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新たな日常へ  作者: line
7/8

一夜明けて

Side;???


「んんっ」


目を覚ますと私の周りは真っ暗だった。

そういえば昨日大きいおじさんに無理やり眠らせられたあと、袋か何かに入れられたような…試しに体を動かしてみると未だに袋のようなものに入れられているみたいね。


それなら、


「切り裂け疾風!ウィンドカッター!!」


私は風の魔法で袋を切り裂き、外に出る。どうやらここは洞窟の中のようね。外からの光が入口の方から差し込んできている。とりあえず周囲の状況を確認すると、


真っ赤な血に染まった男たちが倒れていた。


「キ――」


叫んではいけないと頭では分かっているのだけど行き成り目の前に散乱した死体を見せつけられたら冷静にられるはずもなく、


「キャアアァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァアァァァァアァ!!!」















―――血。血。血。

少年の周りはそれで溢れている。それにまだ少年の持つ刃から滴るものと、逆の手には硝煙をユラユラと吐き出し続ける一丁の銃器。そんな中に立っている彼の顔には真っ赤な血が滴っているが、彼のものは一滴とない。ならば誰のものか。決まっている。


少年によって生を絶たれた何の罪もないただの一般人のものだ。


先生『だった』ものや、親『だった』もの。中でも多いのは子供『だった』ものだろう。ざっと三十はある。そのどれもが無惨な物体に成り下がっていた。だがもっとも酷いものは未だその中心に立ち尽くしている少年の顔だろう。瞳には何も映っておらず、頬や髪には返り血がべっとりと付いているが極めつけは口元。こんな状況の中でその口は嬉しそうに両端が持ち上がっていた。そこだけは年相応の少年のものだった。



―――それを俺は窓の外から眺めている。…またこの夢だ。いや、正しくは俺の記憶だ。

桜葉 悠里、八歳の出来事だ。





























Side:Yuri


「………」


薄らと目を開く。既に朝になっていたらしく入口の方から朝日が差し込みここまで明るく照らしてくる。思わず目を窄めて顔を手で覆い遮り、先の夢を思い出す。


「―――」


確かに『あれ』は俺の記憶で間違いない。初めて武器を手にし、初めて人を壊し、初めて生命を絶った時だ。今思えば『あれ』が俺の原点なんだろう。『あれ』がきっかけとなって毎日死にたくなるような修行をして、毎日『あれ』を思い出しては思考が追い付いてこない程の衝動に駆られて修行相手のジジィを殺しそうになるわで大変だった。まぁ、そのおかげで強くなったし、自分を律することもできるようになったんだが。…何故か見知らぬ土地に来た瞬間更に強くなってることには素直に驚いたがな。


「キャアアァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァアァァァァアァ!!!」


ビクッ!!

な、何だ何だ!?新手か?

ってよく考えたらこいつらおっさんばっかだしこんな若い女みたいな声…女?


音源に目を、むけると背中まで伸びた金髪の上にサイドから結い上げた三つ編みを後頭部でまとめている碧眼の女がいた。しかもよく見ると服の装飾が華美だ。真っ白いドレスをベースに作られたような風でそのまま舞踏会に出てもおかしくはないが、かなり動きやすそうな作りになっている。


「……あ」


あ、こっちみたから目があっちまった。さてこの状況をどうやって説明したもんか。


「…きゅう」


パタ。


…気絶しやがったこいつ


溜息をつき頭をかく。とにかくここに留まるのはよくなさそうだから表の馬車を使って近くの川にでも行こうかな。ついでにここにあるものは全部持っていこう。手ぶらの俺にとっては武器の貯蔵はいくらかあった方がいいしな。それに奥の財宝を売り払ってこれからの資金にしておくのも悪くないだろう。


「よし、行動開始」











バシャ!バシャ!


ようやく川にたどり着いた俺は馬車と馬を離して給水させる。俺もこっちの世界に来てから何も口にしていないことを腹の虫が鳴ったことで思い出し水を飲んだ後川魚を捕まえることにした。


俺は気配を消してゆっくりと魚の背後に忍び寄り、一気につかみあげる。

川魚にしては結構大きく食べ応えのありそうな奴だ。ついでにもう三匹捕まえて馬車の荷台にあった木のバケツの中にキープ。そして俺がもう一匹捕まえようと川に足を踏み入れた時だった。


「あ、あの~」


「んぁ?」


突然声をかけられたので振り返ってみるとさっき気絶した金髪だった。

少しオドオドしていることからひょっとして俺怖がられてる?


「先ほどは失礼しました!!」


「…は?」


いきなりバッって音が聞こえてきそうなほど勢いよく頭を下げられた。何で?


「私あの場にいた男の人たちの状況を見て気を失ってしまい、挙句の果てには態々あの場から救ってくださったあなたに無礼を働いてしまいました。誠に申し訳ござい居ません」


そういって更に頭を深く下げる金髪少女。…確かに一挙一動に品があるな。あいつらが言ってた貴族ってのも間違いないだろう。


「ああ、いいよ別に。気にしてないから」


「そ、そうですか。ありがとうございます。ところで」


「何だ?」


「あなたが私をここに連れてきてくれたことは承知しているのですが、あの者たちを討った方はどちら に?」


「…ここ」


「え?」


こいつ、もしかして天然って奴か?あいつらを倒した奴とここに連れてきた奴を別の人間と考えているみたいだ。だから俺は自分を指さす。


「それも俺がやった」


「えええええええ!」


いちいち驚き方が過剰なやつだな畜生。思わずびっくりするだろ。


「とりあえず落ち着け」


 軽くチョップをかます。


「あたっ。は、すいません!」


「とりあえず飯にしようか。腹減ってんじゃないんか?」


そういってもう一匹捕まえるのをやめて捕った魚を入れてあるバケツを手に取る。川に入る前に拾い集めた薪を一か所にまとめてあったところまで移動する。その後ろからトコトコと金髪が付いてくる。

…何か和む。


「んじゃ、火を起こすか」


板木と棒状の木を擦りあわせて摩擦で火を起こす。原始的かつ忍耐力が必要な方法の一つだが俺なら30分もあれば点火するだろう。…なのにこの女、俺が何をしているのか分からないのか小さく首を傾げている。


「…なんだ?」


「あの、火系統魔法を使わないのですか?」


「あ?魔法?」


「…もしかして魔法を知らないのですか?」


当たり前のようにこいつの口から飛び出したワードに耳を疑った。やはりここは俺の居た世界とは違い魔法が存在しているのか。まったく、ここの知識を持っていない俺からしたらこれから先身に着けておくべきことの一つだな。けど一旦冷静になれ。ここで「魔法って何?」とかいってみろ。多分めっちゃ怪しまれる。こいつの口ぶりだと魔法というものはここでの常識なのだろう。


「…実は俺、記憶が曖昧になっててさ。そこら辺のことが思い出せないんだよ」


とりあえず嘘を付いて情報を引き出そう。それにこう言っておいた方が後々楽だろうし。案の定こいつはやや驚いた顔を見せたが直ぐに謝ってきた。


「…すいません。無神経なこと言ってしまって」


「いいさ。忘れたって言ってもそういう知恵の部分とでも言えばいいのか?とりあえず自分のことはわかるんだ」


「そうですか。何だか変わってますね」


うっさい。そんな都合のいい記憶喪失なんかそうそう起きてたまるか。というかちょっとは疑えよ。罪悪感感じるだろぅ…


「かもな。それで魔法について教えてもらえるか?ついでに世間の様子とかも」


「わかりました。ではまず魔法についてお話しましょう」


――こうして俺は魔法の授業を受けることになりました。







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