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19話:隣国の王子の護衛に見つかってしまいました

 

 アイデルベルド王国の第一王子ローガンの留学中の案内役として指名されたフィーリアは、彼と行動を共にすることとなった。


 ランチタイムには取り巻きの四人が加わり、総勢六人でテーブルを囲む。お喋りがあまり得意ではないフィーリアに代わり、エマリナが主に会話の相手を務め、他の三人が相槌を打つ。そんな感じで数日は問題なく過ぎていった。


「フィーリア!」

「なんでしょう、ラシオス様」

「少しいいかな、話があるんだが」


 ひと気のない廊下。ローガンから離れた僅かな隙を狙い、ラシオスが声を掛けた。緊張と嫉妬で顔が強張っている。それを見て、フィーリアは小さく息をついた。


「申し訳ございません。ローガン様をお待たせしておりますので」


 立ち去ろうとするフィーリアの手をラシオスが咄嗟に掴んだ。思わず力が入ってしまい、フィーリアは痛みで眉をひそめた。すぐに手を離し、ラシオスは一歩下がった。


「済まない」

「いえ、それでは失礼致します」


 制服のドレスの裾を持ち上げ、頭を下げてから、フィーリアはローガンの待つ場所へと向かった。遠去かる後ろ姿を見送った後、ラシオスは己の手のひらで顔を覆って俯いた。






 そのやり取りの一部始終を離れた場所から見守っていた人物がいた。フィーリア専属メイドのエリルである。ラシオスと情報交換をするために時折無断で学院内に忍び込んでいるのだが、先ほどの様子をたまたま見掛けて異常に気付いた。


 今回はどうもおかしい。

 悪夢のフルーツタルト事件以降、ラシオスとの間に溝が出来ていたのは知っている。だが、予想以上に溝が深い。十数年婚約しているのが嘘のように他人行儀だ。


 続けて、ローガンと合流したフィーリアの様子を探る。


 学院内の中庭を散策しながら案内するフィーリアは、ラシオスの前では絶対にしないような自然な笑顔を見せていた。寄り添うローガンも、そんなフィーリアに優しい眼差しを向けている。


「こちらのほうが婚約者っぽい雰囲気ですね」


 木陰に隠れて見守りながら、ぽつりと本音を洩らす。


「ですよねぇ。そうとしか見えません」

「ええ、……、ッ!?」


 突然背後から賛同する声が聞こえ、エリルはバッと振り返った。


 エリルは学院の敷地内に忍び込むにあたり、完全に気配を消している。その彼女を察知し、更に気付かれぬように後ろを取るというのは並大抵の者には出来ない。


 振り返った先にいたのは、鮮やかなオレンジ色の髪の穏やかそうな青年だった。エリルと同じように完全に気配を消している。見慣れない顔だ。貴族学院の制服ではなく軽装備の騎士服を着ている。


「貴方は?」

「驚かせて申し訳ない。私はローガン殿下の護衛を務めております、ヴァインと申します」

「ヴァイン様……」

「はい。殿下の周りを警戒しておりましたら貴女を見つけたので、こうして近付かせていただきました」

「そ、それは失礼を」


 そう言ってにこやかに笑う姿は温厚そのもの。しかし背後を取って声を掛けた時、一瞬だけ発せられた殺気にエリルは気付いていた。


 貴族学院には生徒の従者や侍女の同伴は基本的に禁止されているが、ローガンは隣国の王子だ。特別に護衛同伴の許可が降りているのだろう。


「貴女はフィーリア嬢の護衛ですか?」

「ええと、まあ、そんなものです」


 ただのメイドです、とは今更言えない雰囲気である。


「護衛といっても友好国の、しかも学び舎ですからねぇ。何もすることがなくて退屈だったんですよ。よろしければ、また話し相手になってください」

「はあ」


 なんだか妙なことになった。

 エリルは顔を引き攣らせたまま、曖昧に頷いた。


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