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「万里」

「はい……。うわあぁっ王子様っ。顔近いです。近すぎですっ」

 目を開けた途端王子様の顔が間近に見えて、あたしは悲鳴をあげた。

 美形に免疫が無いあたしには王子様の顔は刺激が強すぎる。

 無駄に上がった心拍数を深呼吸で整えて、あれ? と気が付いた。

 あたしは神様とお話ししていて、その時王子様達の時間は止まっていた筈、それなのに今王子様は動いていて、神様の姿は見えない。

 神様どこにいっちゃったんだろう。

「王子様、神様はどこに」

 冷静になって周囲を見渡すと、神様と一緒にホルガーさんの姿も消えている事に気が付いた。

 もしかしてあたし長い時間寝てたのかな。

「神様? イシュル神か」

「うん。イシュルと名乗っていました」

「イシュル神は何と? 差し障りがないなら教えてくれるか」

「ええと。あの、王子様にはあまり嬉しい話じゃないと思うんですが、あの」

 神様の話した内容を説明して王子に承諾してもらわなきゃいけない。それは分かってるんだけど、なんだか言いにくい。

 一緒に寝てくださいとか添い寝させてくださいとか、恋人でも夫婦でもないのに変すぎる。

「嬉しい話ではないとは」

 あたしの一言で、王子表情が険しくなる。

 どうしよう。ああ、なんて言えばいいんだろう。

「多分。あの、あたしを王子様の傍に一年間置いていただけないかと」

 だめだ、これじゃ違う意味になっちゃう。

 近くに居るだけじゃ駄目なのに、あたしが添い寝しなきゃいけないのに。

「万里はイシュル神の使いなのか」

「使いというか、使いっぱしりというか。あたしを呼んだのはイシュル様らしいです。昔勇者を召喚したみたいに、あたしを召喚したって言ってました」

「勇者を召喚したみたいに? 魔王が再び現れるという事か」

「いえ、そうではなく。あの、大変申し上げにくいんですが、王子様の呪いの浄化をする為です」

 あなたの為に召喚されました。なんて、なんだか凄く恩着せがましい気がする。

 もっと上手い言い方ないのかな。

「呪い。万里は呪いを浄化できるのか」

「完全に浄化できるまでには一年掛かるそうですが、出来ると神様が言ってました」

 期待されてもすぐには出来ない。しかも、浄化する方法が添い寝とか。なんだか嘘くさい。

「王子様の傍で、一年一緒に。あの、本当にすみません。あたしみたいなのが召喚されて王子様、きっと嫌だと思うんです。でも、あたし頑張りますから」

 とか言いながら、頑張りようがないとも言える事実にどうやって説得しようかと途方にくれる。

 どちらかと言えば頑張るのは王子の方だ。

 望んでもいないのに、見ず知らずの異世界の女と一年間一緒に寝なきゃいけないなんて、なんの拷問だろう。

 あたしは今までやってきた事をこの世界で王子相手にするだけだと割り切る事も出来るけど、王子はきっと違うだろう。

 優しい人だとは思うけど、プライドは高そうだ。

 こんな素敵な人が呪いを浄化する為とはいえ、好みでもなんでもない女を一年間の限定でも一緒に寝なきゃいけないなんて、屈辱的な事だと思う。

「万里に魔力はないだろう」

「はい。この世界の魔法は使えません。生活魔法も使えないって神様が言ってました。だけど、王子様と一緒に眠る事で王子様の呪いを少しずつあたしの体に移して……」

「駄目だ。そんな事。許可出来るわけないだろう」

「でも」

「でもじゃない。万里と一緒に眠る事なんか出来ない。出来るわけないだろっ! 冗談じゃない。神は何を考えているんだ」

 あたしの説明を遮って王子が拒絶する。

 嫌がれるとは思ってたけど、ここまではっきり拒絶されるとなんだか悲しくなってくる。

 ああ、どうしよう。説得できる自信が無くなってきた。


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