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20話:隣国の王子の事情を探ろうと思います

 

 貴族学院から帰った後、エリルはミントに相談を持ち掛けた。


「というわけで、ラシオス様はかなり劣勢ですね。お嬢様のお気持ちも離れているように見えました」

「愛のない婚約者より好意を向けてくれる殿方に惹かれちゃう……分かるわ~! 私がお嬢様の立場だったらローガン様に鞍替えしちゃうかも~!」


 愛がないわけではない。ラシオスはこれ以上ないくらいにフィーリアを愛している。本人の前では変に身構えてしまい、うまく態度や言動に表せないというだけで。

 フィーリアからは避けられ、しかも隣国の王子が常に側にいる状態。誤解を解く機会はほぼ無い。


「これまでのお嬢様だったらソツなく案内役をこなすだけで終わっていたでしょうけど、今は違うわ。もしかしたら本当に婚約破棄が有り得るかもね~」

「やはりラシオス様との不仲のせい?」

「違うわ。今お貸ししている小説の影響よ!」

「そういえばそうだったわね」


 今フィーリアが愛読しているのはミントが貸し出した恋愛小説である。


 内容は『略奪愛』。


 既に恋人がいる令嬢に横恋慕した青年が猛アタックの末にその愛を勝ち取るというストーリーである。二人の魅力的な男性から求愛される、まさに女性の夢と憧れを詰め込んだ物語だ。


 そのあらすじを聞いて、エリルは呆れたように溜め息をついた。いつもならコキ下ろしたくなるが、現在の状況はその恋愛小説に限りなく近い。


「ちなみにその小説は国内外で超流行ってるのよね~! お嬢様が心変わりしてローガン様に乗り換えたとしても、世間からの反発は少ないんじゃないかしら~。それに、お相手はアイデルベルド王国の第一王子サマ! 我が国の王族も表立って反発は出来ないでしょうし」


 そう、相手が悪い。

 ラシオスより身分が高い者など、ブリエンド王国内では彼の父である国王か、兄の第一王子ルキウスしかいなかった。恋敵が友好国の次期国王では、フィーリアから離れろと命令や指示を出すことすら出来ない。


「はあ……なんでローガン様は一ヶ月も滞在するのかしら。他国の王族が留学なんて前例ないのに」


 エリルが疑問に思っているのはそこだ。


 アイデルベルド王国は隣の国、つまり国境を接している。多少気候は違うが文化や習慣にそこまで大きな差はない。結婚式に参列するためとはいえ、長期滞在してまで学ぶようなことはない。他国からの留学自体はよくある話だが、それは貴族の子息が将来外交の仕事に就くための人脈作りの一環だったりする。


「王子サマの気まぐれじゃない~? でも、エリルが気になるなら探ってみましょうか」


 隠密行動が得意なエリルと違い、ミントが得意とするのは情報収集。直接対象から聞き出すのではない。これまで構築してきたネットワークを利用して欲しい情報を密かに入手するのだ。


「アイデルベルドの内情と王子サマか~。さぁて、どんな事情をお持ちなのかしら?」


 そう言いながら、ミントは怪しく微笑んだ。


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