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46話:殿方同士の話し合いは剣を交えて行うそうです 4

 

 ブリエンド王国第二王子ラシオスとアイデルベルド王国第一王子の手合わせは無事に終わった。


 二人の一騎打ちではあったが、これは剣技の授業である。ギャラリーも集まっており、このまま解散出来るような雰囲気ではない。かといって、全校生徒から見られた状態で通常の授業をするわけにもいかず、担当の教師は頭を悩ませた。


「先生、せっかくですから熟練者同士を戦わせ、皆で見学しましょう」


 そう提案したのはカリオンだ。彼も観覧席にいて一部始終を見守っていた。隣には彼の婚約者でありフィーリアの妹であるオウレリアもいる。


「しかし、熟練者と言っても……」

「ちょうど僕の護衛が対戦相手を連れて来ました。彼らを戦わせ、殿下たちの争いを有耶無耶にしてしまいましょう」


 カリオンが指差した先では、カラバスが逃げたヴァインを取っ捕まえて引き擦っていた。

 結果的に丸く収まったとはいえ、王子同士が剣を向け合ったのは事実。ここで解散したら、その話だけが外に広がってしまう。それより面白い見世物で皆の記憶を上書きしようというのだ。


「先生、お願い」

「わ、分かった、許可します」


 小首を傾げて頼み込むカリオンには勝てず、教師は部外者の闘技場での試合を認めた。


 カラバスに首根っこを掴まれたまま、ヴァインは闘技場の中央まで引っ張り出された。そこでようやく解放されたが、周りは既に次の試合を待ち望み、二人に熱い視線を送っている。逃げ出せる雰囲気ではない。


「今度は私たちが手合わせを?」

「貴方が要らん真似をするからですよ。我が主人は酷くご立腹です」

「ここは仲良く真面目に戦うフリ、というのは」

「私も主人と同意見です。容赦はしません」


 言いながら、カラバスは腰に佩いた剣をすらりと抜いた。完全に目が据わっている。生徒同士の模擬試合とは違う。故に刃を潰した鉄剣や木剣などではなく真剣を用いて戦う。


「私、いま短剣しか持っていないのですが」

「知りません。それで戦ってください」

「めちゃくちゃ怒ってますね」

「……貴方のせいで、主人からの命令を遂行できなくなるところでしたから」


 あの時、反射光でラシオスの動きを止められたのは完全に予想外だった。離れた場所でヴァインを押さえておけば済むと思った自分の考えの甘さを、カラバスは責めているのだ。


「これは私の個人的な憂さ晴らしでもあります。観覧席の皆様が満足するまで付き合ってもらいますよ」

「こんな時ばかり情熱的になられても嬉しくないですけどね、っと」


 笑みを浮かべたまま、ヴァインは短剣をカラバスに向かって投げた。当然それは避けられ、地面に突き刺さる。丸腰になったヴァインは高く跳躍して距離を置き、闘技場の片隅に立て掛けてあった剣を手に取った。刃のない鉄剣である。


「こんなものでも無いよりはマシですからね」

「いいでしょう。掛かってきなさい」


 互いに同じ長さの得物を手にして、笑いながら斬り掛かっていく。その光景を眺め、エリルは深く長い溜め息をついた。






 カラバスとヴァインが観客を湧かせている間に、王子二人は教師陣によって控え室に連れ戻されていた。念のため医務室から呼ばれていた医師に怪我や打ち身がないか全身隈なくチェックされる。


 そこへフィーリアが駆け付けた。ノックするのも忘れて扉を開け、控え室へと飛び込む。


「フィーリア!」

「フィーリア嬢」


 二人は診察のために防具を外し、シャツも脱いだ状態だ。構わずフィーリアはずかずかと足を進め、その剣幕にラシオスたちが慄き、一歩下がった。


「お怪我は!?」

「な、ない」

「俺も」


 二人の返答を聞いてから、フィーリアは側にいた医師に厳しい視線を向けた。医師は思わず姿勢を正し、頭を下げる。


「お、御二方とも無傷です。ご安心を」


 それを聞いてフィーリアは胸を撫で下ろした。

 そして、目の前の二人の男性が上半身裸であることにようやく気が付いて悲鳴をあげた。


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