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第3話:レイラ

どうしようか。


レイラは間違いなくもの凄く怒ってる。


けど。




考えてみたらボクは何か怒られることをしたのだろうか。


何でレイラに怒られないといけないんだ。


ボクはただサーシャに口づけされただけだ。


だから何も悪くないはずだ。


きっとそうだ。


レイラが理不尽なんだ。


ボクは何も悪くない。


「貴方,私に対して良い度胸をしてるわね…」


空気がさらに冷えた感じだ。


やっぱり怖い。


けど,ボクは屈したりしない。


ボクはアスタロトと向き合ったときのことを思い出す。


あのときに比べたら大丈夫だ。


けど,一応レイラに聞いた方がいいかもしれない。


ボクが気づかないで悪いことをしたかもしれないから。


「ふぅ…,まあ,良いわ。こっちに来なさい。貴方の顔を拭いて上げるわ…」


レイラは何か諦めたかのようなため息をした。


冷えた空気が戻ってくる。


何だか分からないけど,怒られなくて済みそうだ。


「サーシャから聞いたわ。確か目が見えないんだったわね。手を出しなさい。連れて行ってあげるわ…」


ボクは手を差し出し,レイラが握ってくる。


とても冷たい手だった。










ボクはレイラに手を引かれるまま歩いていく。


レイラは怒りっぽい感じだけど,どこか優しい雰囲気もあるような感じがする。


ボクの村で怒りながらも,仕方ないわねって感じに世話してくれたお姉さんみたいだった。


どこまで連れて行くつもりだろう。


それに段差がある場所を歩かされている。


これは階段だ。


しかも上に上がっていく階段。


顔を洗う場所は下の階にあるはずだ。


「ついてきなさい。私がもっと良い方法で顔を洗って上げるから…」


優しい感じの声だけど,なぜか怖い声。


何かだんだん寒くなってきた。


別に薄着しているわけじゃないのに。


「ここよ。来なさい,エテルナ」


ボクは手は引っ張られた。


誰かの部屋に入れられた感じだ。


「ここは私の部屋よ。そこに座りなさい」


ボクの手が引っ張られ,何かふわっとしたものに座らされた。


この感触は。


ベットだ。


「男で私のベットに腰掛けたのは貴方が初めてね…」


何でレイラはボクをベットに座らせたんだろう。


何かこの状態はさっきもあったような。


突然,ボクは胸をとんと何かで押されて,ベットに倒れてしまう。


ベットに倒れたボクは急いで起き上がろうとするけど,両手首を捕まれてしまって動けなくなった。


レイラがボクをベットに押し倒したんだ。


いきなり何をするんだ。


ボクは体を動かそうとしたけど,両手が手錠でがっちりしたかのように動かない。


多分,レイラの手がボクの両手首を握りしめて固定してるんだ。


「そう,貴方は普通の人間ではないわ。私には分かる。貴方の見えない目は清濁併せ持つ,綺麗ではないけど,力強い輝きを持った瞳。普通の年場のいかない子供がこんな瞳を持つはずがない…」


レイラの吐息がボクの首筋にかかってくる。


くすぐったい。


何かぶるぶるしてくる。


「綺麗な体ね。けど,私には誤魔化せない。貴方の綺麗な体には血の匂いがする。それも一人や二人ではない。数え切れないほどの人の血肉の匂いがするわ…」


首筋に何か生暖かいものが擦り付けられる。


レイラに舐められている。


気持ち悪いのに気持ちいい感じの訳が分からない感覚。


「そして,綺麗な肌なのに深みのある味。おかしいわね。まるで何年も使っているはずなのに朽ちること無く,変わらないような綺麗な肌…」


僕の首筋がぬるぬるしてくる。


サーシャに口をべたべたされた次はレイラに首筋をべたべたされている。


「私は地獄を治めるガーランド帝国の宰相にして大公爵。つまり,地獄で二番目の地位を持つ者よ。さあ,エテルナ。私に貴方の全てをさらけ出しなさい…」


ボクの首筋に何かが押しつけられる。


レイラの舌。


違う。


レイラの唇だ。


何かがちくって刺さってくる。




首筋から何かが吸い出されてる。




レイラの唇に体の熱が全て吸い出されていく感じがした。




熱かった体がゆっくり冷えていくような。




そんな感覚。




体が空を飛んでるみたいだ。




全てを委ねてしまいたいような気がしてしまう。




けれど,委ねようとしたら消えてしまう。




また全てを委ねたくなる感じがする。




けれど,消えてしまう。




何だかもどかしい感じ。




ボクの首筋からレイラの唇が離れる。


「馬鹿な!私の洗脳が通用しない!それに私の力がはね除けられてしまうなんて…」


レイラはなぜか慌てている感じだ。


それに洗脳って何だろう。


「もしかしたらサーシャはとんでもない者を連れてきたのかもしれないわね。それにしても何て美味な血なのかしら。なるほど,サーシャが執着する訳ね。確かに私も癖になりそうだわ…」


レイラはボクを抱き起こしてくる。


「まあ,今回はこれぐらいで許してあげる。けど,次の機会には貴方の血を時間をかけて存分に味わい尽くしてあげるわ。覚悟しておきなさい,エテルナ。貴方はもう私の者よ…」


ボクの首筋にまた唇が押し当てられる。


冷たくて柔らかい。


けど癖になりそうな。


そんな感覚。


「さあ,今夜はここで眠りなさい」


ボクの頭が何か柔らかいものに押し当てられる。


レイラの胸だ。


サーシャのゴムみたいな胸がもう少し柔らかくなったかのような感じだ。


ボクはレイラのベットで眠ることにした。








そういえば,ボクはレイラの部屋に何しに来たんだったかな。


けど。


もういいや。


寝よう。


おやすみ。




「お休みなさい,エテルナ…」

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