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「でもオレンジーニの花は咲くんだ」

「ええ、あの花は一年中花も葉も落ちません。だから永遠なんです」

 雪景色の中で咲く白い花は綺麗だろうけど。でも、なんだかやっぱり寂しい気がするな。

 あんなにいい匂いで綺麗な花が咲くのに、実がならないなんて。

「雪かあ。あたしの国でも凄く雪が降る地域があるよ。このあたりはどのくらい雪が降るのかな。あたしの背丈は越えちゃうかな」

 寒い時の定番。炬燵もここには無いし暖房って暖炉だけなのかな。寒そうだなあ。

「そこまでは降りませんわ。降ってもそうですね腰くらいまででしょうか」

「それでも結構降るんだね。そうすると冬は作物が採れないのか。食料の確保が大変だね」

「ええ。寒くなる前に越冬の準備をするんですよ。野菜を加工したり。魚を加工したり」

「それは干したりするって事?」

 ハウスとか無いだろうから、仕方ないのかな。

 缶詰とか瓶詰とかもないだろうし、どうやって保存するんだろう。

 雪ってどれくらい降るのかな、いつもいつも雪が降ってるのかな。それともたまに大雪になる程度なのかな。

 あたし何も知らないんだなこの国の事。

 一年しか居ないから知らない方が良いと必要最低限の事しか聞かない様にしてきたし、人にも関わらない様にしてきたけど。本当にそれでいいのかな。

 旅行気分で一年を過ごそうと軽い気持ちで考えていたけど、今のあたしがしてるのは旅行じゃなくて生活だ。

 思っていたよりも一年は長い。

「干すのですか? いいえ。野菜を干す事はしません」

「そうなの? 野菜も果物も干さないの? 魚も?」

 あれって昔からある保存方法じゃなかったっけ。

「加工して魔法庫に保管するのです。魔法石を沢山消費するので収入が少ない者は大変な負担となります。日持ちがする野菜や果物は南の方から取り寄せる事もありますが」

「そうなんだ。魔法で保存が出来るから干したりする他の加工法が発達してないのかな」

 切干大根とか美味しいんだけどなあ。干し柿も結構好きだった。

 塩漬けとか、砂糖漬けとかするだけでも日持ちするものが出来ると思うけどそういうのもないんだろうか。

 ハムとかチーズはあるから塩漬けと発酵食品の概念はある筈だよね。

 あ、でもベーコンは食べたことないかも。とすると燻製の技術はないのかな。

「干したらカラカラになって固くなりますよね。それはどのように調理するのでしょう」

「水で戻すんだよ。果物はそのまま食べたりもするし、干しブドウとかはお酒につけたりもするかな。あたしが子供の時お母さんが元気だったころ良く干し柿を作ってくれたの。美味しいんだよ。あ、今日お菓子を作る時に料理長に聞いてみようかな」

 この世界に渋柿はあるのかなあ。

 結構地球と同じ様な食べ物があるんだけど、あたしの行動範囲がお城の中の一部の場所だけだから。調べようがない。

「そうですか」

「もう亡くなっちゃったんだけどね、あたしが小さい頃」

 お母さんはあたしが小さい頃に亡くなった。

 体が弱くて、寒くなるとすぐに熱を出して寝込んでた。

 お母さんが寝込むとそれだけで不安になって寂しくて、あたしは理由もなくお母さんの傍に居たがった。

一人っ子だったせいか甘えん坊だったと思う。

「そうでしたか」

 話をしながらマリアさんは器用にあたしの髪を纏め、ピンク色のリボンをつける。

 あたしの髪は真っ黒だから、淡い色のリボンとかあまり似合わない気がするんだけど、マリアさんが選ぶのはいつも優しい色合いのものだ。

 なんとなく子供向けな髪型なんじゃないのかなあと思うんだけど、子供は髪をアップにする事は殆どないから、若いお嬢様向けにしてくれたんだろうか。

「ありがと、マリアさん。これなら髪を気にしないでお菓子作りが出来るね」

 そういえばマリアさんと年の話をしたことが無かったなあ。

 あたしの事幾つ位だと思ってるんだろう。

「その前に神殿でお勉強とお務めがあります。大神官様がお待ちですわ」

「お勉強。今日は歴史だっけ」

 グロリオーサの言葉を習うついでにこの国の習慣や礼儀作法やダンスなんかを習っていたのだけど、いつのまにか授業に歴史と地理が加わっていた。

 あと半年しかいないない、向こうの世界に帰ったら二度とこちらには戻ってこない人間が歴史とか習っても正直意味が無いと思うけど、この国の人達はあたしがずっとここに残ると思っているから仕方ない。


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