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⑤アンドロイドと人間

その日は一日中雨が止まなかった。ましろとふたりで愛し合いたいけど実はまだキス以上はしてない。自分の臆病さに呆れてる。同衾してるのに身体に触れたことないとかあり得るのか。俺がそうなのだが。


話しが変わるが実はましろの年齢を知らない。もしかしたら中学生かも知れなかった。アンドロイドは何らかの夢は見ても年は取るのだろうか。そしていつ改造されたのだろうか。まあそんな些細なことはどうでもいいや。


ましろを愛して愛されてるという実感だけで幸せに殺されそうになる。


我々四人は東京のためにこちらに移住した。敵のミサイルもなんなく片付けた。深夜だったから国民は寝てただけなんじゃないのか。それでも俺たちが居るから災難に遭うのだという。分かった、君たちの意見はもう分かった。だからもう何もしてあげない。ICBMが飛んできたらお前の手で受け止めればいいさ。


「『東京が他国に軍事進攻されてもアンドロイド隊はもうなにもしない。国連決議に従う』今日中にこの動画を世界に発信する」社長宅でそう宣言した。大好きな東京だけど何もしない。


社長は憔悴しきっていた。先日のSLBMの弾頭は核だった。成層圏まで飛ばしてもそれは東京に降り注ぐ。海に沈める手もあったが俺の判断ミスでそうなった。


「動画の配信だけはもう少し後にしてもらえないだろうか。ただでさえ混乱している新興国東京は世界から悪い意味で注目されている」


「国のお役にたてないポンコツは何もしない方がいい」国民の方もそう言ってらっしゃると俺は言った。ちょっとしつこいからもう言わない。


意志疎通がしっかり出来るようアークトゥルスとアクルックスにはしばらくこちらに住んでもらうことにした。ましろが皆を纏めてくれるから大丈夫だ。日本による軍事侵攻の噂が絶えなくなった。心臓を抉り取られた形の日本は一刻も早くまた東京を取り込みたいのだ。TVで東京の軍事訓練の様子が伝えられた。彼らはなんの役にもたたない。三日と持たず降参するだろう。


アクルックスにベランダに呼ばれた。


「わたしのせいでこの国に大混乱を起こしてごめんなさい」と言われた。

お前のせいじゃないよと軽く頭を撫でた。


アークトゥルスも無言でやって来たのでお前が守った国を見てあげて欲しいと夜景を指さした。


「もう一度同じことがあってもわたしはまた守る」

と強めの口調で彼女は言った。


「俺が行くなと言ってもか」

そう聞くと黙り込んでしまった。考えるのは俺の役割だから二人は指示を待っててと伝えても納得していない様子だった。


変わり始めているのかも知れない彼女たちは。ましろは自分から俺にキスをしてくれた。アークトゥルスはこの国を守りたいという。常に指示待ちだった頃とはもう違うのかも知れない。俺は社長にメッセージを送った。ましろたちへの支持はあなたに行って欲しいと自分は今疲弊しすぎていることも伝えた。


治安維持の仕事に参加することは見送らせてもらった。国の存亡の危機にそんなことしてる場合ではない。


迷走してる自分の心を静めなくてはと思った。


何処に住みたいかと聞かれたら東京に決まっている。唐突だが記者会見を開くことにした。自分に何が求められているのかを聞いてみたかった。マイノリティだからと捻くれて自分のやりたいようにしてきた。だけど今は多数派の意見も真摯に聞きたいと思ったのだ。


緊急記者会見というテロップが流されてるはずだ。俺の言葉がSNS、TV、新聞であっという間に拡散されるはずだ。スポーツヒーローという訳ではないので違和感は感じながらも意志を伝え国民の反応をきちんと聞きたいと思った。


アンドロイド三人にも同席してもらった。同席だけで彼女たちへの質問は認めない。意志を持ち始めた彼女たちはまだ危うい。彼女ら自身の判断を優先させることはできないと判断した。


我が国の防衛に彼女たちを出撃させないのかとまず問われた。それにたいし今は否定的であることを伝えた。彼女たちは人間で兵器ではない。それでも迎撃出撃させたところ多くの否定的意見が出たことは大変遺憾だと言った。逆にどうして欲しいかと逆質問した。


「国民の大半はそこにいらっしゃる彼女たちの力が必要と思っています。心無い者が彼女たちのせいで混乱に巻き込まれたと言っていますが民意ではないと思っています」と記者が言った。


「アクルックスが暴れ東京に被害を与えたことは謝罪いたします。ただあれは妹のアークトゥルスが新宿の地下に幽閉されたことが原因でした。自我が芽生えて間もない彼女はそのことで大変傷付き蛮行に及びました。責任をもともと取れるはずがない幼い彼女たちを東京は利用しようとしたのです」初めて明かされた新事実に記者席がざわついた。


「彼女たちは大きすぎると言っていい力を持っています。ですが自我は脆弱で日本国の自衛隊のような扱いを受けたら崩壊してしまうでしょう。ですから今後の出撃は断念しようと思います。この私の決定に対してのご意見をいただき短い会見を終了させていただきます」


結局、負担を掛けてしまうが彼女たちを有事には出撃させて欲しいと言う意見が大半で、俺は善処いたしますと言うだけで不毛な会見は終わった。アークトゥルスの件をばらしたので、次は東京政府がなんらかの説明をしなければならないだろうと思った。


アクルックスとアークトゥルスは一緒にお風呂に入っている。本当に仲の良い姉妹で眺めているだけで幸せな気分になる。ロシア人とのハーフであることが分かっていて容姿も申し分がない。ましろもアイドル的な意味で相当なファンがいるが二人も相当愛されている。


だが正義のヒーローでも悪を倒す変身ヒロインでもないし勿論アイドルでもない。


不毛な議論をしてる間にもまたSLBMが襲ってくるかも知れない。世界最強国に攻撃を仕掛けた国の名は聞かなくても分かっている。だが政府は反撃や対抗措置をまだ打ち出していない。重要事項決定権者不在の国としては日本と変わらないと率直に思った。

なので結局リーダーのましろに聞いてみた。俺は指示しかできないから彼女にまた東京にミサイルが飛んで来たらどうしたいかと。

「また止めるよ。守りたいから」シンプルで完璧な答えを出してくれた。


二人が風呂から上がったのでましろにデートの時みたく一緒に入ろうかと尋ねてみた。意外なことに今度は照れてなかなか返事が来なかった。


「恥ずかしい」と聞いたら頷きながら背中をつねられた。仕方ないので一人で入り夜景を眺めていたらましろもそろりと入って来た。今度はバスタオルを巻いていた。夜景をしばらく二人で見た後キスをした。同衾してても風呂に一緒に入ってもキスだけだった。


めずらしく社長が我が家に訪ねて来た。


あの会見で特にアークトゥルスが拉致監禁されていたことには大きな批判が寄せられたそうだ。政府要人の中で関与したものは誰だという犯人捜しが始まったとか。わたしは目の前の社長を無言で指差した。


国家の道具にされていたということが知られ、被害者として三人のアンドロイドたちの人気が急上昇した。特にアークトゥルスの無許可ポスターが大量に出回っていてましろの人気を抜いていた。


「嬉しい誤算です。俺にとっては。あの三人を兵器やモノではなく人間として扱われることが増えてきたことが本当に嬉しい」と言った。

社長は我々が悪になり彼女たちを出撃させやすい民意になったのは良いことだったと語った。


「本当のことなんですけどね」と社長を指差していじめたところでいらした理由をお伺いしますと言った。


「実は国としてSLBMを発射した国に謝罪と賠償を求めたいのですが小国がそれをしていいものか伺いたくて参りました」


決断が遅いと言いつつ俺が三人を出さないと言ったことにも原因があったのできちんと答えた。

「中国にそれを今日中にしていいです。応じなければ報復が待っていると言っちゃってください」

と伝えた。社長は驚いた顔をしたが心底ほっとしたようだった。


「あの子たちの本質はやはり兵器です。人を殺すことへの罪悪感はないんです。その気になれば半日であの国を崩壊させられる力も持っています。なので遠慮は入りません」と伝えると頭を深々と下げたあと大急ぎで家を後にした。


だが引っ掛かってることもあった。ましろの守りたいからと言う発言だった。生まれて間もないだろう彼女たちは自我が無いに等しかった。だが風呂に一緒に入る時にバスタオルを巻いて来たように変わりつつある。俺の声に耳を貸さなくなる日が来るのかも知れないと思った。


ニュースでは中国がミサイル発射の事実を頑なに否定と書かれてあった。当然賠償金にも応じるはずがない。俺は三人と打ち合わせ渤海攻撃と奪取作戦の敢行を伝えた。


戦闘になると彼女らは生き生きしてくる。戦闘アンドロイドたちの真骨頂にも見えた。


東京軍は自衛隊と違い専守防衛ではない。だが東京復興がまだというのもあり脆弱過ぎる戦力だ。彼女たちだけでぶっちゃけそのくらいは簡単なのだが友好国台湾との協力で行うことを伝えた。


「社長、一応台湾のフリゲート艦他出てもらいますがそれは飾りでアンドロイドたちの火力で奪取します。宣戦布告と同時に空から社長も知ってるましろの『コズミック・バン』で叩きます。彼女たちの体力を考えあの時の十倍の威力で破壊するので壊滅まで半日は掛かりません」


「彼女たちへの支援を我々も行いたいのだが無理だろうか」と社長が聞いて来たので日本から賠償で奪取したイージス艦で食事だけさせてください。攻撃をするふりだけしていただければ充分ですと伝えた。


渤海奪取は1時間で完了。その後ついでに北京近郊にましろが弱コズミック・バンを放ち威嚇し戦闘は終結した。総時間は2時間だ。イージス艦で待機してた俺は三人の健闘を称えそれぞれ抱きしめた。ましろにだけはキスも追加した。アクルックスだけはちょっと羨ましそうに見ていた。















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