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48話:最初の事件の情報が手に入りました

 

 決別しておきながら、毎日学院の敷地内で顔を合わせているうちに自然と警戒心が薄れてきていた。楽しそうにカラバスと小競り合いをしたり、憎まれ口を叩き合ったり、そんなヴァインの様子を見てどこか安心してしまっていた。


 油断していた自分に気付き、エリルは狼狽えた。


 ローガンには裏がないと、ラシオスとの手合わせの時に分かった。彼は傲岸不遜だが曲がったことが嫌いで、決して卑怯な真似はしないタイプだ。


 では、ヴァインは?


 彼は掴み所がない性格をしている。唯一本性を剥き出しにしたのは、アイデルベルド王国内に流れる例の噂についてエリルが口を滑らせた時のみ。それ以降は飄々とした態度を演じている。


 ブリエンド王国の王宮には近隣諸国の王侯貴族が結婚式に参列するために滞在している。中にはあまり良くない関係の国もある。祝い事で後々禍根を残さぬように一律招待しているからだ。


 まだフィーリアは答えを出していない。ローガンの恋敵であるラシオスを亡き者にするのなら、アイデルベルド王国の人間以外が王宮に滞在しているこの時期をおいて他にはない。


「でもでも、なんでそんなことする必要があるのかしら~?」

「……なんでって……」


 使用人控え室に戻ってからも悩み続けるエリルに対し、ミントが尋ねた。


「アイデルベルドではローガン様の結婚相手が見つからないから、だから留学を名目にブリエンド王国にお相手を探しに……でも、我が国の高位貴族はほとんどの方が幼少期から婚約者が決まっているから」

「わざわざ他国の王子を殺してまで結婚相手を得たいものかしら? ていうかぁ、例えば今の状況でラシオス様に何かあったら、逆にローガン様は身を引いちゃうんじゃない~?」

「そうかしら」


 確かにローガンはそんな状況につけ込むような性格ではない。だが、この国の高位貴族は、ほとんど婚約者が決まっている。突然婚約者を失えば、身分の釣り合う相手は国内に居なくなる。新たに結婚相手を探すより、前々から求婚してくれていたローガンを選ばざるを得ない状況になるのではないか。フィーリアが決断しなくても周りがそういう目で見るだろう。


 そもそも、何故ヴァインは例の噂に過剰な反応を示したのか。彼の真意はまだ不明。いつも適当に誤魔化され、あしらわれ、エリルには分からないことばかり。


「そういえば、最初の事件のことを知ってる人にようやく繋がったの~」

「それって、亡くなったっていう……」

「ええ、ローガン様の婚約者の事件よ」


 数年前、ローガンの婚約者は不幸な事故で亡くなった。事件の真相を誰も話したがらず、詳しい内容までは分からず終い。後釜狙いでローガンに群がった令嬢たちが不幸に見舞われた話ばかりが噂されている状態だった。


 恐らく箝口令が敷かれたか、関係者の口が封じられたのだろう。


「よく知ってる人を見つけられたわね」

「うふふ~、人の口には戸は立てられないものよ。実際にあったことならば必ず知っている人は存在する。そして、大きな秘密であればあるほど誰かに話したくなるものなのよね~!」


 無邪気に笑う同僚にやや恐ろしさを感じつつ、エリルはその先を促した。


 過去にアイデルベルド王国で何が起きたのか。真相が分かれば対処の仕方が分かるかもしれないと思ったからだ。


 出来ることならば、

 誰も傷つかず、

 誰も傷つけさせず、

 祝いの式典を無事に終わらせたい。


「じゃ、昔話を始めましょうか~」

「せいぜい数年前の話じゃないの?」

「んもう、雰囲気出したかったのにぃ」

「そういうのいいから、手短に」

「エリルったら、情緒ってものが足りないわ!」


 可愛らしく頬を膨らませながら、ミントはエリルの額を指で小突いた。


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