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③アークトゥルス

ましろと俺はちょうど戦闘に適した場所を探していた。アクルックスも一緒だ。社長には東京都に第一級避難指示を今出させるよう伝えていた。霞が関ビルでいいやとなんとなく思ったので銀座、東京に近いこの場所を訓練場所とした。その前に二人に確認した。


「二人の間で犠牲や負傷が出ることは絶対にないですよね」アクルックスは頷いた。ましろはVサインで答えた。


避難指示五時間後に二人はぶつかった。


サーベルを二人に持たせ実戦稽古してもらったところお互い結界があるので身体の前で止まってしまう。攻撃の出力を上げたなら爆風で霞が関ビルが跡形もなく吹き飛んだだろう。そしてやはりと俺は思った。

間もなくアクルックスの姉か妹が解放されるので邂逅できたら一度俺の元に来て欲しいというと彼女は了承してくれた。


労いのため缶ジュースを二人に持っていくと美味しそうに飲んでくれた。二人はまるで姉妹だった。今度はまた新宿西口高層ビル群に向かった。一時間ほどたってアクルックスの妹(姉ではないらしい)が地下の階段を昇ってやって来た。アクルックスは涙を流しながら妹に抱きついた。


少し落ち着いたところでわたしはアクルックスに妹の名前を聞いた。アークトゥルスと言うらしい。

俺は彼女に新しいBlack Paradeへようこそと伝え握手した。ましろは俺の隣に常にいた。すると社長ともう一人目つきが鋭い男がやって来た。


「要求は飲んだ。ましろくんが我が東京都独立運動に加わってくれる、これでいいのかな」目付きが悪い男が聞いて来た。

「まだましろと同じ人造アンドロイド二体が加わってないのでそれは早計だ」と言った。

「あと俺からの要求だが東京23区の道路を至急元に戻してくれ。大好きな都市がこれでは辛い」

「善処しよう」と同じ男が言った。

「あゝ善処ねえ。公務員用語だね!聞き飽きたよ」と突き放した。


アクルックス、アークトゥルスに二人はもう自由だ。好きな場所に行ってくれと伝えると嬉しそうに飛翔し旅立って行った。


「もし我々がもうましろ型アンドロイドを二体手に入れてたとしたらどうかね」社長が言った。まったく構わないましろ一人のが100倍強いからと言い切った。


「ブラフはいけないな谷川くん、らしくない。冷徹な君は今日は居ないようだが」社長の煽りにはきちんと返さないといけない。


「なんか交渉でマウント合戦になってしまったことは謝罪する。アークトゥルスを長い間閉じ込めて置いた君たちが心の底から気に入らなくてね。あと関係ないが凸凹の道路で壊れたRX-8の修理費も今出してくれ」私が言うと男は懐から100万円出して俺に渡した。


「さて質問だ。日本を一瞬で焼き払える火力を持ったアクルックスがわざわざ援軍として人造アンドロイドを連れてくるだろうか」俺は問いかけた。


「Black Paradeの傍ににましろくんが居た。それが証拠になるんじゃないのか」と社長が言った。あれはただのクルド軍だ。アクルックスの下には居なかったと私は言った。ましろの目を見たら頷いていた。


「もういい。あんたらの言葉には飽き飽きだ。見せてやろうましろの真の姿を。そしてお前らはできるだけ地下を目指せ。アークトゥルスが来た道を辿れば生きられるかも知れない」そういうとましろと宙に飛翔した。結界を張り集中力を高めるましろ。俺は思わず頬にキスをした。ましろが照れて真っ赤になった。仕切り直してましろが蒼く燃える。俺を結界内から出ないように腕を腰に回しながら。


『コズミック・バン!』ましろが唱えるとビルの一棟が粉々になった。相当力をセーブしてくれたので新宿壊滅は逃れた。


なんのことはなかった。アンドロイド最強はましろだった。だからアクルックスは日本にましろを一応連れてきたが自由に遊ばせておいた。姉的存在のましろに攻撃をやめるよう言われ渋々自重したのだ。

一時間経って二人は地下から這い上がってきた。地上の轟音を聞き命の危機を感じたがなんとか生き延びていた。そして粉々になった高層ビルを見ることになった。

ここから東京を独立させるんだ。その意志がないなら我々は撤退すると言ったので彼らはやり遂げると誓った。


ましろはあくまでその力を誇示する象徴になってもらうと伝えた。もし他国や日本政府の介入があったらアクルックス姉妹も呼ぶと。


正直東京独立についてはあまり興味がなかった。だが約束は守ろう。アクルックス姉妹も配下に入れたに等しい。なら俺の目的はというとクルド国建国だった。彼らは国もなく野蛮な者も多くいるので教育にも力を入れる。世界を救おうなんてことは考えていない。ただましろの強大な力で何かをしてみたいと考えていた。ただすぐではない。やり過ぎたので少し休ませてあげたかった。


ニュースで東京が独立宣言を出したというニュースを聞いた。政府は直ちに戒厳令を発動し自衛隊を出動させたがアークトゥルスがやってきて東京防衛のため自衛隊を軽々撃退していた。彼女は地下で目付きが悪い男に仕えていた。しかし高圧的な彼を好きではなかった。だから彼女と親愛の意味を込めて握手したのだった。姉とも仲が良いということで俺にすぐ寝返ったのだ。


東京都は日本政府から膨大な賠償金を受け取った。独自の東京国軍発足と街を立て直すにはまだ不十分だが。そして俺は独立は自らの手で行うべきだと考えていた。オーバーテクノロジーのアンドロイドたちは危機の時しか出動しない。彼女たちはそもそもなんのために存在してるかが不明だからだ。


あれから半年、ましろは日本語がかなり上達した。舌足らずだが十分だった。昨日からアクルックスとアークトゥルス姉妹が来ていた。


日本政府の賠償金の中から労働の対価として億単位のお金を受け取っていたので俺はかなり裕福だった。千葉駅で一番高いマンションの最上階に住んでいた。ましろの仲間のため広いマンションが欲しかった。それでもましろは俺のベッドに同衾していた。


慣れてしまったが恋人じゃないのにこれはどうなんだろうか。新宿で前に不意打ちキスをしたが関係は進展していない。やはり恋愛対象として見られてないと感じ辛かった。アクルックス姉妹は異様に仲が良かった。一緒のベッドに寝てたびたびキスをしていた。禁断の関係なのかな。人間じゃないからいいのかも知れない。


モノレール他千葉観光をするのでアクルックス姉妹の変装をどうしようと考えていたらましろと同じように着替えが出来た。え、と俺は思った。ましろを見ると何?って言う顔をしたが気が付いたらしく二人もわたしと同じ人間だよと言った。頭をよぎったことはあったが先入観で純粋なアンドロイドだと思い込んでいた。三人姉妹みたいだと動物園で俺は言った。


ましろとの仲が進展しないことに焦っていたがやることはやらねばならない。軍事力では大きく劣るクルド人国家がイラクの上半分を占拠して国家樹立を実現した。反撃したらアクルックス姉妹が来るので米国は手を出せずほぼ無血勝利だった。賠償金はイラク政府ではなくアメリカから取った。


クルド国にはそのお金で学校建設して欲しいのだが途中のピンハネが酷く上手くいかない。これはもう彼らの問題だ。


東京再建は急ピッチで行われたがかなりダメージを受けていたので大手企業の本社撤退が相次ぎ経済的損失を被っていた。だが国家として承認する国はかなりの数に上り独立は成功した。ましろの火力に恐れをなした日本政府はもう手を出さなかった。本当の成功をおさめるかはこれからだ。


アンドロイドたちの力は世界に轟いた。しかしなんのために作られたのか。誰が作ったのかは手掛かりすらなかった。宇宙人がつくったのかなと本気で考えた。米軍が手も足もでない反則的な力をを持つことを考えるとあり得ない話じゃないと。だが宇宙人って居るの?の問題から始まりラチがあかなかった。未来の彼女たちのことを最優先する時期に来ているのに。


「ましろは将来何になりたい。人間として答えて」と真面目に聞いたらソータとずっと一緒がいいと若干的外れなことを言ってきた。俺と結婚したいのと聞いたところ黙ってしまった。


半分プロポーズだったんですよましろさん... 突破口を見つけるべくアクルックス姉妹にも聞いてみた。二人は結婚したいかと。するとましろの様に黙ってしまった。彼女たちは好意を持った人間に尽くし言うことを聞く奴隷種に近かった。だから自分自身の意志が乏しい。なので決断を迫るようなことを聞くと黙ってしまうんだろう。俺と結婚しなさいと命令すればたぶん断らない。でもそれは余りにも卑怯なやり方だ。彼女たちに自分の意志を持って欲しいと切に願った。


ましろたちがいることで少しだけ平和な世界になったが、彼女たちが表で暴れなくなるとすぐに各地で戦争や紛争が起こった。最初破壊神のように感じたアクルックスはアークトゥルスを取り戻した後は俺の命があった時以外は大人しくしている。


アークトゥルスを東京都が捕らえることができた理由は彼女たちの順従さにあった。単独でいる時に優しい声を掛けジュースでも飲ませればなんでも言うことを聞く。社長はそのことを熟知していた。ましろが俺に懐いているのも全く同じだ。俺でなくともあの場で助けていたらその人間にそのまま懐きえっちな要求をしても断らないだろう。


「それのどこが悪いというのかね谷川くん。奥さんにするなら最高だと思うよ。それとも君は自意識過剰で浮気を繰り返す嫁がいいのかね」最近は東京国のために忙しく動いている社長がそう言った。


「好意を抱いてくれて言うことを聞いてくれるのはかわいいし文句はないです。でも俺と結婚する?と疑問形で言うと悩んで黙ってしまうんです。それがたまらなく切ないです」


「なんだもう振られたのか。それなら疑問形をやめて全て命令形で話せばいい。彼女たちは絶対に断らない。安定した家族計画ができますな」と社長は言いがははと笑ったので俺の心のいろんなところにぐさぐさと刺さった。



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