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こんな体型でも、こんな体型だからこそ可愛い洋服が着たい。その一心であたしは高校時代被服の授業を頑張った。

 高いブランドの服だって、頑張れば自分で似たものを作ることが出来るのだ。

 問屋街で安い布地を買って、せっせと洋服作りをした。

 おかげであたしの持っている服の殆どはあたしの手作りだ。

 苦手なショップ店員さんとおしゃべりしなくても、可愛い服が着られる。

 しかも安いし、サイズもぴったり。洋裁は大変だけどあたしの最大の趣味だった。

「だって、あたしみたいなのが派手なもの着ても似合わないってば。地味顔なんだから」

 アンディ様の顔は初めて時からお人形さんみたいに綺麗だと思ったけど、この国の人達もどちらか言うと濃い顔立ちをしている。

 身長も高くて体はがっしり。戦前の日本人と現代のアメリカ人の体を比べたらこの位の対比になるんじゃないかなと思う。

 身長160センチのあたしはここでは子供サイズだ。

「地味だなんて。万里様のお顔はとても可愛らしいと思います」

「可愛いなんて言葉はなんにでも使えちゃうの。子豚でも可愛い。あたしでも可愛い」

 サイズ的ならそりゃ可愛い部類だろう。

 赤ちゃんのふくふくした手足とか、子豚のまるまるした体型とか、微笑ましいし愛らしい。それと同じだ。

「子豚の可愛さと万里様の可愛らしさは別の物ですわ。……失礼いたします」

 マリアさんがドアをノックして返事を待って中に入るとアンディ様はもう席についていた。

「申し訳ありません。お待たせしました」

「気にするな。妹達だったらあと半刻は待たされるところだ。万里の用意はいつもながら早いな」

「アンディ様がお化粧しなくて良いと言って下さるおかげです」

 女の子としてどうだろうと思うけど、お化粧を始めたら三十分は軽く掛かってしまうしそれは流石に待たせすぎだ。

「万里の素顔を見慣れているからな。気にならないしそのままの方が良い」

「そう言っていただけると助かりますが」

 二人きりじゃないから少しだけ口調を変えて話す。

 この部屋にはマリアさんの他に食事を給仕してくれる人やアンディ様のお付きの人が居る。

 聖女という立場ではあるけれど、気安く話してはいけないのだ。

 すぐ油断しちゃうけど。

「毎朝お待たせしない様に、もう少し早起き出来る様に気を付けます」

 朝食を食べてすぐアンディ様はお仕事へ向かう。

 朝のこの時間位しかゆっくりできる時間が取れないんだから、せめてゆっくり食べる時間を取れるようにしたい。

「無理しなくていい。万里の寝顔を眺めるのは朝の楽しみだ」

「アンディ様、からかわないでください」

 アンディ様の言葉に、用意された朝食を食べる前から咽に詰まらせたような気持ちになる。

 間抜けな寝顔、確かにいつも見られてるけど。ああ、明日こそ早起きしよう。

「からかっているわけではない。本心だ。万里の寝顔は見ていて心が安らぐよ」

 本心だったら余計に性質が悪い。

 寝顔を眺めるのが楽しいなんて、いったいどこのバカップルだ。

 恋愛要素皆無な関係だと分かっていて、こういう事を言うのだから嫌になる。

 給仕しながら聞かされる人の立場になって欲しい。ついでにからかわれるあたしの立場にも。

 まあ、綺麗なテーブルマナーですました顔でサラダを食べていくアンディ様に羞恥という言葉は無いのかもしれないけれど。

「そういう事にしておきます。明日からは早起きしますけれど」

 この会話を続ける気力が無い。

 明日こそ早起きして、あたしがアンディ様の顔を眺めてやるんだから。

 そして額に肉って書いてやる。嘘だけど、そんな事出来るわけない。

「明日の朝を楽しみにしておくよ。その前に、今日のお茶が楽しみだけどね」

 ふふふと笑って、アンディ様はスープを口にする。

 夜は向こうの世界のフルコースの様に一品毎に給仕されるけど、朝はメニュー全部がテーブルに出されている。

 今日のメニューは全粒粉のパンにスープ、オムレツにサラダとフルーツだ。

 この世界の食事は向こうとあまり変わりが無い。

 呼び方はあたしの耳には翻訳された単語が入ってくるから、本当は微妙に違うのかもしれないけど。見た目はあたしが知ってるパンだし、オムレツだ。

「お菓子、何か希望の物はありますか」

 オムレツを食べながら頭の中で予定をたてる。

 タルタルソースっぽい味付けのソースを食べて、ケチャップが恋しくなる。


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