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21話:お嬢様が求婚されました


 ミントがアイデルベルド王国の情勢や王子留学の理由を探っている間にも、フィーリアとローガンは親しくなっていった。


 いつものランチタイム。貴族学院内の食堂にはVIPルームが存在する。通常フロアの上階にあり、密室ではないが他の席からは離れている。王族はもちろん、高位貴族の子息が内密の話をする場合などに利用される。

 ローガンが同席する時はいつもこのVIPルームで食事をしている。


「まあ、ではローガン様はまだご結婚相手がお決まりではありませんの?」


 食後のお茶を飲み、会話を楽しむ。

 その際に、話題は結婚関連に移った。


 そもそもローガンは、ブリエンド王国第一王子ルキウスと婚約者シャーロットの結婚式に参列するために滞在している。自分が参加する式の主役二人についてアレコレ質問していたのだ。


 話の流れで、現在ローガンに婚約者がいないことが明らかになった。


「婚約者がいないのは、そんなに驚くことなのか?」

「ええ。我が国では貴族の子は幼少期に結婚相手が決まりますの。ですから、ここにいる私たち全員婚約者がおりますわ」


 ブリエンド王国ではそれが当たり前過ぎて、わざわざ人に言う程のことでもない。だから、ローガンに婚約者の話をしたのは今が初めてだった。


 この場にいる令嬢……フィーリアをはじめ、エマリナ、クオリエ、セレイラ、シルエラにはそれぞれ婚約者がいる。

 それを聞いて、ローガンが仰天した。


「なんと! フィーリア嬢にも?」

「あ、はい。二歳の頃から婚約者がおります」

「そうなのか~……」


 突然話を振られたフィーリアが小さく頷くと、ローガンは目に見えて落胆した。がくりと肩を落とし、テーブルに額を付けて伏せている。


「あの、ローガン様? 大丈夫ですか」


 急に気落ちしたローガンを気遣い、フィーリアが席を立って彼の側に寄り添った。何気ない行動だが、普段のフィーリアならここまで他人、しかも異性に近寄ることはない。

 純粋にローガンを心配し、気を許しているのだ。


「フィーリア嬢ッ!」

「はい?」


 気遣わしげに覗き込むフィーリアの手を取り、ローガンは彼女に向き直った。その表情はいつになく真面目で、真っ直ぐフィーリアの目を見つめている。


「俺は初めて会った時から貴女に惹かれていた。結婚するならば貴女が良いと思っている」

「えっ……」

「婚約者がいると言っていたが、その男のことが好きなのか? もしそうでないのなら、俺との結婚も考えて欲しい」


 これは完全に求婚の言葉である。

 聞いていた四人の令嬢たちは、流行りの恋愛小説の一場面のような熱烈なローガンの言葉に胸を打たれ、思わず口元を両手で覆った。


「え、えーと、……少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか」

「もちろんだ。前向きな返事を期待している!」


 断るにせよ受けるにせよ、独断で決められる問題では無い。とりあえず返答は先延ばしすることとなった。

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