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古の城楼の上に高く、英雄の気高き霊は立つ。

「ありがたいお話ですが、お断りします」

 神使の巨大な漆黒の顔を真っ直ぐに見上げながら、ゲオルグはハッキリと転生の申し出を断った。

「ほう。それは何故だ?」

 その答えは予定調和だったのか、神使は大して驚いた風でもなく、ゲオルグに問い返す。

「確かに、私の人生は最低でした。忘れたい過去ばっかりです、思い出したくない痛みが身体中に刻まれている。俺のせいで不幸にした人間の数は数えきれない。母さんにもっと頭を撫でて欲しかったですし、アンセルムスとはもっと違った出合い方をして友達になりたかった。今度こそ、ベガの隣にずっといたいと思う。聖騎士は……まあ、なってもならなくてもいいや。何か商売をするのも楽しそうですし、田畑を耕すのも悪くない。私が戦うことで流れる涙が減るなら、傭兵団とかも楽しそうです。そうなると、エリーのガキに剣を教える約束は守れそうにないですけど」

「ならば、再び生きれば良い。貴様が望むなら、別の人間として産まれることも可能だ。王でも、乞食でもな。幸福を我の名の元に約束しよう。お前ならば、望む物は何でも手に入れることができるだろう」

「そう。それです。私の人生は望んだ物じゃあありませんでした、でも不思議と満足しているのです」

 黒い貌の問に、ゲオルグは晴れ晴れとした笑みを口元に作る。

「人生は最低だ。でも、人生の選択に立たされる度に、真剣に考えて、心折れるまで悩んで、妥協もなく全力を尽くし闘って来ました。後悔もあるけれど、やり直したい過去なんて一つもないのです。いつでも、俺は、ゲオルグは全身全霊だった」

「そうか。ならば、貴様の魂は輪廻に放りこまれ、ゲオルグと言う存在と力は完全に消失する。二度と、貴様と言う個は世に出ることはなくなる。死よりも完全なる消去が待っているが、構わないな?」

「ああ。俺は本物を生きた。本物は一つで十分だ」

 お楽しみ頂けたでしょうか?

 最後の台詞の為だけの小説でした。

 

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