供だし。
俺はまだノーマルなはずだ。
少しずつ禁断の扉が開き始めていることに俺は気がついていなかった。