第一章 11 英雄とは呪いである
篠宮財閥会長の篠宮淳一が、叶えたかった願い。
それは、「病だけで、人生が振り回されず。ただ、一人の人間として生を与えられたのなら。苦しまずに生きてて欲しい」という医者ならではの優しい願いだった。
その願いを胸に何万人、何十万人も命の雫を零さないように救ってきた。しかし、その中にも零れてきた命もあったが、救って方命は計り知れなかった。
そして、篠宮淳一は脳の障害を治す治療法も考えた。そのため、マウスを使っての実験を開始したがマウスは過剰な神経反応を起こし脳波が乱れ、痙攣し、そのまま動かなくなる。
ーー"失敗"その一行だけが、記録書に残った。
所謂この計画は"案ずるより産むが易し"と言わざるおえない結果に向かっていた。
それでも、彼は救いたいと願い。その、研究を諦めることはできなかった。
何度も何度も失敗を経験を受け入れていく中、篠宮淳一は諦めるという選択を選んで行った。
否、出来ないんだと諦めるしか無かったのだ。
だが、その技術に目をつけた人物を知っていた。それを赤羽が語った。
「神楽祐作そいつが、篠宮淳一の技術を歪ませた元凶になった男だ。」
「神楽祐作?」
「元は科学者だったんだ。知らねぇのか?、神楽夫妻」
「わりぃ、そういうのは疎いんだ。」
赤羽は、"はいはい"と相槌をうち、説明をする。
神楽祐作ーー彼は、医者ではなく。脳の働きや機能を専門にする純粋な脳科学者であった。
神経回路の構造、脳波の変化、記憶の感情の仕組みを研究するような、一端の科学者であった。
奥さんが、神楽祐作の研究者の助手であり。家では伴侶として、二人は常に同じ研究を共有し合いっていた。
ーーある日、歪んでしまったきっかけが起きた。それは、神楽夫妻には一人息子が居た。まだ、高校生になったばかりの頃の時に交通事故の被害に脳死の状態で入院していたことだった。
神楽優作は、どうにか息子を目覚めさせたいが為に今まで築き上げてきた研究をどうにか活用し始めた時には偶然にも。篠宮淳一が、脳の障害を治す治療技術の案を考えていた。神楽優作は、その案に参加するも、さっきの説明の通り。篠宮淳一は、その案を撤廃さぜる負えなかった。
ーーそれでも、諦めなれなかった。
神楽優作は、篠宮淳一の辞めた脳の障害治療技術を突き進めてきたが━━
だが、現実は容赦がなかった。失敗を繰り返す毎に、研究資金が底を尽きて行く一方だった。
脳の障害治療技術に、目をつけた物が他に現れた。それが、神楽優作を狂わせてしまった大元"軍需産業"が神楽優作に資金提供を促した。
彼らが目につけたのは、悪魔で技術に対して投資に過ぎなかった。しかも、何が酷いか。
脳の技量そのものを、耐えうる限界までを引き上げる処置だった
それが不幸に、後の【能力者の開発】に繋がってしまったのだ。
「それが、能力者の開発に繋がったのか。」
赤羽隼人は、どこか居心地が悪そうに返事を返す
「あぁ、そうだ……。わりぃのは結局、善意な処置を悪意に変えた奴らだからな。」
しかし、鶴谷修也は疑問があった。
「なぜ、態々?危険ってことを顧みずに…しかも、間違ってるはずだ。ていうより、脳の障害の治療だろ?脳死は…流石に…」
無理があると思った。何せ、障害の治療ってのは。言語、記憶、注意力、感情などのを本来ならリハビリを兼ねて徐々に回生へと導くのではなく。ただ、元々の欠如した物を取り戻すのが近い……はず。
赤羽隼人は、続けて
「ーー弱みがあったからだよ。」
「弱み?」
「あぁ…軍需産業から、息子を治すには。脳本来を改造するしかないってな……。」
それが、神楽祐作の狂ってしまった由来だ。
脳の機能本来を改造することだった。
特定の機能に限定せず、
脳全体の神経構造と処理系統を対象にした包括的な改造を施す事を行った、それによっての犠牲者は数しれ無いからだ。
赤羽が反対する理由は、人が地道に積み上げて進化してきたものを、無理やり科学の力で底上げする事。
「んなの、罰当たりに決まってんだろ……自然の理に、逆らう事なんざ。いずれ、しっぺ返し喰らうぜ。」
「なんとも、スピリチュアルな事を言うなぁ。お前らしくない。」
「兎にも角にもだ、俺はそんな非道な真似してそんな、実験なんか上手くいくわけがねぇってことだ!」
あぁ、その通り上手くいくわけがない。武器などの兵器産業で肥やしを蓄えた身で言い出すのもなんだが、人の身体を改造してまで至福を耕す気は無かった。
だが、鶴谷修也は、疑問になったのは。なんで、態々成功するとは到底思えないから。
「……なんで、態々?」
「英雄にでも憧れたんじゃねぇのか?もし、成功でもしたら、戦争を早期に止めた英雄ってな」
「そんなもの……」
くだらないそう思えて当然だ。
そんな、称号のためにいや、称号なんかじゃない。
呪いだ。
凡人が、魔性な光に憧れて。その上に、身の丈に合わないような活躍を行おうとしたら。そんなもん、失敗するに決まってる。
かく言う、鶴谷修也もその男でもあったから。
赤羽隼人は、苦そうな顔をしてる鶴谷修也に伝える。
「あんたも、似たようなもんか。」
「あんなもん、称号じゃねぇ……呪いだ。あと、思い出したくない。」
「そうかよ……んで?獣化って言ったか?あの、犬神健人って子?」
「あぁ、そうだよ。そういや、聞いてた能力者と違うって? 」
赤羽隼人は、ため息を付きながら説明を返す。
「念力・発火能力・精神感応能力・瞬間移動能力それを、再現させるまでは知ってんだろ?」
「あぁ、だな。それが失敗した。それで?」
「俺が言いたいのは、獣化は聞いてねぇってことだよ。」
ならば、それは犬神健人って存在がイレギュラーなのでは?って言えば話はそこまでだ。
もし仮に、他にも実験を行っていたら?って嫌な想像をする。
「ーーあの、クソジジイ共ガァ……」
赤羽隼人は、眉間から青筋を立てて苛立ちを隠せなかった。能力者開発ですら、失敗という残念な結果で終わったのに。
その次は、獣化という。獣の力を使うってい所まで堕ちたのだ。
そんな、頭にきてる。赤羽を静止するように、鶴谷修也は言う。
「大丈夫。俺らで、守ってやれればいい。あと、仮に言うがあの子はお前より強いよ」
余計な一言も添えられたからか。能力者開発にイラついてた所に水を刺されたので、赤羽隼人は一呼吸入れ落ち着き。鶴谷修也の方をポンっと叩く。
「守ってやれよ。本当に……」
「あぁ、善処はする。」
△▼△▼△▼△
その一方で、二人が、廊下に行ったのを境にほかの者たちはと言うと。
『片倉様、豊穣!豊穣!』
「あぁ、そんな時期か」
白兎が、片倉啓介の裾を引っ張り。豊穣って言いながらお強請するように、両手を差し出す。
その、ポーズがあまりに可愛いからか。白兎が、初めての人からしたら。
雪兎が、餌を求めてるような愛嬌あるシーンに見え
ているためか。
実際、そんな可愛らしいもんでもない。
言うなら、仕事をしたから対価をくれってだけの話だ。
「何がいい?」
『人参以外|なら!!』
「了解」
「人参以外?え、兎って人参とか好きなイメージなんだけど?」
『はぁ、まあそういうイメージありますよね……ハハハ』
双葉陽子は、ポカーンと首を傾げるような表情になり。片倉啓介が、少し困惑した表情になりつつも説明する。
「まぁ、実を言うと。式神には豊穣っていう、いわゆる。お供えを対価として毎度、召喚を可能にしてるんだ。んで、白兎の場合。人参何度も与えたからか。次の召喚の時、「またかよ……」ってジト目で睨まれながら飽きられた。」
『そりゃ、毎度同じものを与え続けたら。私でも、怒りますし。飽きますよ』
白兎が、プクーと頬を膨らませて怒ってる所。武器商人達から逃げる為に持ってきた。白菜の漬物の入ったタッパーを稲荷が、持ってきて。白兎に渡す
「まあまあ、そんなプリプリするもんじゃないぞ。ほれ、白菜ならどうじゃ?」
『むぅ、……いただきます…… 』
「うむ、召し上がれ。」
餌付けされてる感覚に不服を訴えるが、白兎は貰える物を手で跳ね除けるほど無礼でもないため。シャクシャクと咀嚼音を立てながら、漬物の塩味を堪能してる。
『まぁ、今日はこれで大丈夫です。漬物美味しかったですし。』
「うむ、なら。良かった」
『でも……態々、餌付けみたいに出さなくても?』
「それは、気のせいじゃ。」
稲荷の後押しで仕方なく。白兎が、渋々納得し。豊穣の儀を終えたからか、煙のように姿が消えていった。
消えていったと同時に、廊下で話し合ってた。赤羽隼人と鶴谷修也は途中で合流する。
「あれ、白兎は?」
「もう、帰ったよ。」
「そうかぁ〜」
稲荷の耳がピクピクと左右に動いてるのを見ていた。双葉陽子は、稲荷のモフモフなケモ耳の動きがあまりにも愛くるしくて仕方なく。思わず触れてみたいと思ったのか。稲荷にかしこまる。
「あの、稲荷さん!」
「ん?どうしたんじゃ。改まって?」
双葉陽子は、一旦深呼吸をして。呼吸を整える。
「その、ケモ耳としっぽをモフらせてください!!」
「コヤ?」
こやつは、何を言ってるんだ?と稲荷は首を傾げ、思わず目が点になってしまい。瞬きを繰り返し、もう一度聞こうとするも。双葉陽子本人からは「モフらせてください!」聞き間違いではなかった。何故に?
「いやぁ、あの双葉殿……ワシを、モフってどうするのじゃ?」
「癒されたいのです!欲求を解消したいのです!」
「素直!!」
あまりにも、素直に欲望を話された為。稲荷は、困惑する。稲荷は、応えられないからか助けを求めるように片倉に目線を合わせるが。
「………」
「啓介?……啓介!?けいすけえええええ!!?なんじゃ、その目は!!」
「実を言うと、俺もモフってみたいなぁって……」
「まさかの、お主もか!!健人おおお!!?助けてくれなんだ!?」
「まぁ………申し訳ねぇが……実は、俺もです……」
「コヤン!?」
四方八方から、いやらしい手つきでジリジリと稲荷に向かって近づいてくるため。どうにか、団長である。鶴谷修也にも助けを求めようとしたが、その助けは虚しく
「俺も……モフりたい……」
「ワシに、救いは無いのか?」
稲荷が諦めた途端、止めてくれる救世主が現れたそれは。
「はいはい、やめなさい。修也くん、健人くん、啓介くん。陽子ちゃんそこまで。」
そう、LASの諜報員で誰よりも大人な、カナタ・ハリスが止めに入った。
カナタが、仲介役を引き受けてくれた為か。稲荷は、涙目でカナタの背後に回る。
「うぅ、カナタ殿〜」
「お姉さんでも、構わないわよ。」
稲荷に、ウインクを返すが。稲荷は、冷静に「呼ばん」と淡々と返されて。少し残念そうにするが、発泡酒をグビグビ飲んでた。アグリも仲介に入った
「ここは、セクハラしないと入れないのか?」
「いや、そういう訳では無いけども。ただ……」
「狐さん、嫌がってるんだし。やめとこ? 」
「嫌じゃった……。」
カナタの背後で稲荷は耳をぺたんと閉じて、本当に嫌そうな顔で。四人の事を目を細め、ジトーと見つめていた。
普段から、そんな相手に向けて湿った視線を向けることはまずないのだが。今回ばかりは、セクハラ紛いな事をされかけたので。稲荷は、四人に対して頬をプクーと膨らませて怒っていた。
「ーーごめんなさい。」四人は、一斉に謝罪する。
「二度とやるでないぞ……。怖かったんじゃから」
「いやぁ、すいません。稲荷さん、私……可愛いものを見ると……。」
「嬉しいじゃが、やめて欲しいぞぉ」
「はい……。気をつけます……でも…尻尾だけでも」
「反省の色なしじゃな……」
「反省してます!!!すいません!!」
稲荷は、「もう」と双葉陽子があんまり反省しきれてないからか。少し、膨れっ面をする。
△▼△▼△▼△
PM:08:30・英国イングランド支部:アルマス・ロイヤルガーデンにて。
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の一部、イングランド
イギリスと言えば、イングランドと言っても過言では無いだろう。石造りの街並みに、ロンドンの時計塔:エリザベスタワーが建てられ、その部分だけ拝見するなら、歴史が現代に至るまで残されたように感じさせる。
石造りで、2030年代とは思えない。言うなら、19世紀の大英帝国の背景を残された状態で建てられた建造物が、エリザベスタワーを背景に映される。
重厚な木製のデスクワークに、皮作りの椅子に腰掛けてる。一人の女性が、細い脚を組み。
デスクワークのパソコンに、LASの名簿を眺めていた。それが、不思議なことに公開されてない新人五名の名簿も含めてびっしり書かれていた。
(なるほど、ローガンお前が、考えたプロジェクトはこれなのか……)
淡い金色の髪が肩に落ち。
右耳のピアスが僅かに揺れるたびに
この部屋の無音を切るような微かな音を立てていた。
彼らの名簿を、かつての戦友を思い出しながら。
鋭く冷たい碧眼が、タブレットを見つめていたところ。
木製のドアが、コンコンッとノック音を立てられた。それに気づき、入らせる
「どうぞ」
「失礼します。ロザリー支配人」
黒と白のシンプルな、メイド服を身にまとった。綺麗な女性が、支配人の部屋に入ってきた。
紹介し忘れたが、彼女こそが。英国イングランド支部の支配人:ロザリー・マッケンジーと言う。ローガンとは、窮地の仲であり。LASとの関わりが、あるのはその関係からである。
「準備の方が整いましたとお伝えに参りました。」
「そう、ご苦労さま」
「プロジェクトの方は、完璧でありますのですね。」
「ええ、完璧だわ。今から【プロジェクト・L】を開始する」
英国にて、動き出された。プロジェクト・Lこれが、きっかけにより。LAS以外の組織が、プロジェクト化されていく。




