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7話:お嬢様は妹と婚約者をトレードしたいようです


 スパルジア侯爵家には二人の令嬢がいる。


 フィーリアと、妹のオウレリアだ。

 ふたつ違いの妹はフィーリアに外見はよく似ているが性格が全く違う。


「お姉様ぁ、お勉強を教えていただきたいのですけどよろしいですか?」

「まあ、熱心なことね。でも、わたくしより家庭教師の先生に聞いた方が良いと思いますけど」

「わたしはお姉様から教わりたいんですの!」

「しかたないわね、見せてごらんなさい」

「わぁ、お姉様大好き♡」


 これくらいテンションが違う。


 侯爵家の長女、そして第二王子の婚約者として礼儀作法から何から厳しく躾けられてきたフィーリアとは対照的に、妹のオウレリアはまさに天真爛漫といった性格をしていた。


 表情が豊かで喜怒哀楽を素直に表し、誰からも好かれる妹を、フィーリアは密かに羨ましく思っていた。


 そして、また思い付いてしまった。






「オウレリアをラシオス様の婚約者にしたらいいのではないかしら」

「あ、まだ婚約破棄するの諦めてなかったんですね」

「うふふ、お嬢様ったらぁ」


 自室で三人だけになった途端、フィーリアが次の作戦を打ち明けると、エリルは呆れ顔、ミントは笑顔になった。


「アウローラさんが家庭の事情で学院から居なくなってしまった以上、次の作戦を考えねばなりません」

「家庭の事情っていうか、それお嬢「わー流石はお嬢様! 常に色々考えててエラいですわ!!」


 男爵家令嬢が実家に帰ったのはフィーリアの所為である、と言おうとしたエリルの言葉に被せるようにミントが叫んだ。いくら気心が知れた仲とはいえ、フィーリアは主人である。責めてはならない。


「良い考えだとは思います。でも、オウレリア様にも婚約者はいらっしゃいますよ?」


 ミントの指摘通り、オウレリアにも婚約者はいる。フィーリアが王家に嫁入りするため、オウレリアが婿取りをしてスパルジア侯爵家を継ぐことになっているのだ。


「婚約者のトレードはどうかしら」

「なるほど、それならお家的には問題ありませんね」


 貴族の婚姻は家同士の結び付き。それさえ変わらず、当人同士が納得しているのなら可能な話である。


「オウレリア様の婚約者であるカリオン様はカスティニア公爵家の次男ですね。まあ、家柄も容姿もラシオス様にやや劣りますが」

「ということは、お嬢様はカリオン様と恋をなさりたいんですね!」


 婚約者を交換するならば当然そうなる。


「カリオンと恋……」

「違うんですか?」

「あ、いえ。カリオンは良い子だと思うのだけど、小さな頃から知っているから……」

「「ああ~……」」


 オウレリアとカリオンの婚約が決まってから十年。その間両家は密接な付き合いを続けている。それこそ幼馴染みのような関係だ。ラシオスほどではないが新鮮味はない。


「でも、弟のように思っていた相手の男らしい一面を見てキュンとしちゃう、みたいな恋愛小説もありますよ!」

「では、恋愛は不可能ではないのね」

「もちろんですっ!」


 ミントの力説に、フィーリアは少しだけ安堵したように表情を緩めた。

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