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6話:話し合いで今後の方針を決めたいと思います


「罪のない男爵令嬢が消えたわ」

「まあ、そういうこともあるわよね」


 ここは王都貴族街の中心に建つスパルジア侯爵家のお屋敷。その二階にあるフィーリアの部屋……の前室の脇にある使用人控え室。

 四畳半ほどのこじんまりとした部屋の中で、二人のメイドが長椅子に並んで座っている。


 一人は青味がかった黒髪を肩に触れない程度の位置で切り揃え、切れ長の目をしたエリル。

 もう一人はふわりとした赤毛と垂れ目がちな大きな瞳が可愛らしいミント。

 どちらも侯爵家令嬢フィーリア専属のメイドである。


「アンタがお嬢様をけしかけるから」

「まぁ済んだことはいいじゃないの。どのみち、あの程度で逃げ出すようなら貴族社会では生きていけないわ」

「……それはそうね」


 ブラースカ男爵家令嬢アウローラは、クラスで唯一婚約者が定まっていないというだけでフィーリアに白羽の矢を立てられた。


 木っ端貴族の娘が第二王子と恋愛しようなど思うはずもなく、フィーリアからの聞き取りに怯え、怒りを買わないようにうまく受け答えをしてやり過ごした。そのつもりだった。


 しかし、フィーリアの取り巻きが罪のない彼女を勝手に断罪してしまったのである。


 結果、アウローラは田舎にある実家に逃げ帰った。表向きは休学となっているが、彼女が王都の土を踏むことはもう無いだろう。


「そもそも、ミントが変な小説でお嬢様をそそのかすから悪いのよ。放っておけば来年の卒業後にラシオス様と結婚されるのだから、そっとしておけばいいのに」

「だからよ。王族と結婚しちゃったらそれこそ恋なんか出来ないわ! お嬢様には今しかないのよ」


 フィーリアは現在十五歳。

 来年には貴族学院を卒業し、婚約者である第二王子ラシオスと結婚して王宮へ入る。その際に、フィーリア専属のメイドであるエリルとミントも付いていく予定になっている。


「ラシオス様と婚約破棄されたら困るのよ。私は王宮で働きたいの。ゆくゆくは侍女頭になって王宮を裏で牛耳りたいんだから」

「あ、意外と野心家なのね」


 平民出のエリルがその地位に登り詰めるには、フィーリアとラシオスの結婚が大前提となる。だからこそ、それを妨害されるのが我慢ならない。


「ミント、アンタは婚約破棄させたいの?」

「まさか。色んな経験をしてほしいだけよ」


 問われて、ミントはすぐに否定した。


「お嬢様は他人の感情に疎いから勘違いされてしまうことが多いでしょ? だから恋愛小説をお貸ししたの。感情を学ぶには良い教科書だもの。実際に恋愛してみるのも良い勉強になるわ」

「……意外だわ。アンタ、そこまで考えてたの」

「うふふ、まぁね」


 互いの思惑を知り、二人はニッと笑い合う。


「感情を学んでいただく為ならば異論はないわ。でも、本気になられたら困るのよ」

「そうなったら裏で手を回せば良くない?」

「そうね」

「そうしましょ」


 こうして、エリルとミントは協定を結んだ。

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