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22話:お嬢様は自分の気持ちが分からず迷っております

 

 アイデルベルド王国第一王子ローガンが、ブリエンド王国第二王子ラシオスの婚約者フィーリアに求婚した。


 この場に居合わせたのはエマリナたちだけである。食堂のVIPルームでの出来事だったため、他の生徒や教師には聞かれていない。事と次第によっては国同士の関係に響く。口外しないことを誓い合って、その日は解散となった。


 しかし、ローガンがフィーリアに好意を抱いているのは明らか。学院生活をほぼ一緒に過ごしているのだから、求婚の事実を知らない生徒たちもいずれ勘付くだろう。






「どうしたらいいのかしら」

「困りましたね」

「うふふ、流石お嬢様ですわ! こんな短い期間にローガン様のハートを掴んでしまわれるなんて!」

「そういうつもりはなかったのだけど……」


 帰宅するなり、フィーリアは早速二人のメイドに相談を持ち掛けた。エリルは深刻に話を聞いていたが、ミントは一人嬉しそうに笑っている。


 まだ父親であるスパルジア侯爵に報告していない。ローガンの本気度が分からず、ラシオスと不仲になっていることもある。もしそのまま事実を伝えたら卒倒しかねない。


「お嬢様はローガン様のことをどうお思いですか」

「どうと言われても……」


 エリルから問われ、フィーリアは困り顔で言葉を詰まらせた。


 ローガンは魅力的な青年である。

 非常に優秀で覇気もあり、何より話をしていて楽しい。表情がくるくる変わるから見ていて飽きない。今回すぐに求婚してきたのも、気持ちを隠すことが出来ないからだろうと分かった。


 だが、出会って僅か数日。

 慎重なフィーリアが恋に落ちるには時間が足りない。


「まだ分からないわ。憎めないお方だとは思うけど、それ以上は……」

「ですよねえ」


 十年以上婚約しているラシオスのことさえ好きなのかどうか分からないのだから、出会って数日の相手に恋愛感情を抱くなど有り得ない。


「でもでも、お相手はアイデルベルド王国の次期国王サマですよ~! もしローガン様を選んだら、お嬢様はアイデルベルドの未来の王妃サマ!」

「…………それは遠慮したいわね」

「ええ~、なんでですかぁ!」

「王妃など、わたくしには務まりません」

「またまたぁ! お嬢様も王妃教育を受けてらっしゃるじゃありませんか~!」


 そう、フィーリアもシャーロットと同じ王妃教育を受けている。それは、もし第一王子ルキウスに万が一のことがあった場合、速やかに第二王子ラシオスが王位を継げるように。ルキウス即位後にラシオスが補佐に就くのもそのためだ。


「わたくしはブリエンド王国の王家を支えるために長きに渡り教育を受けてきたわ。だからこそ、その大変さがよく分かるの」


 王妃とスペアでは役割も責任も天と地ほどに違う。それが他国ならば尚更だ。


「では、ラシオス様を選ばれますか」

「う~~~ん…………」


 ラシオスとは現在距離を置いている。

 フィーリアは完全に板ばさみとなっていた。


 愛のない結婚をするか。

 求められて新天地へ行くか。


「お返事に猶予はいただいたわけですし、ゆっくりお考えになったらいかがでしょう」

「そ、そうね」


 おそらく、返答期限はローガンがブリエンド王国に滞在している間。遅くとも、ルキウスとシャーロットの結婚式が終わって彼が帰国するまでには何らかの答えを出さなくてはならない。


 選ぶ以前に自分の気持ちすら分からないのだから、フィーリアは余計に頭を悩ませていた。

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