一話 転生するなら?
面白いのが書けました。応援よろしくお願いします。
異世界転生するならどんな条件がいい?
異世界なんて行きたくないので解脱したい? まあそういう向きもある。
せっかく考えられるんだったらどうする? もう転生するしかないと告げられたら?
無敵のチートで安全にスローライフを暮らす?
仲間を募ってチートハーレムで勇者を目指す?
追放される悪役に生まれ変わってざまぁする?
それともスライムやゴブリンに生まれ変わって大戦争?
いっそ大魔王か邪神かダンジョンマスター?
え、質問してばっかじゃなくお前の希望を言え?
オレはね……。
「と、言うわけで、お前は死んだ」
「とうとつ!?」
さっきまで海岸でのんびり缶チューハイ空けてゴロ寝してたんだが……。
詳しく思い出そう。たしかセクハラを繰り返す店長をボコってその足でバイト辞めて帰ってきたんだよな。
あ、オレにはセクハラしてこないよ? 一応女だけどデカいし愛想悪いしいつもまわりをにらんでるからな。そういう目をしている。生まれつきだ。
セクハラされてたのは新人の可愛い娘ね。店長には怒りの拳をぶち込んでおいた。
神様は不公平だよな〜。と思ったが、ちょうど目の前に神様がいるし聞いてみるか。
死因? 寝てたらフナムシにかじられてびっくりして護岸に積まれてる岩から転げ落ちて酔っぱらって寝ぼけてたのもあって上下がわからなくなって溺れて死んだんだと思う。
マヌケなやつだ! オレだったわ!
「とってもゆかいな死に方だな」
「ゆかいすぎてゲロ吐きそう」
「それは酒のせい」
目の前にいるのは女神様。
銀色の髪に黒い眼帯したゴスロリメイド系のドレスを着た太ももにホルスターつけてるいかにもな中二病の女神様が桃色の空間で事務机に座ってノートパソコンカタカタ叩いてる。眼帯を外したら金色とアメジストのヘテロクロミアだった。
「お前のような神がいるか!」
「神って言うのはだいたいそいつの想像した姿で出てくるんだぜ」
神なんてつまんねー野郎だと思ってたら爺さんの姿で出てくるしツンデレ女神様に決まってると思っていたらその姿で出てくるらしい。もちろん望んだ姿というか自分の心象の姿なんで思いもよらない姿で出てくることもあるらしい。
神様というのは世界そのもので人の写し鏡の姿で現れる、ということ。
例えば世界についてそんなに詳しくない人間もいるし、物理科学だの天文学だの世界の謎に挑んでるやつもいるし、あちこち旅してまわってるやつもいる。
世界は人それぞれ違う姿を持っているんだと。
「まあそれはいいや、豪邸で酒飲んで暮らさせて?」
「願えば叶うけど対価は必要だ」
叶うらしい。でも対価? 対価か。
オレにはなんもないな!
「というわけで異世界転生チャレンジ〜。どんどんパフ♪」
「そのノリでいいのか女神様」
「お前が好きそうだろ。魔法のある異世界で転生させてやろう。しばらく願いを考えてみるがいい」
そう言われてオレはすぐに答えた。
「世界最強の能力!」
「叶えよう」
……。
次の瞬間世界は闇に包まれた。
遠くにはたくさんの赤い星の群れが見える。
なにも考えることもなく浮かんでいるような感覚。どうも宇宙に浮かんでいるようだ。
十の百乗年くらいの時間でオレは蒸発した。
「ってブラックホールじゃねーか!!」
「宇宙最強だぜ」
五億年ボタンの比じゃねーぞ!
……うん、どうやらうかつに願ってはいかんらしい。しかし何度か転生させてくれるのか?
「無限の命?」
「宇宙に無限は存在できないな」
「じゃあ世界最長の命?」
「叶えよう」
……あ、うん、ブラックホールだな。
「じゃあ次は」
「適応早いなお前。次はなににする?」
「世界最強も長寿命も無理か。じゃあみんなが寄ってくるような存在にしてくれ!」
「お前わかってて言ってない?」
……ブラックホールになった。たしかにみーんな寄ってくるわ! ブラックホールジェット吐きまくりだけど!
「ちょっとブラックホールは飽きたかな?」
「飽きたで済む年月じゃないと思うんだけどね」
律儀にブラックホールにしてくる女神様も相当だがちょっと楽しんでるオレもたいがいかもしれん。
「やっぱりオレはダンジョンマスターとかやりたいな〜。ひきこもってたらいいし」
「今回送る世界にはダンジョンがないから自分で作るといい」
「え〜、しょっぱいな。全知全能なんだからダンジョンある世界にしてよ」
「対価は?」
「そこに戻るのね。じゃあ異世界三種の神器と不滅の肉体くらいくれ。対価は後払い!」
「五兆年ローンだな」
「長っ!? ブラックホールよりは短いか」
「順応してんじゃねーよ」
でもそれならダンジョン作るのも望みがありそうだよな。
そもそもオレには本当に何もないし、ハッピーな人生だとか主人公ポジションだと、叶っても、たぶん異世界行っても本気出せなくてグダグダになるタイプなんだよな。
だから解脱したいところだけどそんなに徳を積んだ覚えがないわ。店長殴ったし。
「ぜいたく極まりないな。対価はやっぱり無いし。そうだな、かなり苦労して成長していくタイプになるならその条件でもいい」
おや、話がわかるな。でもやっぱり努力しないと駄目なのね。
「逆に何もしてないのにお金が転がり込んだりモテモテになったりスーパーヒーローになったら怖くね?」
「それはそう」
なんもしないで全部手に入れたら実感ないと思う。
最初からあるものは失われるだけで、そのままじゃ足されないしやっぱり資本があれば安泰とも限らないし、みんなどんな位置にいてもそれなりにしんどいのではないか。
「そもそもお前たちに幸福や不幸を与えてるのはお前たちの脳だからな」
「脳の限界以上幸福は感じないし不幸だけはどんなにいい日々でも感じるわけだ」
脳の作用でしかない。結局物質の塊でしかないんだよな。
ファンタジーな魂があって物理科学すっ飛ばして結果が出ることなど一切記録にない。
まあ神様なら記録に残さず奇跡くらい起こすんだろうけど。
チャンスなのでそれからもこの世界ってなんで戦争や罪が無くならないの? とか聞いたが自由だから、とか、不幸や災いというのはなにかしらあることの対価として起こっているらしい。
自由とは空を飛べることではなく止り木を選べること。結局は人の責任なんだ。
「それに正邪も価値も結局は人が決めることだろう。結局は人の小さな脳内で起こることだけが世界なのに、お前たちはその外のすべてが自分の思い通りにならないと不満がる。与えられたものを数えてみれば存外過不足なく、故に存在しているのだがな」
「過不足があると死んじゃうけどそれはそれで終わりだから続かないってことか」
いろいろ聞いてみているがどうも自分の考え以上の答えをこの神様は用意してくれないようだ。そういえばオレの写し鏡という話だった。
「めんどくせーことぐちゃぐちゃ考えてるからお前は現実に対処しきれない。現実を見るといい」
「痛い! そりゃまあそうだよな」
自分の人生を嘆くばっかりで、オレは大した努力もしていない。
才能のある人は五年十年努力してやっと結果がついてくるくらいなのにオレは一年、一ヶ月筋トレしたことさえない。
なにかを得るには対価がいるし、それを支払っても返ってくるとは限らない。
幸福感は脳次第だしそれまでの不幸は幸福を感じさせる前置きになることもある。
腹が減らなきゃ満たされない。
「結局コツコツやるしかないか」
「決まったか? ではお前にやる力について説明しよう」
どうやら異世界転生三種の神器はくれるらしい。
ただ言語理解は知らないことは訳せないしストレージは魔力を増やさないと詰められる量が増えない。鑑定は名前がわかる程度。説明文を書くとなるとそこに恣意的な説明が入るからだと。
例えば毒って言ってもすべての存在に毒になるとは限らない。魚や虫は死ぬが哺乳類には影響しない殺虫剤とかあるしな。そして量が過ぎれば水も空気も毒になる。毒か薬かにはほぼ境界がない。人間が結果を見て決めてるだけだからな。
だから鑑定は人間が決めた名前でメジャーなものだけわかるけどそれだけらしい。
「まあなんもできない自分にしては上出来か」
「そうだろう、では対価として、せいぜい努力するといい。ダンジョンマスターにもなれるかもな?」
「お、マジか。話がわかるね」
まあ絶対敵を殺すチートとかもらっても他のことがなんもできんからオレは詰むと断言できるし、これくらいがいいのかもしれないな。
そして、また生まれ変わる。
今度はブラックホールじゃなかった。
しかし、これは。
なんもない原っぱでオレは空を見上げていた。
下を見れば泥。体は、ない? いや、あるが手足はない。
スライムか?
そう思ったが動けもしない。これは……?
しばらくして、日照りで体が焼けるように痛むと思ったら、オレは蒸発していた。
……って、水たまりじゃねーか!
オレは枯れた。終わり。
いや、終わってねーけど! 終わるな! てかオレ蒸発してばっかりだな!
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伏線が多いです。説明と違う、説明少ない、と思ったら伏線かもしれません。




