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第10話:新しい家族

ボクは目が覚めた。


いや,生き返ったと言うべきなんだろうか。


体を起こし,ボクは手を握って生きていることを確認した。


久しぶりによく寝た感じがする。


こんなにもぐっすりと寝れたのリーゼと一緒に寝て以来のことだった。


これがレイラの死と眠りの口づけの効果なんだろうか。


「おはよう,エテルナ」


考え事をしていたらレイラの朝の挨拶が耳に響いてきた。


ボクはレイラに挨拶を返す。


「ふふっ,よく眠れたみたいね。寝顔が可愛かったわよ。さあ,朝の口づけを受けなさい…」


ボクは首を逸らし,レイラに首筋を見せるようにする。


もうレイラに血を吸われるのに何も抵抗感は無かった。


「ふふっ,もう貴方は私に屈服してくれているようね…」


ボクはレイラに血を吸われてもいいと思ったけど,決して屈したわけじゃない。


レイラの勝ち誇った笑いについボクはムキになってしまうんだ。




「ふふっ,今はそれでいいわ。いずれ私無しではいられない体にしてあげるのだから…ちゅ」




ボクの首筋にレイラの冷たい唇がぴたっと押し当てられる。




「ちゅうちゅうちゅう」




レイラの唇からボクの体の熱が吸い取られていく。




眠気があったボクを目覚めさせるような冷たい口づけ。




もやもやした頭がすっきりしてくる。




癖になってしまいそうな心地よい喪失感。




「ちゅぱ…さて,起きましょうか…」




レイラの唇が離れ,ボクの首筋は相変わらず,血と唾でべたべたになっていた。


さすがに血で濡れていたら目立ってしまうので後で台所で洗い流さないといけない。


ボクはレイラの部屋から出て,台所に向か向かっていった。







ボクは台所で首を洗って歩いていたときに前方に空気を突っ切るような速さで突っ込んでくる何かを感じた。


多分,サーシャだ。


「おはよう!エテルナ!その様子だと,レイラ姉貴の愛を受け止めたみたいだな…」


そうだ。


レイラの件はサーシャに相談したから決心できたことだったんだ。


ボクはサーシャにお礼をした。


「いいってことよ!それよりも…くんくん…」


サーシャの吐息がボクの顔にかかり,何か匂いを嗅いでるかのように鼻息を荒くしていた。


「レイラ姉貴の匂いが濃くなってるぜ!しかも俺が付けた匂いが消されている!」


サーシャはなぜか怒った。


何が不満なんだろうか。


せっかくお礼を言ったのに。


ボクの両肩ががしっと掴まれて引き寄せられる。




「畜生!レイラ姉貴にエテルナを独り占めなんかにさせねえぜ!俺が最初に見つけたんだからな!お前は俺のもんだ!ちゅう!」




ボクの頬にサーシャの唇が強く吸い付き,引っこ抜くかのように離していった。




「エテルナ!ちゅぱ!お前は俺の者だ!ちゅう…ちゅぽっ!分かってんだろうな!ちゅ!お前を…ちゅ…最初に…ちゅぽっ…見つけたのは…ちゅう…俺なんだからな!ちゅ!ちゅぱ!ちゅるるっ!」




ボクの顔全体にサーシャは何度も唇を押しつけては離してきた。




サーシャの唇の吸い付きはとても強くて,ボクの顔にサーシャの唇の跡が出来てしまいそうな感じだ。




「ちゅば!ちゅば!ちゅば!ちゅば!ちゅば!」




サーシャの余りにも強い吸い付きに少し顔がひりひりしてきた。




サーシャはボクの顔を貪るぐらいの勢いで激しく口づけの雨を降らせてくる。




いったいどれぐらい口づけを受けたのだろうか。




サーシャはやっと満足したのか,口づけの嵐を止めてくれた。




「レイラ姉貴の匂いは俺が消してやるぜ!エテルナ,覚えときな,お前は俺の獲物だぜ…れろっ」




サーシャはとどめを刺すようにボクの顔を舐め回した。




ボクの顔はサーシャの唾でべとべとだった。


前もこんなことがあった気がする。


けど,まあいいか。


ボクは顔を拭いながら,リディアの部屋に行くことにした。


ボクはリディアのお世話係でお友達だ。


また,リディアにボクのハープを聞かせよう。


ボクはリディアの部屋に向かっていった。









「おはよう,エテルナ。君が来るのを…ずっと待っていた…」


リディアの声はとても綺麗だ。


ボクはリディアの声を聞くのが好きだった。


もし,リディアが歌ったらどんなに良いんだろうか想像してしまうんだ。


いつかリディアの歌が聞いてみたいと思った。


「ん?くんくん…」


リディアの吐息がボクの顔にかかり,鼻息を立てていた。


この仕草はさっき逢ったサーシャと同じものだった。


何だか嫌な予感がしてきた。


「サーシャの匂いがする。それに君の顔が汚れている…」


そういえば,ボクは顔を洗うのが面倒になってそのままにしていたんだ。


それに最近,別に顔がサーシャの唾でべとべとになっても構わないと思ってしまっている。


「何か気に入らない。だから…僕が君の顔を綺麗にしてあげる…」


ボクの体に冷たくてぬるぬるしたものが触れてくる。


リディアの体だ。


リディアはいつも素っ裸になっている。


レイラ曰く,リディアは服を着てもすぐに溶かしてしまうからこのままでいいらしい。




「エテルナ,僕の友達。君を綺麗にしてあげる…れろっ」




リディアがボクの顔を舐め回してきた。




ボクの顔をべたべたにしているサーシャの唾を拭き取るようにリディアの舌が這ってくる。




反対にリディアの唾でボクの顔がべたべたになってきた。




リディアの舌は冷たくて柔らかくてひりひりしてくる。




けど,一心不乱に舐めてくるリディアが可愛いように思えてくる。




まるで犬に懐かれた気分だった。




「れろぉ…ひみを…ぴちゃ…ぴちゃ…ひれいに……ちゅる…ぷちゅ…ふる…ちゅ」




だんだんと舐め回すのが激しくなってくる。




ボクの顔がぴりぴりしてきた。




大丈夫かな。




また暴走しなければいいんだけど。




「びちゃ…ここには…レイラの…匂いがする。君の首…僕が綺麗にする…ちゅる」




リディアはボクの顔から首筋に移って舐めてくる。




くすぐったい。




リディアの冷たい舌がボクの首筋に這っていき,思わず体がぶるっと震えた。




「ちゅぷ…ぴちゃ…ぴちゃちゅる…ひみは…ちゅぱ…あむぅ…あっはり…ぴちゃ…おいひい…ちゅ」




ボクの首筋がリディアの舌ですくい取られてるみたいだ。




リディアはボクを砂糖菓子みたい舐め尽くして食べている。




「ちゅぱ…ふぅ…ねえ,お願いがあるんだけど?」




リディアはボクの首を舐めるの止めて,何かおねだりしてきた。


ボクは嫌な予感がしたけど,頷いてしまう。


だって,リディアの綺麗な声でおねだりされたら断れないんだ。




「君の血を…吸ってもいい…かな?口だけで吸うから…お願い,エテルナ…」




リディアがボクの血を吸いたいって言ってきた。


本当は断りたいけど,レイラには良くて,リディアは駄目というのは不公平な気がする。


だから,ボクはリディアに良いよ,と言ったんだ。




「嬉しい…。ありがとう,エテルナ…ちゅ」




リディアの唇がボクの首筋に吸い付き,ちくちくしてくる。




リディアの唇全体がボクの熱を急激に奪い尽くしてきた。




「ちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅう」




体が冷たくなってきた。




反対にリディアの体が生暖かくなっている。




血の匂いも濃くなってくる。




「ちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるちゅる」




ボクの首筋に吸い付いているリディアの唇が少し大きくなった感じがする。




「ぢゅるぢゅるぢゅるぢゅるぢゅるぢゅる」




さっき起きたばかりなのにまた眠たくなってきた。




ひょっとしてボクはレイラに続いてリディアからも死と眠りの口づけを受けているんだろうか。




「ぢゅるるるぅ…ちゅぽっ!ふぅ……これぐらいにしておくね…。君の血…とっても美味しかった…」




ボクが寝る寸前ぐらいにリディアの唇が離れる。


助かったような残念なような複雑な気分だった。


ボクの鼻にリディアとボクの血が混じった匂いがしてくる。




「今度は暴走しないから…。また…君を…食べてみたいな…」




ボクの耳にリディアの綺麗な声が囁かれた。


綺麗な声なのに少し怖い声だとボクは一瞬思ってしまった。




「だから,次は君を…食べさせてね…ちゅう」




リディアの少し大きくなった唇がボクの唇に押しつけれた。




リディアに唇はボクの唇を覆うぐらいに大きくなっていて。




生暖かくて。




血の味がした。




「ちゅぱっ!じゃあね,エテルナ…」




リディアは唇を離し,湿った足音がボクから遠ざかっていく。


ボクは体の力が抜けて床に座り込んでしまった。


リディアの綺麗な声にはなぜか逆らえない。


やっぱりリディアが一番怖いかもしれないとボクは改めて思った。








「エテルナ,ここの暮らしにはもう慣れたかしら?」


レイラはボクに尋ねてくる。


死と眠りの口づけを受けて以来,レイラの態度が丸くなった感じがする。


それでもよく怒ることが多かったけど。


「遠慮することは無いわ。貴方は私達の弟も同然なのだから…」



弟。



ボクが。



レイラ達の。



弟。



「何驚いているの?私達はもうそのつもりだったけど,貴方は違ってたのかしら?」



レイラはからかうような声で言ったけど,ボクはそれどころじゃなかった。



ボクに弟ということはひょっとして家族ということなの。



ボクに新しい家族ができるの。



「私もサーシャもリディアも,みんな,貴方を愛してるわ。だったら,もう私達,家族でしょ?」



ボクの頭がレイラに引き寄せられる。



「私達は不死身ではない。けど,不老不死ではある。だから,貴方と同じ時間が過ごせるのよ。ずっと

ね…」



レイラはボクを優しく抱きしめてくれる。



何だか目が熱くなってくる。



「ふふっ,貴方の泣き顔を初めて見れたわね。私の胸で泣くといいわ。ここは貴方の居場所,楽園になるのよ…」




ボクはレイラの胸の中で泣きまくった。




そうか。




これがリーゼの言う。




素敵な出会いだったんだ。







「さあ,私の部屋にいらっしゃい。死と眠りの口づけで眠らせてあげるわ…」







ボクはレイラの手に引かれて部屋に入っていく。














「今夜も安らかな眠りを与えてあげる…ちゅ」




レイラの口づけがボクの首筋に冷たい疼きを与えてくる。




「ちゅうちゅうちゅうちゅうちゅう」




ボクに安らぎを与えてくれる死と眠りの口づけ。




「ぢゅうぢゅうぢゅうぢゅうぢゅう」




レイラの愛を感じさせてくれる安らぎの死の眠り。




「ぢゅるぢゅるぢゅるぢゅるぢゅる」




ボクに家族の温もりを与えてくれる愛の口づけ。













ボクに新しい家族が出来たんだ。




ボクの帰るべき場所。




ボクは家族の暖かさを感じて眠っていく。




おやすみなさい。
































「良い眠りを,エテルナ…」

一区切りついた感じがします。


作者の発想力が無い精なのか,人外のヒロインといちゃつく度に主人公が命がけになってきてしまいます。主人公が不死身でなければ,何度昇天したことか…。


反省しています。


しかし,後悔していません。


こんな自己満足な作者ですが,宜しくお願いします。


お手柔らかな御感想をお待ちしています。


では。

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