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「あの、そのハナハナビ、バノンは実在するんですか」

 そんな大きな鳥がいるならテレビで見たこと位あるよね。

 この国の伝説の鳥とか? 龍とかみたいに。

「ハナハナビバだ。もちろん実在する鳥だ。日本にはいないのか?」

「いるんですか。え、本当に?」

 聞いたことない。

 そんなに大きな鳥、ダチョウとかより遥かに大きいんだよね?

「数は多くないがな。羽と骨が魔法具の材料になるせいで昔乱獲されたんだ」

「まほーぐってなんですか」

 知らない言葉だ。

 あたしの知らない言葉なのかな、まほうぐって聞こえたけどまほうは魔法なのかしら。

「魔法具を知らないのか、そう言えば万里には魔力がないな。日本には魔力を持つものはいないのか」

 魔力って、魔法のことだよね。さっきもそんな事言ってた。

 そんなものあるわけないじゃない。

「王子様は魔力あるんですか」

 あたしに聞くってことは王子は魔力があるってことなのかな。

「勿論。この国の人間なら誰でも使う事ができる。魔力の大きさは個人差があるがな」

 当然という顔で、王子は衝撃的な事実を告げた。

 勿論て、誰でも使えるって、そんな事。

「日本では、ううん地球では魔法使える人なんていないと思います」

 少なくとも一般的には使える人なんか認知されてない。

「ちきゅ。それは」

 日本はすぐに言えたのに、なんで地球は片言なんだろう。って、そうじゃなくて。

「地球も分かりませんか。ここは地球じゃないんですね」

 さっき、落ちてきたと言われた時気付くべきだった。

 ううん。認めたくなくて、あたしはきっと無意識に無視してた。現実を知りたくなくて。

「ここは地球じゃない。あたしは違う国に来たんじゃなく、違う世界に来ちゃったんですか?」

 嘘だと言って。

 祈るような気持ちで、あたしは王子の返事を待った。

「気がついてなかったんだな。そうだ多分おまえは違う世界の人間だ。きっと」

「そんな」

 どうやって来たのか分からない。

 違う世界、異世界ってことだよね。

 なんであたし、ここに来ちゃったの。

 どうして、ここに来なきゃいけなかったの?

「泣くな」

「王子様、あたしはなんで? もう帰れないの?」

「分からない、お前は突然落ちてきた。それしか分からない」

 困った顔してても王子は美形だ。

「王子様でも分からないんですね」

 さっきは我慢できたのに、涙がぽろっと零れ落ちた。

 王子は落ち着いてるから何か知ってるのかと、思ったのに。

「万里、これを見つけた時のことを教えてくれ」

「ブレスレットですか? どうして?」

 今必要な事なの? 首を傾げて王子を見る。

「それは。いや、ちょっとまて、万里隠れて」

「え」

 王子がまたあたしに毛布を掛けるから、慌ててベッドに伏せた。

 誰か来たのかな、誰だろ。

 さっき誰かを呼んでたんだっけ。

「失礼致します。大神官様をお連れしました」

「入れ」

 ノックの後、ドア越しに聞こえる声にあたしはびくりと体を震わせた。

 王子は良い人な感じがするけど、他の人もそうだとは限らない。

 それに、王子なんて身分の高い人の部屋に突然現れた異世界人なんて怪しすぎるもん。

 王子がなんで平然としてるのか分からないけど、あたしもしかして今、捕まったって文句言える立場にいないんじゃないの?

「王子様」

 もしかして、あたしを捕まえるの?

 そっと王子を呼ぶと「静かに」と小声で言いながら、あたしの頭を撫でてくれた。

「大神官、夜分にすまないな。お前は、下がっていい」

「はい、失礼致します」

 王子がベッドから出ていく。

 どうしよう。大神官ってなにする人なの。

「アンディ様、この気配は」

 優しそうな声が聞こえる。

 気配。あたしのことかな。隠れてても分かるのかな。

「あなたが呼んだのではないと言うことか」

「私がですか」

「ああ、異世界からの客人だ」

 異世界からの客人。

 もしかしなくてもあたしのことだよね。

「異世界。確かにこの気配は」

「あなたなら分かるだろう。万里もう隠れていなくていいぞ」

 声を掛けられて毛布から顔を出す。

「黒い髪。そうですか」

「あの、あたし。あれ」

 左手に違和感を感じて声を出した。

 熱い?

 気のせいかな、ブレスレットが熱を持ってる気がする。

「万里」

「王子様、ブレスレットが。あ、嘘」

 王子に見てもらおうと、左手を毛布から出すと違和感の正体に気がついた。

 何がおこったの?

「王子様、これ、なに?」

 どうしよう。ブレスレットが、光ってる。

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