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東方現幻録  作者: カヤ
1章 紅の館と得た力~Fight time after time
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目指す地は。

「ホントに行くのかー?」



 ルーミアが心配しているようなしてなさそうな、よく分からない表情で問う。

 さっきから何度も繰り返し聞いているが、俺の出す答えは一つだ。



「ああ、勿論」



 ここに来た時から、いや現代にいる紫のもとから離れた時から既に答えは決まっていたのだ。



「幻想郷を元に戻すために俺がすることは変わらない。俺にしかできないことをやる。俺がやらなきゃ幻想郷は元には戻らないんだから」



 紫が寝たきりの状態になってまで守りたかった幻想郷。

 俺だって()がいる幻想郷に帰りたい。こんなバラバラで、皆に会うことができない幻想郷なんて嫌だ。

 帰る場所がなくなるなんて、俺は看過できない。



「…でも、あんなのが出るんだよ?」

「……」



 あんなの。

 それは、さっき出会った異形。

 今まで見たこともない、この世に存在していたのかすら不明な化け物。

 何もかも。そう、何もかもが分からない。



「私たちだってこれまであんなの見たこともない。なのに、何の力も持っていない圭吾が行くなんて、危険すぎる」

「それは、そうだけど」



 これほど真面目なルーミアは初めてだ。いつも「そーなのかー」とぽやぽやと、とぼけている姿からは想像もつかない。

 どうしてこんなにも親身になってくれるんだろうか?

 俺たちは人間と妖怪、いわば異種族同士なのに。その差異などまるで些末のことのように扱う。

 そりゃ、俺だってこいつらのことを友達として見てるし、妖怪という存在が身近にあったから人間と妖怪で区別なく接しているけど、それは俺の事情でこいつらの事情じゃない。

 ルーミアたちは妖怪としての生き様、矜持がある。それは人間の俺と同じなはずがないのに。

 ホント、どうしてなんだろう?



「なあ……どうしてお前は、人間の俺にこんなにも親身になってくれるんだ?」

「それ、今の話に関係ある?」

「あるさ、大いに」



 話の展開次第では、今後の対応が変わるかもしれない。それが意識せずとも、だ。

 ルーミアは一瞬考え、そして言う。



「友達だから。それだけだよ」

「……!」



 友達。

 ルーミアはそう言ってくれた。

 そして無意識に俺はチルノと大ちゃんの方を向き、二人は。



「あったりまえじゃん!」

「圭吾さんは私たちの友達です」



 そう言ってくれた。



「……はは」



 ……なんだ。変に悩んでいたのは俺だけか。三人は、俺のことをちゃんと友達って思ってくれてたんだな。

 誰かが言ってた気がする。友達とは作るものじゃなくて、なるものだって。

 俺はふぅと息を吐き、三人の顔を順番に見ていった。

 友達と見てくれるのはうれしい。けど、今回はそうも言っていられない。



「……ありがとう皆。でも、俺、やっぱり行かなきゃダメなんだ」

「…どうしても?」

「約束、したからね」



 必ず幻想郷を取り戻すって紫と約束して俺は旅をしている。

 そして紫も最後は笑って見送ってくれた。

 なら、俺は何が何でも約束を果たさなくちゃいけない。



「……まったく、強情だね圭吾は」

「そりゃどーも」



 それに嫌な予感がするのだ。

 この嫌な予感を知るために、拭い去るために。俺は紅魔館に行かなきゃならない。



「これと決めたらてこでも動かないのは相変わらずだよね」

「それが俺の専売特許だからな」



 ははは、と笑いあう。チルノと大ちゃんも一緒だ。

 これは、諦めるわけにはいかないからな。嫌だと言っても俺は行くつもりだ。

 はははとひとしきり笑った後、ルーミアは小さく溜め息を吐いた。



「分かったよ。行かなきゃいけないなら、止めないよ」

「お、そうか」

「ただし―――」



 小さい体をくるっと回転させ、人差し指をピンと立ててルーミアは言った。



「私も一緒に行くから。一人じゃ危険だし」

「え…?」



 当然でしょ、とばかりにルーミアは言う。

 いやいや、ついてくるって、いやいや。



「護衛だよ。あんなやつが現れたんだから、圭吾一人じゃ危険すぎるからね」

「でも、俺を守りながらいくのかよ? 誰かを守りながら戦うのって難しいって聞くぞ」



 悲しいかな、俺は戦う術を持たないただの一般人に過ぎない。弾幕ごっこなんていつも蚊帳の外で端っこから見ているしかなかった。

 色鮮やかな弾幕を放ち、笑いながら戦いを楽しんでいるやつを見ていて、俺も、と思ったことも一度や二度ではない。弾幕ごっこに俺は憧れていたのだ。

 だから、今回のあれもただ見ているだけに心では歯がゆく感じていた。

 同時に、何とかしたいという思いもあった。



「そりゃあね。けどそれで圭吾に死なれたりしたら後味悪いし」

「……」

「拒否権は無しね」


 本当のところ、遠慮したかった。俺を護衛したら自分の身がおろそかになってしまう。本来無関係なルーミアに危険に晒してしまうからだ。

 けど、ルーミアが言ったことも事実だ。俺には何の力もないのは間違いないし、友人が死地に赴くのにただ見送るだけじゃ嫌なのは理解できる。

 それに俺はただでさえ無理やり紅魔館に行くと言って承諾させてるんだ。俺に何かを言う権限など、無い。



「…分かった」



 ……ああ、自分の無力さにむかっ腹がたつ。

 どうして、何にもできないんだ。どうして、誰かの背中に隠れていることしかできないんだ。どうして……。

 

 力が欲しい。


 少なくとも、自分の身は自分で守れるくらいの力だけでも。



「アタイも行きたい!」

「私も……」

「いや、大ちゃんたちはここにいて。護衛が多すぎるとかえって目立っちゃうから、一人の方がいい」

「そう…? じゃあ、そうするよ」

「仕方ないわね!」



 俺は横目でルーミアたちを見た。いつの間に話がまとまったらしい。

 まあ、俺はもう準備はできてるからいつでもいいけどね。



「じゃあなチルノ、大ちゃん。気をつけてな」

「そっちこそ気をつけなさいよ!」

「また今度会いましょう! それまでどうかご無事で」



 俺はチルノと大ちゃんと握手を交わし、再会を約束した。

 また会える。確信はないけど、そう思えた。



「行こ、圭吾」

「おう」



 妖精たちは俺の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。俺とルーミアの姿が森の木々に消えるまでずっと。


 目指すは、紅魔館。


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