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24話:隣国の王子の護衛の逆鱗に触れたようです 1


 翌日から、エリルは貴族学院に侵入してフィーリアの様子を見守ることにした。


 通常、忘れ物や昼休みにお弁当を届ける名目以外での使用人の出入りは禁止されている。これは貴族の子息の自立を促すための決まりである。それに、学院の門や庭園、校舎にはそれぞれ警備の兵がおり、常時巡回している。危険はない。


 しかし、エリルは度々無断で敷地内に侵入している。これはフィーリアの婚約者であるラシオスと情報交換をするためである。最低でも週に一度は忍び込み、こっそり交流していた。


 短時間の侵入はお手の物だが、長時間ともなると見つかる恐れがある。いつものメイド服から動きやすく目立ちにくい服装に着替えておく。


 警備の穴を突いて学院の敷地内に忍び込み、いつものように中庭にある植え込みの陰に身を潜める。ここは巡回のルートから外れた安全地帯だ。授業中は危険はないと判断し、授業の間の休憩時間まで待機することにした。


 隠れて数分後。

 背後から放たれる微かな殺気を察知し、エリルは身体を反転させてそちらを向いた。


「ヴァイン様」

「ああ、やはり貴女でしたか。以前と服装が違ったので警戒してしまいました」


 そう言って両手の平を軽くあげて武器を所持していないことをアピールしながら、オレンジ色の髪の青年は朗らかに笑った。


 彼はローガンの護衛のヴァイン。

 以前忍び込んだ時に顔を合わせたことがある。その時も気配に気付けず接近を許してしまったのだ。エリルは平静さを取り繕いながらも、内心悔しい思いでいっぱいだった。


 ちなみに、植え込みの中に隠れているので、二人とも上半身を屈めて片膝を地面に付いた体勢である。


「ヴァイン様は、ローガン様がお嬢様に求婚した件はご存知ですか?」

「ええ。殿下が嬉々として報告してこられましたので。たった数日でフィーリア嬢を気に入られたようです」

「そうですか」


 部下にも求婚した事実をオープンにしているところを見ると、ローガンは本気なのだろうと推測出来た。

 しかし、確認しておかねばならないことがある。


「あの、ローガン様は結婚相手を探しに我が国へいらしたのですか?」

「そういうわけではないのですが、結果的にそうなってしまいましたねぇ」

「本来は留学がメインで?」

「ええ。即位すればなかなか国外へ出られませんからね。それに、将来に繋がる人脈を作るためだと聞いております。」


 人脈作りと言いつつ男を寄せ付けなかった点に疑問は残る。それは、やはり自国内で周りに女っ気がなかった反動なのかもしれない。


 ヴァインは愛想良く質問に答えてくれる。穏やかで話しやすい。物腰も柔らかく、終始にこやかに笑っている。

 

 だから、エリルはつい油断してしまった。




「ローガン様に近付く令嬢は不幸に見舞われるらしいですが、何故なんでしょうね」




 エリルがそれを言い終わる前にヴァインが動いた。片手でエリルの肩を押し、もう片方の手で地面に付いていた方の足を払ってバランスを崩し、彼女の上に覆い被さる。


 そして、細い首に手のひらを押し当てて動きを封じた上でこう尋ねた。








「──その話、どこで聞いた?」


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