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 あれ、今なにか聞こえた?

 ええい、空耳なんてどうでもいいや兎に角頑張らなきゃ。

「王子様、お試しに一晩だけでも」

「絶対に駄目だ。イシュル神が万里を召喚した事は理解した。だから万里がこの国で不自由なく暮らせる様にする。不審人物扱いさせたりしないから、俺がなってやる事は出来ないがしっかりした後見人もつけるから、万里は安心してこの国で暮らしてくれればいい。俺は神の気持ちだけ受け取る。それで十分だ」

「そんなのどうでもいいです。いや、不審人物扱いは困るけど。働けっていうならどんなお仕事だってします。あたしは魔法は使えないから出来る事は限られてると思うけど、なんだってやります。だから、王子様の近くに置いて下さい。王子様の邪魔にはなりません。部屋の隅っこでいいですから。傍に居させてください」

「駄目だ。万里を危険な目に合わせるわけにはいかないと言っただろう」

「王子様。お願いですから」

「兎に角……。どうした」

ドアをノックする音が会話を中断させた。

「大神官様がお見えです」

「通せ」

「アンディ様突然申し訳ありません。おお、聖女様眼覚められたのですね。先ほど急にお倒れになったので、心配しておりました」

 ドアを開け足早に入ってきたホルガーさんは、あたしの顔を見るなりほっとした様に笑顔になった。

「すみません。心配かけてしまって。イシュル様に呼ばれたもので」

 呼ばれたで間違ってないよね? 自問自答だけど、多分間違ってないと思う。

「イシュル様! ではやはり」

「聖女様なんて立派なものではないですが、あたしを呼んだのはイシュル様だそうです」

「やはりそうでしたか。実は私達も先ほど神託を受けました」

 神託ってなんだろ。神様のお告げとかそういう事かな。

「どういう事だ大神官」

 王子が慌ててホルガーさんに詰め寄る。

「先ほど、祈りの巫女がイシュル様の神託を受けたのです。それで私が呼ばれました」

 祈りの巫女。なんかよく分からないけど凄そうだ。

「神託をお伝えいたします。私は今宵、王子のもとへ聖女を遣わせた。王子の闇は聖女と共にあることで消え失せる。聖女の導きはこの国に栄光をもたらせるだろう。とのお告げです。これは聖女様がアンディ様の呪いを解きこの国の憂いを払拭してくださるという事ではないでしょうか」

 ホルガーさんの言葉に、今度はあたしが慌ててしまう。

 ちょっと待て、神様。もの凄い大がかりな話になってきてない? 国の栄光ってなによそれ。

 これってもしかして、あたしがさっき神様にお願いしたせい? お願いしたからあたしのお仕事のハードルが上がっちゃったって事?

 いや、でも今がチャンスだ。ホルガーさんに王子を説得してもらうしかない。

「聖女様のお力でアンディ様の呪いを解く事は出来るのでしょうか」

 ホルガーさんは真剣な眼差しであたしを見つめている。

 ホルガーさんの目に映ってるあたしは、ちっぽけな女の子じゃなく、イシュル神の使いなんだ。

 宗教って、信仰ってあたしの中にはゼロだけど。

 ホルガーさんの中でイシュル神の大きさって凄いんだろうなってわかる。

「聖女様」

「呪いを解く方法はあります。あたしはその為にこの世界に送られました。さっきイシュル神さま直々に呪いを解除する為の方法を教えていただきました」

「万里!」

「慈しみ深いイシュル神様が、アンディ様を救うために」

 どんどん話が大げさになってる気がするけど。いいのかな。いいんだよね。

「眠る王子様の傍にあたしが居ることで呪いはあたしに移ります。そうして徐々に浄化するんです。一年という時間は掛かりますがアンディ様の呪いは浄化できます」

 胸張って堂々と。何もやましいことないから。

 あたし、神様の使いだから。

 とにかく今だけは、堂々と聖女様になりきろう。

「聖女様、どうかアンディ様をお救いください」

 ホルガーさんがかなり大げさに頭を下げ、そしてあたしの前に跪く。

「精一杯頑張ります」

 かなり無理やりだけど、こうしてあたしは王子様の添い寝役として傍にいる事を許されたのだった。


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